ここ数年、ドラマや映画など数々の作品で唯一無二の存在感を発揮している仲野太賀。11日公開の西川美和監督の映画『すばらしき世界』には、主演・役所広司に次ぐ重要な役どころで出演している。一昨年の『ネクストブレイク俳優ランキング』では芸歴13年にして初ランクイン、昨年の『ブレイク俳優ランキング』でも見事初ランクインを遂げた(ともにオリコン調べ)。今年15周年を迎え、「誰にも振り向いてもらえない時期が長かった」と語る仲野。同世代の仲間が次々ブレイクする中、味わった苦悩とそれでも俳優を続けられた理由を聞いた。

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■俳優としての“諦め”感じていたタイミングで運命的なオファー、改めて身に染みた父の言葉

――まずは、映画『すばらしき世界』のオファーを受けた時の気持ちを伺えますか?

【仲野太賀】中学生の頃に西川監督の『ゆれる』を観て衝撃を受けて、その後も監督の作品をいろいろ観させていただいていました。憧れてはいたけど、自分がそこに交わっていくなんて思ってもみなくて。正直、西川組のお話が来るとは夢にも思っていなかったので、とても嬉しかったですね。

――仲野さんは10代の時に一度、西川さんが演出された「太宰治短編小説集」第3シリーズ『駆込み訴え』(NHK BS2)に出演されているんですよね。

【仲野太賀】当時から憧れがあって、その時のマネージャーさんに無理を言って「なんでもいいから出して欲しい」って頼んだんです。でも撮影の時はカメラからすごく遠い場所にいたし、セリフもない役だったので、西川さんがあの時のことを覚えていてくださって驚きました。

――当時のことについて、西川さんとはお話されたんですか?

【仲野太賀】その時は撮影も1日2日だけだったんですが、僕の居方を気に入ってくれていたみたいで。父親に、「誰かが必ず見てくれているから、一生懸命がんばれ」って言われた言葉を、久々に思い出しましたね。本当に見てくれている人がいるんだ…って思いましたし、この仕事を続けてきて本当によかったと思いました。僕にとっては、運命的な巡り合わせでもありました。

――運命的というと?

【仲野太賀】ちょうどオファーをいただいた頃、役者としての身の振り方みたいなものを考えていた時期でもあって。仕事を頂けている充実感と、でももっと役者として貪欲でありたい自分との中で葛藤がありました。昔思い描いていた自分の姿に、今の自分はなれているのか、とか。諦めに近い感覚でいました。そんな時に西川さんからお話をもらって、救われた気がしましたし、映画に必要とされた気がして心から嬉しかったです。

――しかも今回は、主演の役所広司さん演じる三上と観客をつなぐ、架け橋となるような重要な役どころですよね。

【仲野太賀】これまで自分が積み重ねてきたものや、辿ってきた道を試される緊張がありました。主演の役所広司さんとご一緒することは、自分の俳優人生の中で最大の目標の一つでもあって。役所さんが西川さんとタッグを組むというだけでも映画ファンとして興奮していたので、そこに自分が入り込むのが信じられない思いでしたね。この作品で、僕の俳優としての何かを決定づけるものになると思いました。

■世間に見向きされずとも、“自分の好きな人に必要とされること”に救われてきた15年

――今年デビュー15周年を迎えられますが、目指す場所へなかなかいけない苦労や葛藤はありましたか?

【仲野太賀】やらされて始めたわけではなく、好きでこの仕事を始めたので、誰かに振り向いてもらえない時間が続くのはなかなかしんどかったですね。10代の頃は特に映画俳優にすごく憧れていて。でも自分はそういう風にはなれないんだっていうジレンマは、ずっとあったかもしれないです。

――それでも続けてこられた原動力は何だったのでしょうか?

