4月10日より日本テレビ系で放送がスタートするテレビアニメ『EDENS ZERO』。『週刊少年マガジン』(講談社)で連載中の漫画が原作で、真島ヒロ氏の最新作だ。『RAVE』『FAIRY TAIL』と世に送り出したすべての連載作品がアニメ化(※スピンオフは除く)となったが、「漫画家、出版社にとってうれしいことですが、不安もあります」とアニメ化の恩恵と怖さを語る。また、増えるファンの声も「意見を取り入れないようにしています。ファンと漫画家の一線を引かないと、作品がぶれてしまうからです」と、アニメ化が漫画に与える影響を語ってもらった。

【写真】髪ツンツン!『EDENS ZERO』主人公のコスプレをした浜辺美波

■現在『EDENS ZERO』連載中も既に次回作の構想あり「王道のファンタジーを描く!」

――2018年9月にインタビューをした際、「前作の『FAIRY TAIL』(連載11年)はまだ描き続けることができました。それでも、新しいことをやりたかった」と既存の環境を捨ててまで新連載に挑んだことを話してくれました。そこから心境に変化はありましたか?

【真島】 四苦八苦していますね(笑)20年以上ファンタジー漫画を描き続けてきたので、SF用語や使ったことのない単語を使っている今は大変です。これまでは「魔法の力で何とかする!」という設定でキャラを動かしていましたが、今回はSFファンタジー作品ですので、科学的に考えたり、物理的に無理なことはしないように気を付けています。

 僕自身は「剣と魔法のファンタジー」は大好きなジャンルですので、今は宇宙を舞台にした漫画を描いていますが、すでに次回作は「王道のファンタジーを描いてやる!」という構想があります。『EDENS ZERO』では描けないネタをストックしていて、中世ヨーロッパ、『FAIRY TAIL』のような世界観のファンタジーを描いていきたいです。

――すでに新連載の構想が!? 前回のインタビューでも「仮に『EDENS ZERO』より面白いアイデアがあったら、そちらに力を注ぎたいし、今の連載を終わらせることも考える。新しい世界観を作るのは大変ですが、新しいことを世の中に出して行きたい想いが強い」と話していました。連載も終わりに近づいているのでしょうか?

【真島】 僕は飽き性ですが、まったく『EDENS ZERO』は飽きていないんですよ(笑)まだまだ、描き続ける予定です。『EDENS ZERO』を描き続けていると、どんどん新たなアイデアが出てきて、「これは、次回作に使えそうだな」とネタがたまっていきます。もちろん、『EDENS ZERO』に対してネタの出し惜しみはしていないですし、同じファンタジーだとしても作品の世界観が違うなら、使えるネタも違ってくると思いますので、今の現時点で「面白い!」と思ったネタは『EDENS ZERO』で出しています。

■連載3作品すべてアニメ化 キャラに対して「新たな発見あった」メリット――漫画においてアニメ化の影響は肌で感じていると思いますが、アニメ化のメリットは一体なんでしょうか?

【真島】 当たり前ですが、一番は作品を多くの人に知っていただけることです。毎週放送されて宣伝されるわけですから、興味を持っていただける機会が増えて、コミックスを手に取ってくれる流れになるため、部数も増えて作家や編集部としてありがたいことです。

 作品としては、自分が描いたキャラに動きや声がついて、自身の中でキャラのイメージがより固まっていくことだと思います。ネームを描いている最中にキャラの声が頭の中に聞こえてくるので、せりふや動き方で悩むことが少なくなった気がします。『RAVE』や『FAIRY TAIL』もアニメ化前と後では、キャラの設定自体が変わったことはありませんが、理解度は増したと思います。

 実はキャラへの理解度は、作者の僕自身より声優さんたちの方が高いです(笑)僕は多くのキャラを同時に動かして、いろんなキャラに気配りしているのですが、声優さんたちは自身の1キャラに集中することから、僕が思いつかなかった切り口でキャラをつかんできます。『FAIRY TAIL』の時は、ハッピーを演じた釘宮理恵さんからお会いしてすぐに「ハッピーって腹黒いキャラクターですよね?」と言われて、僕自身「知らなかった…確かにそうだな」と思いました(笑)その時に、そういうキャラとして今後は動かしていこうと思いました。アニメ化は作品に対して新たな発見が生まれるのです。

 そういう意味で今回の『EDENS ZERO』は、機械や宇宙など僕が苦手とするジャンルや用語だらけなので、多くの人の意見を聞けて参考になります。原作漫画よりアニメの方が見映えがいいことは間違いないと思います。どうしても漫画では描けないエフェクトなどが、アニメでは展開されるので、原作者としてではなく1人のファンとして非常に楽しみです。

■恩恵と怖さある漫画のアニメ化 漫画家の喜び味わえる「近道」――アニメ化は大きな恩恵があるのですね。ですが、原作があるとは言え、脚本、キャラクターデザイン…など自分の手から離れる形で、作品が動き出すことに不安はないのでしょうか? “漫画”はすべて自分一人で手掛けてきたものですが、アニメは多くの人が作品に参加するので、描いてきた作品のイメージが変わることもありそうです。

