夫がいるにもかかわらず、アルバイト先の年下大学院生に恋をしてしまった…。そんな専業主婦のトキメキと葛藤をリアルに描き、「気持ちだけなら構わない」「論外!」など、ネットで賛否両論の声が寄せられている漫画『夫がいても誰かを好きになっていいですか?』(KADOKAWA刊)。大学院で心理学を専攻しているという著者のただっちさんは、不倫が絶えない理由について、「人間にとって、1人の人間を愛し続けることよりも、いろいろな人に好意を抱くことのほうが自然だから」と推測する。タイトルにある質問への答えとは? そして、本作を通して作者が世の夫婦に伝えたいこととは何か。

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■「夫とはもう無理」「不倫をしてみたい」多くの人が抱く深層心理

 著者のただっちさんが大学院に進学したのは、結婚して1年半が経ったとき。「専門的な知識を身につけたうえで漫画を描きたい」という想いからだった。

 本作に登場する主婦は、自分に対して無関心な夫から家政婦のように扱われながらも、“養ってもらっている”という負い目から、不満を口にできない日々が続いていた。そこで描かれるのは、ひとりぼっちという孤独感と、そんな時に現れた“運命の人”と思える男性に傾いていく心、そして自分自身の行為を合理化していく気持ちの変化だ。心理学の知識をベースに、夫がいながら他の男性を好きになってしまった主婦のときめきやとまどい、ためらい、罪悪感など、リアルな心の動きの描写が続く。

 ただっちさんは、不倫に至る人間の心理についてこんな自説を持っている。

「世の中で不倫をしている当事者の大半は、不倫は悪いことだと認識しているし、公になったときには信用を失い、社会的立場も失ってしまうほどのリスクがあることも理解しているはずです。にもかかわらず、不倫をする人が絶えずいるというのは、もしかしたら人間にとって、ひとりを愛し続けることよりも、いろいろな人に好意を抱くことのほうが自然だからなのかもしれません」

 ここ最近、不倫や浮気を題材にしたエンタメ作品が続々と登場して人気を集めているのも、それが理由なのかもしれないと分析する。

「じつは多くの人が、夫とはもう恋愛できない、不倫をしてみたい、という気持ちを抱いているのではないでしょうか。もちろん表にそんな気持ちは出せませんから、エンタメ作品で解消しているのかもしれません」

■「だって夫が〇〇だから…」浮気する女性の言い分

 では、実際に行動に移す人と、エンタメ作品で解消できる人は、何が違うのか。ただっちさんは、ズバリ「夫婦関係にある」と断言する。

「結婚するときに、“100%この人しかいない”と思う人は、意外と少ないだろうと思います。人生は何が起こるかわかりませんから、結婚後にタイミング悪く、運命の人だとしか思えないような、強烈に惹かれる相手に出会うことだってあるはずです。ただ、そんなことが起こっても、夫婦として培ってきたものが大きければ、ブレーキを踏むことができるはずだと思うんです」

 ただっちさんいわく、「ネット上の投稿で不倫に悩む人のコメントには、まず、“夫がこうだから…”という前置きがある」という。自分のしている不倫を正当化したい気持ちや、自分が不倫に至ってしまった経緯に共感してもらいたい表れだが、ならば不満を抱いた時点で、夫にそのことを伝え、話し合えていれば、不倫に至らずに済んだのではないか。

「一度は人生を共に歩んでいこうと誓った相手なのですから、夫婦でもっと話し合えていたら、お互いのことをもっと尊重し合えていたら、結末は変わってきたと思います」

 他人である2人が長く一緒に暮らしていれば、不満やすれ違いが生じるのは当たり前。しかし、それが浮気や不倫につながるか否かは、お互い本音で話し合えているかどうか。夫婦間の会話がないことが、歯車が大きく狂う始まりになるということだ。それを踏まえたうえで、ただっちさんは続ける。

「もちろん、別に好きな人ができたから離婚する、という選択もありだと思います。人生1回きりですから、嫌な気持ちで一緒にいるのはもったいない。ただし、経済的に自立しにくい女性や、子どもがいる場合、なかなか踏み切ることができないというのが現状ですよね。本作の主人公は、結婚相手を条件で選んでしまいましたが、やはり心から好きになった人を選ぶほうが幸せなんじゃないかと思いますね」

 この夫婦の結末にも賛否両論が寄せられた本作。そこには「あなたならどうしますか?」というただっちさんの想いが込められている。