脚本家の坂元裕二氏が11日、都内で行われた俳優・菅田将暉と女優の有村架純が主演する映画『花束みたいな恋をした』(公開中)の大ヒット記念トークイベントに登壇した。菅田とは連ドラ『問題のあるレストラン』、有村とは『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(2015年、ともにフジテレビ系)でタッグを組んだ坂元氏は「俳優さんってオーラが出るっていうんですけど、すごい俳優さんはオーラを自由に消せる」と市井の人として作品になじむ2人の演技力に感嘆した。

【画像】トークイベントで作品について語った坂元裕二監督

 今作は『東京ラブストーリー』(91年)から『カルテット』(2017年)までリアルな人間描写とせりふの掛け合いに定評のある坂元氏によるオリジナル脚本のもと、終電を逃したことをきっかけに出会った男女の5年間におよぶ恋の記録を描くラブストーリー。

 「この台本を書いている時、菅田くんと同じ場所に1時間くらい一緒にいたんです。そこに青いシャツ着た人がいるなと思ってたんですけど、その人が菅田くんだと気づいたのが1時間後だったんです。全く気づかなかった。有村さんも、『いつ恋』で施設を見学した時にお会いしたら、有村さんだと思わなかった。この映画でも普通の子たちとして映っていて、あんなに普段キラキラしているのに、映画の中では全部消せるってすごい…」と驚いていた。

 撮影現場を見学することがなかったという坂元氏はお気に入りのシーンとして挙げたのが、絹がイベント会社に転職しようとするのを麦に報告する場面。「(イベント会社のキャッチコピーである)“遊びを仕事に”に対して麦くんが『ダサッ』って言った後に『ハハ』って笑うんですけどぞれが絶妙で…。どうやったらこんな風に笑えるんだろうって」といい、「台本では『(笑って)ダサいよね、ダサいとは思う』というせりふなんですけど、その笑い方が絶妙だった。こういうつもりで設計してお芝居をされてるんだなと、お芝居の世の中にはある。でも有村さんはどういうつもりなのか全く、わからない。それがすごく素敵だと思う」と有村ならではのナチュラルな芝居を絶賛した。

 また、この作品が生まれた経緯についても話が及んだ。菅田の「ラブストーリーをやりたい」という提案から始まったそうで、「最初は全然違う企画だったんです。『ブルージャスミン』『ヤングアダルト』みたいな、ちょっと困った人というか世間とうまくやっていけない、人から後ろ指差されている人たちが出会ってみたいな話をやろうか、世界にひとつのプレイブックとかを想定して書こうとしていたんですけど、そういう役をやる有村さんと菅田さんがあまりうまく動き出さなくて、そこまでに3、4ヶ月かかって…」と当初が全く違う内容だったことを明かす。

 「そのたびにプロデューサーが居酒屋に連れて行ってくれた。ある時『一筆書きで書いたら良い』と。この2人のシンプルな日記を5年間の中で抜粋して書いてみたら『これはおもしろいな』と、そこから一週間で書けたんです。その前の段階は時間がかかりました」と振り返った。菅田演じる“麦”と有村演じる“絹”も試行錯誤を経て同時に生まれたそうで、「語感もちょっとなんか似てるじゃないですか」とリンクし合った名前であることも語られた。

 今作の反響は坂元氏の耳にも届いているようで「TikTokを観ていたら高校生がトイレットペーパーを持って走り回ってる動画を見た。こんなにうれしいことはなかなかない。あとはカップルでナレーションで自分たちでつけて、多摩川のあたりを歩いてる動画を作ったり…こういう人たちに楽しんでもらっていると思うとうれしいです」と若い世代のレスポンスに感謝していた。

 土井裕泰監督の反応については「土井さんは『続編やりたい』って。30代はつらいよね、これもつらいよねって言ってらっしゃる方もいるみたいですけど、30歳の恋はつらいものがあるんじゃないか、それはきついんじゃないですか? やらないと思いますけど…土井さんは『やりたい』って言わない人なんですけど、よっぽどやりたいんでしょうね(笑)」と話していた。