「僕が元気に表に出てやっている姿が、大病を患っている方々に勇気を与えられたらなというのは、闘病生活をしている時から考えていました。少し時間がかかりましたが、やっと、行動に移せるタイミングがきました」。中咽頭がんの治療のため、昨年6月から休養に入っていた、お笑いコンビ・ペナルティのワッキー(本名:脇田寧人/48)の表情は、マスク越しからでも決意のほどが伝わってきた。今月14日に公式YouTubeチャンネル『ペナルティちゃんねる』で復帰を報告し、相方のヒデ(49)と10ヶ月ぶりに感動の再会を果たしたワッキーが、がんが発覚した経緯、闘病中のこと、これからの目標を語った。

【写真】撮影でさまざまな顔芸を見せるワッキー

■がん告知直後は「ちょっと信じられなくて」 闘病中の支えはチョコプラ

 異変を感じたのは、昨年3月末だった。「左の首にしこりがあるのがわかって、近くの耳鼻科に行ったんですけど、わからなかったので、大きな病院で調べてもらったら、中咽頭がんだと。ちょっと信じられなくて、診察を受けた後、帰りの車でドキドキしていました。まだウソだろうなとも思っていた部分もありましたが、先生には何回も聞き直して『これはがんです』と言われたので、現実を受け入れましたけど、帰りの車の運転はままならなかったです」。

 帰宅を待っていた家族には、心配させまいと、自分がどんな症状かしっかり把握するまで、1ヶ月ほどは伏せていた。「嫁に伝えずに、ひとりで抱えていた時期はつらかったですけど、動揺させたくない、心配させたくないっていうのが一番でした」。相方にも入院のギリギリまで伝えていなかった。「最初に『がんなんだよね』って言った時は、すごく動揺していました。僕が高1、相方が高2の時に初めて会ったんですけど、その時から僕のことを一番近くで見てくれている相方にとっても、僕が病気とか大病というものとは、かけ離れた存在だという風に感じていたと思います」。

 ステージ1ではあったものの、のどから首に転移をしていたため、入院して放射線科科学療法での治療に入った。「がん患者さんだけの病棟だったのですが、10代でがんになって抗がん剤で治療している子たちと知り合いになりました。高2のサッカーをやっている子がいたのですが、脚の方にがんができちゃって。僕もサッカーが好きなので、けっこう話をしたりして…。そういう運命をたどっている子たちを見た時に、自分も闘っているけど、勇気づけたいなと。ろうかですれ違う時にも話しかけて、何か元気になるきっかけになったらいいなと思いましたし、自分も負けてられないなという気持ちになりました」。

 そんなワッキーの心の支えとなったのは「Jリーグ」と「芸人のYouTube」。「思えば、これまで芸人のYouTubeを見たことなかったんですけど、入院中はチョコプラ(チョコレートプラネット)のYouTubeをずっと見ていました。チョコプラが大好きで(笑)。すっごいしょーもないことをずっとやっていたり、ゲームみたいなのもやっていて、しょーもねーなと笑っていました。そういった動画を見ていると『お客さんの前でネタをしたい』という気持ちがふつふつと湧き上がってきました。当たり前に思っていたことがこんなにしたくなるんだと気付かされました」。同期の芸人・ロンドンブーツ1号2号の田村淳とはこまめに連絡を取っていた。「今までもずっと頼ってきたような存在なので、こういう風に考えた方がいいんじゃないとか、メンタルケアみたいなところで手を差し伸べてくれて。常に焦らずゆっくりということを言ってくれました」。

■家族とのテレビ電話で「戻る場所がある」 相方との涙の再会「ずっと待ってくれていた」

 コロナ禍での闘病となったため、入院中の家族との連絡手段はテレビ電話などを使っていた。「家族の元気な姿を見るのも、楽しみのひとつでした。嫁は僕に言葉をいろいろかけてくれるというより、子どもたちをメインに考えてくれていて。子どもたちは、ぶっちゃけなんのこっちゃなんですよね。小6と小1なんですが、闘病生活っていうのはまだそこまで理解できてないので、関係なくいつも通りに『パパ!』って話しかけてくれるのがかわいかったですし、和みました。戻る場所があるんだって」。取材中、何度か机に置いていたペットボトルを手に取り、水分補給をしていたが「実はこれにも理由があるんです」と切り出した。

