今年7月に開設したYouTubeチャンネルが話題のミラクルひかる。宇多田ヒカルや工藤静香のものまねを始め、広瀬香美本人とコラボした動画は、「おもしろすぎ、双子かよ」「いい意味での相乗効果」「ご本人公認おめでとう!」と大きな反響を呼んだ。毎回ものまね番組で確かなクオリティーのパフォーマンス披露している彼女に反響を聞くと「実はまだ先日のものまね特番のオンエアも確認できていないんです。怖くて」と意外な答えが。彼女が生み出している、絶妙な塩梅でデフォルメされた“ものまね芸”はどのように作られているのか。芸への想いと、知られざる苦悩を語ってくれた。

【動画】ご本人の前だからかメイク控えめ? ミラクルひかると広瀬香美が歌唱した『promise』

■“W香美”動画で大反響「公認していただくと、逆にやりづらくなる(笑)」

――12月の『ものまね王座決定戦』では、広瀬香美さんのものまねが「クオリティー高すぎ」、「今日イチ笑った」、「これだけふざけてるのに、歌い方も声も似てるから文句言えんw」と大きな反響を呼びました。

【ミラクルひかる】かなり大きな反響をいただいて、私自身もビックリしました。STAY HOME中など家にいる時間が増えたことで、事前にYouTubeで動画を観てもらえたことも大きかったのかもしれません。

――広瀬香美さんご本人とのコラボ動画は、再生数89万回越え。「おもしろさ越してまさにミラクル!」、「中毒性が高い動画」と多くのコメントもつきました。

【ミラクルひかる】広瀬さんとは少しだけ面識があったのですが、ご本人から「共演しませんか?」ってご連絡をいただいて本当に驚きました。私みたいな人間がご一緒していいのかなって…。

――広瀬さんのご自宅を訪れるかたちでご本人と共演してされてみていかがでしたか?

【ミラクルひかる】広瀬さんは、「え~、私こんな感じなの?」って、ご本人の立場でちゃんとツッコんでくださって。たまたま広瀬さんの自宅に勝間和代さんもいらっしゃっていて。即座に「ええこんな感じですよ。自分では気づかないと思いますけど、みんなそっくりだって言ってますから認めてください」って(笑)。お二人ともものまねしている方でしたし、勝間さんが間髪入れずにツッコむから、ヒヤヒヤしつつもめちゃめちゃおもしろかったです。

――広瀬さんもミラクルさんのものまねを認めていらっしゃいましたが、公認をいただいたことで今後やりやすくなったり、もっと誇張しようと強気になれたりするのでしょうか?

【ミラクルひかる】うーん…これ実は、逆にやりづらくなるんですよね、私は。ご本人に会ってすごくいい方だと余計に。彼氏がステージを見に来ているとカッコつけちゃうのと一緒で、キレイなネタになってしまうんです。「怒ってたよ!」とか「イラついてるらしいよ」って言われていた方が、もっとひどいことができちゃうというか(笑)。

――なるほど(笑)。ご本人に認められることは、ものまね芸人さんにとって“諸刃の剣”でもあるんですね。

【ミラクルひかる】ただ、私がものまねをすることで、アンチコメントは減るとある方が言ってらっしゃいました。私が体現することで、「あんなことされてがんばれ!」って、みなさん応援する気持ちになるようで(笑)。私の仕事は芸能人の方とお客さんの狭間にいる仕事なので、ものまねをすることで少しでもいい化学反応が起きればといいなと思っています。

――ミラクルさんのものまねは、見る人が思わず笑ってしまうような絶妙なラインのいじりだと感じます。

【ミラクルひかる】自分の中ではルールがあって。いじっているし痛いんだけど、相手を傷つけちゃいけないと思っていて、そのバランスは自分なりに考えていますね。マネージャーさんとか、ご本人に身近な方でさえ「ミラクルひどいよねー」って言いながらも、心の中では思わずクスっと笑っちゃうぐらいのものまねができたらと思っています。

■ショーパブ時代に学んだものまねの真髄「飽きずにやり続けるのが、本当の芸人だと思う」

――ミラクルさんは駆け出しの頃、ショーパブで働いていたと伺いました。
【ミラクルひかる】葉月パルさんという伝説のものまね芸人さんに声をかけてもらって、六本木セルフィッシュというお店で週4ぐらい働いていましたね。パルさんは、コロッケさんの相方的存在で、唯一コロッケさんを呼び捨てにできる人(笑)。

――働かれて学んだことや、今に生きていることはありますか?
【ミラクルひかる】25歳ぐらいからお世話になって、5~6年いたんですけど、本当にいろいろなことを学びましたし、難しいなと思いました。師匠は、25年間ほとんど全く同じネタで毎回ウケを取るんです。お客さんは同じものが見たくて来る方も多いんですよね。そのネタを見せたいから友だちを連れてきたとか。だから変に新ネタばかり詰め込むと、これを見に来たわけじゃないってなるわけですよ。

――そういう心理もあるんですね。
【ミラクルひかる】そう、大人の世界だなって思いました。1つネタができたら10年ぐらいやり続けたほうがいいんだなってことは勉強になりました。私は飽き性なところがあるんですけど、それを飽きずにやり続けるのが、本当の芸人なんだなと。

――ものまねバーで働いていた頃は、いろいろなお客さんがいたのでは?

