美容家としてビューティ雑誌やイベントに引っ張りだこの美容家・神崎恵。最近ではドラマ『だから私はメイクする』(テレビ東京系)で主演を務めるなど、活躍の幅を広げている。昨年10月には『神崎CARE』(ワニブックス)を刊行。年齢問わず多くの女性たちの“美”のアイコンとなった彼女は今、何を思うのか。スターダムを駆け上がった先で周囲に求められる姿と、本来の姿との間にズレを感じることはなかったか。また、自己ブランディングによって生じる新たな悩みとは? 外見の華やかさ・美しさからはわからない彼女のもがき・悩みについて、直撃した。

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■コロナに見舞われた2020年「迷ったり不安を感じたりしたからこそチャレンジできた」

「美容家としての活動では、雑誌や書籍など、皆さんに情報を静止画でお伝えする機会が多いせいか、どうしてもとても女性らしい印象や、温度感が低い印象を受ける方が多いようなんです。『ツンとした人かと思った』『大きい人かと思った』もよく言われますし。でも、ドラマに出演したことで、これまでの印象が良い具合に崩れて、温度感や雰囲気に親しみを感じてくださった方が多いのは、嬉しいことです」

 実際に目の前にいる神崎恵は、顔も声も表情豊かで、ツンとすました美人というよりむしろ少女のような可憐さ・愛らしさが際立つ。しかし、現在45歳。結婚・離婚・再婚も経験した3児の母だ。

 コロナ禍で日常の当たり前が失われ、生活様式も変化した2020年。その一方で、個人的には4月に『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK総合)で特集されたり、「ananAWARD2020 トレンドカルチャー」を受賞したりと、大きく飛躍した年である。この1年を彼女自身はどう振り返るのだろうか。

「2020年は、私にとって、もがきそして動いた年。これまで無我夢中で走ってきて、ふと立ち止まる時間ができたことで、今の自分やこれからどう進んでいくかを考えました。私は2~3年単位で目標を立てるんですが、その目標がなんとなく達成できた、句読点を打てたのがちょうど2020年でもあって。迷ったり、不安を感じたりするときこそ、とにかく動き、チャレンジすることにしているので、2020年はいろんなことに挑戦しました」

 これまで30冊以上出してきた著書のキーワードは、〈美人になる〉から〈自分の顔を好きになる〉、さらに〈自分自身が心地良くいられる顔〉と年々変化しているように見える。しかし、「伝え方 ・表現が変わっているだけで、芯は全然変わっていない」と語る。

「私の本を読んでくださる読者の方は、新刊が出るのを楽しみに読んでくださっているので、みんなで一緒に年を重ねてきている感じなんですよ。変わっていく時代を一緒に肌で感じているからこそ、いまの気持ちにいちばんフィットする、寄り添うことができる提案をしています。そもそも私は美容において、『綺麗なことばかりじゃなくて良い』と思っているんですよ。綺麗になりたい、誰かが妬ましい、そうした気持ちに折り合いをつけたい、気持ち良く生きたいといった全てを包み込んでくれるのが美容だと思っていて。だからこそ、傷ついた気持ちや、モヤモヤした気持ち、ホルモンバランスの乱れなど、女性の大変さなども同時に素直に発信していかないと、と思います」

■「おばさんでも全然いい。年齢を重ねることによって無敵な生き物になれる」

 実は神崎が使わないようにしているワードの一つに「若々しく」「若見え」などがあるという。それは、彼女の「老い」のとらえ方・スタンスそのものだ。

「若く見える必要はなくて。いっそのこと『おばさんでも良いじゃん』という本を書かせてと言い続けているぐらい(笑)。『おばさんのくせに』と言われることもたくさんありますが、『いやいや、私はおばさんでも全然いいんだけど?』と。年をとることはロールプレイングゲームのようなもので、経験値を積んでお金も力もたくわえて武器も装備して、どんどんレベルアップしていく。年齢を重ねることによって無敵な生き物になれると思うんです」

