コロナ禍によって在宅時間が増え、新たにペットを飼う人が増加しているという。だが、「やっぱり世話できない」「思ったのと違う」と、投げ出してしまうことも多いとか。そんな風潮への示唆となるのが、身体が不自由でも、幸せをつかんだ猫たちの物語だ。ブログで猫の保護の様子を伝えているNPO法人『ねこけん』の代表理事・溝上奈緒子氏に聞いた。

【写真】盲目の猫メンメ、今では仲間猫とラブラブ&モフモフ

■骨折と奇形…身体が不自由な子猫は、ついに安全な場所へ

 その子猫は母猫のかたわらにぴったりと寄り添っていた。が、よく見ると後ろ足はあらぬ方向を向いている。これが『あんよ』と名付けられた子猫の第一発見状況だった。よく見ると、足が不自由なだけでなく、けがも負っていた。

 「『あんよ』は、不自由な足にけがもしていました。最初は交通事故かなにかが原因で足が不自由になったと、メンバーも考えていたそうです。ですが、病院に連れていったところ、骨盤が骨折しており、けがも負い、不自由な足は奇形であったことが発覚しました。でも、この状態まで大きく育つことができたのは、母猫の愛情があったからだと思います」と溝上氏。

 自力で排泄ができない『あんよ』には、圧迫排尿(膀胱にあたる部分を外から手で圧迫することで、排尿を促す方法)が必要となる。ボランティアメンバーの介助が不可欠とはいえ、その後『あんよ』は、極甘なリハビリ生活を送ることとなった。寂しいと「ふぇ~、ふぇ~」と鳴く『あんよ』のために、メンバーは一晩中、一緒にいることもあるそうだ。その結果、どうやら『あんよ』はすっかり甘えん坊な猫に成長しつつあるという。保護されるまでは、母猫と一緒にコンビニのお客さんから食べ物をもらって生きてきた『あんよ』。甘えん坊になれるのも、安全で幸せな場所を得ることができたからこそだ。

 「けがをしてしまったり、体が不自由な猫が外で生活していくのは、かなり過酷なことです。今回は母猫さんの愛情や、地域の人の温かい手もあったので、ここまで生き延びることができたのでしょう。普通ならすぐに死んでしまうため、体が不自由だった子猫の『あんよ』が生きていたことは、本当に幸運です。私たちは、猫の殺処分ゼロを目指しているので、こういう猫たちもすべて保護し、新たな家族を見つけていきたいと思っています」

 もう一例、猫の『メンメ』は、近親交配によって眼球がない、盲目の猫だった。数年前、練馬区で49頭もの多頭飼育崩壊の現場から救い出された。その時の状況を溝上氏が語る。

 「もう、健康な子は誰もいないんじゃないかというくらい、みんな何かしらの病気を持っていました。そのうちの1頭、メンメはガリガリで眼球がなかったのですが、それでもマシなほうだったんです」。

 レスキューされたメンメは、最初はひたすら隠れていたようだが、『ねこけん』が安心な場所だとわかってくると、次第に心を開き始めた。どうやら、メンメの兄弟たちが「もう大丈夫」と教えてくれたようだ。周りにいる猫たちが、弱い個体を助けることはよくあることだそうで、「猫たちがコミュニケーションを取って、しっかり助け合って生きているという場面には何度も遭遇しました」とのこと。そんな助けもあり、保護されてからのメンメは少しぽっちゃりした元気な猫となった。

 「もともと猫は、あまり目が良くないんです。たとえ目が見えなくても、ここにご飯がある、ここに段がある、ここに爪とぎがある、とわかってくると、見えている状況と変わらず動けるようになります」。

 だが、いくら慣れれば生活に支障は少ないとはいえ、理解してありのままを受け入れてくれる人は現れるのだろうか。そんな不安もあったが、ある日メンメを家族に迎えたいという夫婦が譲渡会に現れた。彼らはメンメの過去と障害をすべて理解したうえで、「ぜひ家族に」と申し出たという。しかもその理由は、「目が見えなくてかわいそうだから」という同情ではなく、「メンメが可愛いから家族に迎えたい」というものだった。メンメを迎え入れた夫婦は現在、ほかの保護猫も加え、計3匹との生活を楽しんでいるという。

 「メンメがキャットタワーに登れた」「追いかけっこができた」と、その夫婦は涙を流して喜んでいるそうだ。そして、そんな報告を受けた『ねこけん』メンバーも、ほっと胸をなでおろしている。体が不自由でも、問題があっても、飼い主によって幸せになれる。それを証明したようなメンメだった。