【仲野太賀】一緒の志を持った仲間がいましたし、その都度手を差し伸べてくれる方がいたことが大きかったです。くすぶっていても、岩松了さんや石井裕也さん、深田晃司さんだったり、自分がリスペクトできる方たちに手を差し伸べてもらえたのがすごく心の支えになりました。

――必要としてもらえる場所があったんですね。

【仲野太賀】世間的には相手にもされないし、業界的に見向きもされていないけど、自分の好きな人に必要とされた時に、僕は役者をやっていていいんだと思えたというか。そういう出会いに救われましたし、「オマエいいじゃん」って肯定してもらえる時間が支えでしたね。

――では、うまくいかなくても辞めようと思ったことは一度もない?

【仲野太賀】“向いてないかもな”って思う時はありましたけど、他にやれることないですしね。12歳からこの世界にいるので、外の世界を知らな過ぎて。ここまできちゃったので、他にできる気がしないです(笑)。

――俳優人生の中で、転機になったできごとはありましたか?

【仲野太賀】18歳の時に、岩松了さんの演劇のワークショップを受けたんです。その時に、自分が思っている映画的なものが、演劇の世界にもあるんだって気付きがありました。世界が広がりましたし、自分が求めているものは、媒体やコンテンツに限らずあることに気づかせてもらいました。

■“比較”や“嫉妬”が減ったことで変化「信じてやってきた道のりを、今ようやく愛せる」

――改めて15年間を振り返ると、どんな思いですか?

【仲野太賀】今思うと、あっという間でしたね。でも、この先30年40年この仕事を続けると思うと、ちょっとぞっとしますね。楽しいことばかりではなかったので、それが2倍も3倍も続くとけっこう地獄だなって(笑)。

――昨年は映画7作連ドラ2作と、ここ数年で益々活躍の場を広げられている印象ですが、ご自身の見られ方に変化は感じますか? 2019年にはオリコンの『ネクストブレイク俳優ランキング』で3位にランクインされていました。

【仲野太賀】あはは!そうなんですか!?(笑)。まさか自分がランクインするとは思ってもみなかったので、嬉しいです。少しずつ責任というか、まかされた役の重さはウエイトが増えてきているかなと思いますね。

――いまや唯一無二の存在感を確立されているように感じますが、仲野さんらしさはどんな部分にあると思われますか?

【仲野太賀】自分ではわからないですけど、自分の立場はわきまえてるつもりというか(笑)。前に出る時は出るし、引くときは引くし。チームプレイだと思うので、協調性はあると思います。

――刺激になっている方はいますか?

【仲野太賀】みんなからたくさん刺激をもらっていますね。菅田(将暉)や染谷(将太)、女優さんも有村架純さんや吉岡里帆さんと、同級生にトップランナーが本当に多いんですよ。特に男はこの世代みんな仲がいいので、普段からコミュニケーションを取っています。昔からやっていると、途中で違う道に進む人もたくさんいるので、現場で昔から知っている俳優さんと再会するとすごく嬉しい気持ちもあります。

――それこそ同世代の俳優さんが次々とブレイクされる中、嫉妬する気持ちはなかったのでしょうか?

【仲野太賀】10代20代の頃は比較してばっかりでしたけど、昔よりだいぶ嫉妬みたいなものは減りました。比較することが、いかに野暮で価値のないことかに気づき始めたんですよね。やっぱり誰にもなれないし、自分ができることを信じて手探りでやっていく以外ないかなって思います。

――では今は嫉妬のようなものはない?

【仲野太賀】今だって悔しいなと思う時もあるし、自分に対する情けなさを感じる時もあるんですけど、自分を信じてもいいかもしれないと思えるようになってきました。運よく今回のように手を差し伸べてくれた西川さんのような方がいるし、自分が15年間信じてやってきた道のりを、今振り返ってみるとようやく愛せるというか。うだつの上がらない時も、無駄じゃなかったと思いますね。


(ヘアメイク:高橋将氣/スタイリスト:石井大/取材・文=辻内史佳)