 その一方、女性の憧れ、美のアイコンというイメージが確立されている中で、周りに望まれる姿と本当の自分とのギャップを感じることは「毎日」だと語る。

「私は1つの仕事に対して100通りくらいの提案を用意して行くので、仕事には絶対的な自信を持っているんですが、その半面、どこかにいつも『私なんかで良いのかな』という気持ちもあって。私自身は、自分の頼りなさもいっぱい知っているし、失敗もモヤモヤした気持ちもみんなさらけ出しているので、『お手本にしたい』などと言われると『いやいや、私も手探りでやっていて、足りないところがいっぱいあるんですよ』と」

 失敗も隠さずさらけ出すこと、綺麗事を言わないことが、逆に支持される理由なのでは、と問うと、こんな意外な反応が。

「そうなんですかねぇ……。どちらかと言うと私は女性に嫌われる存在として生きてきたんですよ。『女女しい』と思われがちですし、10代20代の頃には『男、盗りそうだよね』と言われたこともありました。小柄なことや顔の作りにそういう雰囲気があるんでしょうけど。だから、同性の方たちに嬉しい声をいただけるのは不思議な感じで、何よりも嬉しいんですよ」

 また、ファンが自身の理想を重ねて見ることについては、「苦悩は全くない。嬉しいし、励みになる」と笑顔を見せる一方、茶目っ気たっぷりにこんな”素顔“も見せる。

「私、全然完璧ではないんですよ。金曜日のクローゼットなんて本当に大変な状態で、週末にまとめて片付けるんですが、周りに片付けてと言う人がたくさんいるから(笑)。今日もTwitterでタグ付けして下さっている方の『部屋が汚いと、神崎恵の部屋はきっと綺麗だと思う』『サボりたいなと思ったとき、神崎恵はサボらないんだろうなと思う』といったツイートを見たんですが、いやいや、そんなことないよと(笑)。ただ、皆さんの中で、頑張ろうと思うときに奮い立たせる存在でありたいし、ダメだったときに『大丈夫だよ、私も一緒だよ』って思ってもらえる存在でもありたい。都合よく利用していただけたらと思います(笑)」

■「仕事と育児は両立しなくていい」不自由だからこそ、やりくりの楽しさがある

 美容家として活躍する一方、私生活では3児の育児に追われる母でもある。両立はどうしているのかと思うが、「両立しなくて良い!」というのが神崎流だ。

「スイッチの切り替え方のコツは、単純に時間で区切ること。朝9時に三男を幼稚園に送り届けて、5時まで仕事と決めているので、その間は仕事に没頭し、5時に仕事が終わった瞬間からはもう仕事のことは一切考えない。息子たちが寝たら、そこからまた仕事のことを考えます。子どもといるときは、仕事しようとしてもできないから、自然とそういうかたちに着地した感じなんです」

 スイッチの切り替えは、もちろん楽なことじゃない。しかし、模索してきた中で自然に着地した現在のスタイルが、彼女が美しくあり続ける原動力となっているようだ。

「子どもたちを理由にはしたくないですが、実質的に時間は制限されるし、長時間の仕事には行けない。だからこそ、そういうちょっとした不自由さが、私のやる気にもなっているんです。校則があったときなど、ちょっと縛られているときの工夫する楽しさってありますよね。今は、息子たちの存在が良い作用になっているなと思います」

 そんな神崎が考える「美容」とは「女性の力になったり、勇気になったり、癒しになったりするもの」だ。

「もちろんコスメも魔法みたいなものですけど、気持ちよく感じることもお肌に良いことだし、大好きな人と会う、美味しいものを食べるというのも、美しさにはとても良いこと。心地良いことが美容だと思うので、いろんな美容を楽しんでいただきたいと思います」

 また、美しくあり続けるために意識しているのは、「雑音に振り回されないこと」。それはコロナ禍の今がチャンスのときだとも語る。

「今は、良くも悪くもいろんな雑音が耳に入る時代。SNSなどによって、会ったこともない人に心ないことを言われたり、まったく別の場所で生きている人と自分と比べてしまったりすることがありますよね。距離が近くなって便利な分、難しい時代・苦しい時代だと思うので、自分のちっちゃい世界を持って楽しんでいくことが今の時代には必要だと思います。」

(取材・文/田幸和歌子)