近年、高級志向が高まっているチョコレート市場。今年は新型コロナウイルス感染拡大が本格的になって、初めてのバレンタインデーを迎えるが、例年通りデパートやスーパーでも特設コーナーでの販売がスタート。果たして、売り上げや傾向に変化はあるのか。「女性から男性に、チョコレートとともに愛の告白を」というキャッチコピーで、初めてバレンタインギフトを日本で提唱したメリーチョコレート。同社の広報宣伝部、山本竜さんに現状を聞いた。

【画像】63年前…50円の板チョコから始まった、ほか名前入りのハート形の『サインチョコレート』などバレンタインに添えられたチョコたち

■“楽しさ不足”に届けたい 今年はビジュアルやストーリーがより重要に

――まず、今年のバレンタイン商品のテーマを教えてください。

【山本竜さん(以下、山本)】2021年は「JI-KO-CHU(ジコチュー)バレンタイン」がテーマになります。思うように旅行や外食に行けず、「楽しさ」が絶対的に不足しているすべての方に向けて、「エンターテインメントとしてのチョコレート」をお届けします。バレンタインを自己中心(ジコチュー)に思いっきり楽しめるよう、自分自身をワクワクさせることができるラインナップを揃えました。

――コロナ禍で、開発に苦労した点はありますか?

【山本】商品の開発は、2019年秋より開始しました。コロナ禍になりテーマを再度検討し、楽しさや華やかさよりも、がんばっている方への応援のためにという案も出ました。

――今年ならでは、ですね。

【山本】しかし、バレンタインはこれまでも時代の変遷とともに楽しみ方が変化してきたため、2021年もやはり楽しめるイベントでありたいと考えました。そうした中で、この1年いろいろと我慢してきたけれど、「バレンタインくらいは“自分中心”に楽しみたい」という方に向けて開発を進めました。

――今年のバレンタイントレンドを、御社ではどう見ていますか?

【山本】2月14日が日曜日であること、また依然続くコロナ禍の影響もあり、「おうちの中で楽しめること」に注目が集まっています。手作りなども盛んになり、購入するチョコレートも人にあげる以上に自分がどのように楽しめるかが重要となります。

――コロナ禍が大きく影響しているということですね。

【山本】例年、このシーズンはリアルショップでの試食で吟味する楽しみがありますが、本年は自粛傾向にあります。そのためSNSやWEBサイト、オンラインショップの利用者数の大幅な上昇に伴い、「おうちバレンタイン」や「リモートバレンタイン」の楽しみ方として、味だけにとどまらずビジュアルやストーリーにもより注目が高まると感じます。

――デパートやスーパー等でもバレンタインフェアが続々と開催されていますが、売れ行きはいかがですか?

【山本】12月末にバレンタインチョコレートをホームページで発表すると、TwitterやInstagramでの話題が先行して人気のチョコレートに注目が集まりました。『はじけるキャンディチョコレート。』は、パッケージで表現する昭和レトロな世界観がTwitterで盛り上がっています。

――実店舗よりオンラインショップでの購入需要のほうが増えていますか?

【山本】WEBサイト利用層の増加に比例して伸びております。『はじけるキャンディチョコレート。』がTwitterで盛り上がったこともあり、1月中旬に一時的に品切れとなりました。自分で楽しむために取り寄せたり、なかなか会えない方への挨拶がわりに贈ったりと、オンラインショップをご利用いただく方が多くなりました。

■最初は総額わずか170円の売り上げ? 半世紀の間に生まれた様々なバレンタイントレンド

――メリーチョコレートがバレンタインを始めたのは1958年、もう半世紀以上前のことになります。愛の告白にチョコレートを添える、という今では定番スタイルも御社が始められたとのことでしたが、当時について伺えますか?

【山本】1958年1月、メリーの社員がパリに住む友人から受け取った一通の絵葉書がきっかけでした。そこには「こちらパリでは2月14日はバレンタインデーといって花やカード、チョコレートを贈る習慣がある」と書かれていました。これをチョコレートの販促イベントに結びつけられないだろうかと考え、2月12日~14日の3日間、都内百貨店で日本初のバレンタインフェアを行なったのが最初です。

――反響はいかがでしたか?

【山本】当時の日本ではバレンタインデーを知る人はなく、50円の板チョコレートが3枚と20円のメッセージカードが1枚、たった170円の売り上げでした。

――ハート形チョコレートも御社が初めて作られたのですか?