【ミラクルひかる】いろんな方に出会いましたね。宇多田ヒカルさんの『歌ものまね』にダメ出しをしてくる方がいて、「ここの音の取り方が違うんだよ」「ここはそんな歌い方しない!」とかケチョンケチョンに言われて。その人がOKを出すまでやったりもしました。うまくできると、褒めてくれるんです(笑)。

――そんなダメ出しが(笑)。

【ミラクルひかる】お客さんにも、ものまね感覚のいい方がいらっしゃるんですよね。あのダメ出しをしてくれたおじさん、元気にしてるかなーって今でも思いますね。

■転機は工藤静香、長澤まさみ、広瀬香美「まだ1度も、ブレイクしたという感覚はない」

――ミラクルさんにとって、転機になったものまねはありますか?

【ミラクルひかる】最近だと、広瀬香美さんはやっぱり大きいですね。あとは、工藤静香さんもそうかな。“宇多田ヒカルの人”って言われていたのが、工藤静香さんをやり始めたことで、そっちのニーズが大きくなって。「何かやりましょうか?」って聞いた時に、工藤静香さんをリクエストされることが増えました。それと、長澤まさみさんのものまねも、宇多田さんからキャラを崩すきっかけになったと思います。

――先程、やり続けることの大切さも伺いましたが、ミラクルさんのレパートリーの広さからは、常に新しい物にチャレンジする姿勢も感じます。

【ミラクルひかる】新しい物もやらないと、来年がない感じがしちゃうから。番組で新しいネタをやらせてもらう度に、お尻を叩かれる瞬間もありますし、そこから生まれたものが自分のものになったりして。あとは、ものまね心をくすぐられて自然派生する場合もあります。

――ものまねにも、ガチで似せるタイプの方や、崩して笑いを取りに行くタイプの方など、いろいろなタイプがいらっしゃると思います。ミラクルさんはご自身のスタイルについて、思うところはありますか?

【ミラクルひかる】私も宇多田さんの時は、ガチスタイルでした。隙がないように完璧主義でやりたいって気持ちがあって。でも、仕事としてプロでやっていこうと思うと、全部そういう形でネタ作りすると時間が足りない。体力も持たないんですよね。完成させるには、多大な労力と時間がかかりますから。新ネタをやるのに、1年くださいとは言えないですしね。“自分が生き延びるため”に崩していったところはあります。

――それができるかどうかも、プロとして続けていく鍵なのかもしれませんね。

【ミラクルひかる】私も、笑いをとろうとせずクオリティーだけ上げるように要求されていた時期があって、いろいろたまっていた部分もあったのかもしれないです。そもそも私がものまねを始めたのは、笑ってほしかったからなので。なんだか不思議ですよね。宇多田ヒカルさんっていう芸があったからデビューできたのであって、最初から笑いだけ取るものまねをやっていてもプロにはなれなかったと思うし。ものまねというジャンルの中で、いろんなことをやっていけたらという気持ちは常にあります。

――ものまねを続けていく中で、悩まれたこともありましたか?

【ミラクルひかる】違う道に行こうと思ったことはないですけど、自分の中でずっとお客さんに認めてもらっていない気はしていました。自分としては、1度もブレイクしたことがないんですよ。ずっとやっている商品としてのネタは評価してもらうけど、自分はただ年に何度かものまね番組に出る人なのかな、辞めたら悲しむ人いるのかなって考えたりもしました。

――その思いは今も続いているんですか?

【ミラクルひかる】ここまでやってきて、ようやく今まで厳しい目で見ていた方が少し認めてくれたような体感はあります。私、昔からアルバイトでも飲み会でも最初はすごく距離を置かれるタイプなんです。それが、ある時から急に舎弟みたいに懐に入れてもらえる極端な感じ(笑)。だから、25~6の時からずっと、自分は時間がかかる人間なんだなとは思っていました。

■YouTubeを始めたからこそ気づけた本音「気持ちはかなり楽になりました」

――You Tubeを始めたことで、新たな層のファンも増えたのではないでしょうか?

【ミラクルひかる】昔だったらお客さんが来るのを待つしかなかったですけど、これからは自分で発信してこちらから歩み寄っていくのも大事なのかもしれないですね。自分で時間を短縮できるから、寿命を延ばしたり、逆に辞め時を早めたり、自由にできるのかなって思います。

――実際にYouTubeを始めてみて、ご自身にも変化はありましたか?

【ミラクルひかる】今までは、年に4回のものまね番組に合わせて力を蓄えて爆発させる感じだったので、自分の中で体が悲鳴を上げだしていたんです。歯が折れたりとか…たぶん知らないうちに相当な圧がかかっていたんでしょうね。でも、You Tubeを始めたら力が分散できて、すごく楽になりました。

――小出しにすることで、気持ち的な負担が減ったのかもしれませんね。

【ミラクルひかる】ためてためて出したら立派な物も出るけど、うまくいかなかった時のショックも大きいですからね。少しずつ出していくと、生まれるのも早くなっていい循環にもなっています。テレビでできなかったことをできたりもするし、気持ちはかなり楽になりました。

――今後、You Tubeでやってみたいことはありますか?

【ミラクルひかる】まだ出していないネタもあるし、やりたいことはいっぱいありますね。この間ENDA COSMETICSさんのWEBサイトでやらせていただいた“おばあちゃんの日常”もすごく楽しかったですし。生歌の配信もやりたいし、クリスマスやお正月など季節に合った企画にも挑戦したいですね。

――ご本人とのコラボ企画は、今後も予定していますか?

【ミラクルひかる】今のところはあんまり考えていないですが、矢代亜紀さんとのコラボはやってみたいです! あとは、団塊世代の方にも見ていただけるようなものも作ってみたいです。この間友だちに、「川沿いのベンチで爆音で松田聖子さんを聞いているおじさんがいる」って聞いて。そのおじさんに観られるような女になりたいですね(笑)。
(取材・文:辻内史佳)