 「後遺症がいろいろあるんですけど、その中のひとつで唾液が4割くらいしか出ないので、こまめに水分補給をしているんです。健康な方は気づかないんですけど、唾液40%の人って、すぐのどがカラカラになってきちゃう。そういうちょっとマイナス点はいまのところあるので、これが治るのも個人差があって、そこの心配は少しあります」

 芸能活動からしばらく離れていたことから、復帰してすぐにアクセル全開というわけにはいかない。「のどのがんなので、長時間しゃべることへのチャレンジもしたことないですし、復帰してすぐさまギア全開というよりも、アキラ100%じゃないですけど、ワッキー85%くらいの感じで見ていただきたいですね(笑)」。ブランク、そして体力面での不安はあるが、頭の中は“笑い”がぐるぐると回っている。「体重はだいぶ戻ってきたんですけど、見た目の部分は髪型が変わったくらいで…。髪型もどうしましょうかね。ペナルティのYouTube、もしくはほかの番組で髪を切ろうっていう企画にならないかなと思って、まだ切っていないんです(笑)。そういうところも面白くしていきたいですね」。

 今回の復帰にあたって、ヒデにドッキリを仕掛けて再会したYouTube動画は、お互い涙を流す感動の展開となった。「50歳手前のおじさんがずっと背中向けてシクシクやっているのを見せられたらね…。相方として、待ってくれていた存在だし、自分が帰ってこれたという喜びもしかりですけど、今まで味わったことのない空気でした。ヒデさんは古風な人間なので、そういうのを見せたがらないんです。そういう性格のヒデさんが泣いているっていうので、きちゃいましたね。YouTubeでも言っているんですけど、おじさん2人が泣いているのを見て誰が喜ぶんだって冷静になった部分もありますけど(笑)、それだけ長い間会ってなかったですし、自分が大病を患っていたので、そこがあっての涙でした」。

■コンビとしての活動本格化も懸念? 100%になるまでの過程も楽しむ

 コンビそろっての活動で、何ら心配もないかと思いきや「僕らの『ペナルティちゃんねる』。通称:ペナちゃんの再生回数がまったく伸びてなくて」と笑みをこぼす。「僕がいない間、ヒデさんがひとりで帰ってくる場所として、ペナちゃんを残してくれているんですけど、いかんせん古風な人間なので(笑)、頑張ってくれているんですが、なかなか再生回数が伸びなくて…なんて言っているんですけど、実は僕自身もすべては見ることができてなくて(笑)。動画の完成度と再生回数が結びつくということではないので、その辺りはこれからもっと勉強していきたいです。あと、FUJIWARAの原西孝幸さんがやっているYouTubeチャンネル『原西ギャグ倶楽部』では、副部長をやっているのですが、病気の間は代わりにさっくん(佐久間一行)が入ってくれて。もともと原西さん、僕、サバンナの八木真澄、流れ星のちゅうえいでやっていたのですが、そこの再生回数も伸ばしたいです(笑)」。

 休養中に一気に頭角をあらわしてきたのが、お笑い第7世代だ。「霜降り明星とかも絡んだことないから、怖いですね。ワッキー85%のギャグをどういう風に見てくれるんだろう、第7世代は(笑)。いきなり、第7世代の前でギャグをやったらどうなるんですかね」。何もかもが新鮮な体験となりそうだが、今回の闘病を経て、改めて感じたことがある。

 「めちゃくちゃ当たり前のことなんですけど、コンビとしての目標は、劇場でお客さんの前でコントして爆笑を取りたいです。そうやって僕らは吉本に育てられてきた部分があるので。個人としての目標は、テレビで爆笑を取りたい(笑)。やっぱり、もう1回テレビで、コンビでもそうですし。当たり前のことですけど、テレビで爆笑を取りたいですね。ごめんなさい、言葉足らずで本当に申し訳ないんですけど。駆け出しの芸人みたいな目標ですが、素直にそう思っています。復活したワッキー85%が100%になるまで、見守っていてください(笑)。意外と85%も面白いかもしれないですよと、まだその面白さに自分も気づけていませんが、そんなことを考えています(笑)」

 インタビューを終えて、写真撮影をしている時だった。カメラを向けると瞬時に表情が華やぎ、シャッターを切る度にいろんな“顔芸”を見せる。「真面目な顔で写っても、ただのおじさんだから」と笑う“ワッキー85%”は、すでにその場にいた人々を笑顔にしていた。