【山本】ハート形チョコレートがメリー初であるかどうかは証明が難しいのですが、1959年にハート型のチョコレートに鉄筆でTOとFROMを描き、贈り手と相手の名前を入れる『サインチョコレート』を発売したところ注目を集め、バレンタインは徐々に知られていくようになりました。

――バレンタインがここまで国民的イベントになった理由はどのあたりにあると思われますか?

【山本】バレンタインが人々の間に浸透していったことは当時の社会背景と無関係ではありません。1959年頃といえば女性週刊誌が次々に創刊され、女性のライフスタイルが見直されていた時代。その潮流の中で『女性が男性に1年に1度愛の告白ができる日』というメリーのキャッチコピーは女性の心を捉えました。1960年代のバレンタインは『愛の告白』であり、好きな人にそっと手渡す『初恋チョコレート』でした。

――これまでの歴史のなかで、一番反響があった商品やコピーはどんなものですか?

【山本】特に反響のあった商品は1970年代に登場した、恋人に12星座のチョコレートを贈る、星座のレリーフがほどこされた『生まれ星チョコレート』です。

――ほかにもありますか?

【山本】ポラロイド社とタイアップして店頭で撮影した自分の写真のカレンダーを添えたチョコレート、2000年代ではマトリョーシカの形の容器に入ったチョコレートも人気がありました。

――90年代に入ると、愛の告白以外の思いを伝える流れもバレンタインに含まれるようになりました

【山本】近年は「自分用」が急激に伸びている印象です。ターゲット層のSNS利用者数の増加に比例しているのではないでしょうか。渡すチョコレートとしては、2011年の東日本大震災以降の年より「絆チョコ」というワードが生まれ、そこから感謝を伝える「感謝チョコ」が定着していきました。

――「義理チョコ」の定義も変化しているように感じます。

【山本】それまでは愛の告白以外で渡すチョコレートは「義理チョコ」と表現されていましたが、未曾有の事態を経て義理チョコの意味が顕在化したのではないでしょうか。「感謝チョコ」が定着したことで、渡さなくてよい関係の人には渡さないことも自然と定着し、ネガティブな義理チョコは消滅したように見えます。

■今も昔も変わらない、バレンタインは「ドキドキワクワクできる日」

――毎年のことですが、バレンタイン商品を開発するうえで、アイデアソースになっているのはどんなことですか?

【山本】市場動向やターゲット層のニーズの分析をベースにしたアイデアを、絞り込みにおいては「ドキドキ、ワクワク」させるものであるか、で決めます。バレンタインデーが日本の文化の一つとして63年続いてきたのは、きっとこの日にドキドキ、ワクワクするものがあり続けるからではないでしょうか。

――2013年には記念日文化功労章も受賞されています。バレンタインを見守ってきた63年を振り返って感じていることをお聞かせください。

【山本】『女性が男性に1年に1度愛の告ができる日』というキャッチコピーで、初めて日本ならではのバレンタインデーを提案。女性から男性への告白や共働きなど、これから大きく変化すると予測した女性のライフスタイルに、チョコレートを通じて寄り添ってまいりました。時代の変遷とともにその楽しみ方は変化してきましたが、ドキドキ、ワクワクする日であることは今も昔も変わりません。

――コロナ禍で迎えるバレンタインデーとなります。特別な日のためにメリーのチョコレートを選んでくれた人たちに、どんな1日を迎えてほしいですか。

【山本】おうちでの生活が続くと思いますが、バレンタインデーには普段にはないこだわりのチョコレートを食べ比べしたり、サプライズのプレゼントをして驚かせたり…。キャンセルされないエンタメとして、わがままに、そして自分中心に楽しんでいただきたいです。

――2020年10月に創業70周年を迎えた御社ですが、最後にチョコレートメーカーとして、今後取り組んでいきたいことや、届けたい思いなどがあればお聞かせください。

【山本】節目の年に「チョコレートの新たな愉しみ方改革」として「メリーズラボ」というライフスタイルメディアのWEBサイトを開設しました。第1弾は、チョコレートをよりおいしく感じていただくための空間を作り出す“お香”を、おうち時間での新たな楽しみ方としてご提案いたします。いつもの生活の中に“チョコレート+何か”が加わることで広がる幸せのシーンを、今後も提供していきたいと思っております。