【真島】 僕はあまり心配していないのですが、別作品の原作者の方からアニメ化に不満の声というのは確かにあります(笑)「自分が想像していたストーリー展開、声が違った…」など、そういう不安な気持ちは理解できます。僕の過去作品に限っては、どの声優さんたちもすばらしい演技で命を吹き込んでいただきました。先ほどお話した釘宮さんのように、キャラと真剣に向き合っていただき、僕自身、作品やキャラに対して新たな発見がありました。

 もちろん、アニメは僕が描いているわけでないですし、脚本も自分で作っているわけではありません。自分の作品が手を離れて、ほかの方が作り上げていくことに対して、作家としては怖い部分はあるのですが、僕はそれ以上に楽しみの方が強いです。文字だらけで理解しがたい説明文も音声だとわかりやすくなり、作品の魅力が増すことがアニメ化の良さだと思います。また、アニメを見て「面白そうだな」とコミックスを手に取る方もいるので、出版社的にもうれしいことです。ただ、「アニメは良かったけど、原作漫画は今イチだな」と言われることもあるので、そこはアニメ化の怖い部分でしょうか(笑)それでも、漫画のアニメ化は良いことの方が多いと思います。

 アニメ化は自身の作品を大勢の方に知っていただけるチャンスであり、その喜びを味わえる近道だと思います。サイン会を開くと海外の方も訪れて、「アニメを見て知りました」と言ってもらえることが多いので、その影響力は大きいと実感しています。「アニメを見てファンになって、初めて買った単行本が『FAIRY TAIL』でした」「このアニメを見てクラスの子と仲良くなれました」などのファンレターを読んだ時は、漫画家として幸せでした。

■一線引くファンとの距離感 批判もうれしい“漫画家の存在意義”――アニメ化でファンが増えると思いますが、ファンの声が原作漫画に与える影響はあるのでしょうか?お忙しい中、ツイッターでの交流も大変だと思います。

【真島】 「このキャラクターが好きなので、もっと活躍させてほしい!」という声もいただくのですが、根幹となるストーリーにおいてファンの意見を取り入れないようにしています。決して無視をしているわけではないのですが、ファンと漫画家の一線を引かないと、作品がぶれてしまうからです。『RAVE』のジークハルトが亡くなった時は「生き返らせて!」「なんで死んだんだ!」「許さない!」などと熱いお便りをいただきました。あの時代は手紙でしたので身の危険を感じましたね(笑)それでも、あの構想は決めていたことでしたので、人気キャラとは言え、その構想を変えることはしませんでした。とは言え、ファンの声を完全に無視することはしたくないので、今はツイッターでお絵かきイラストを投稿したりして、交流を深めています。ファンの声で物語に影響を与えたことはないのです。

 漫画家とファンの距離感もSNSの登場で随分変わったと思います。以前は編集部での打ち合わせを終えたら、ファンレターが入った段ボールを持って帰宅していたのですが、今はそのようなことも少なくなり…、「あれ? 人気なくなったかな?」と思ったこともありました(苦笑)それでもSNSの登場で、最新話が『マガジン』に掲載されるとすぐに感想を寄せてくれますし、アニメの場合もリアルタイムで感想をつぶやいてくれるので、昔とは違った読者の声を楽しんでいます。厳しい意見もうれしいですよ。なぜなら、しっかりと漫画を読んでいただけているということですから。読者からの声がなくなった時が、漫画家として終わる瞬間なのかもしれません。

 ――『RAVE』『FAIRY TAIL』に続いて、『EDENS ZERO』もアニメ化となりました。今回のアニメ化に期待するところはどこでしょうか?

【真島】 主人公のシキは「重力」を使って縦横無尽に飛び回るキャラですので、アニメでは楽しそうにダイナミックに動いてもらえるとうれしいです。スタッフやキャスト陣も豪華ですので、ファンも期待していてほしいですね。間違いなく、原作漫画より面白いと思います(笑)宇宙や機械の音なんかは、漫画で表現しきれないので、アニメ化は大変ありがたいお話でした。今までの作品の中で、一番アニメ映えするのではないかなと思います!

■『EDENS ZERO』作品概要
 2018年6月より『週刊少年マガジン』で連載中の『EDENS ZERO』は、夢の国・グランベルで機械たちと暮らす少年・シキが、100年ぶりの来国者となる動画配信者の少女・レベッカと青猫のハッピーに出会い、惑星を超えて旅に出るSFファンタジー。テレビアニメでは、シキ・グランベル役を寺島拓篤、レベッカ・ブルーガーデン役を小松未可子、ハッピー役を釘宮理恵が担当。スタッフは総監督を『FAIRY TAIL』シリーズでおなじみの石平信司、監督を鈴木勇士、シリーズ構成を広田光毅、キャラクターデザインを迫由里香、アニメーション制作をJ.C.STAFFが担当する。