結成20周年という節目の年にふさわしく、2020年のオードリーはまさに“第2の黄金期”を感じさせる活躍ぶりとなった。コンビ・ピンそろって、レギュラー番組でもゲストでも出演が相次ぎ、『2020テレビ番組出演本数ランキング』では、若林正恭が4位(496本)&春日俊彰が7位(433本)とコンビそろってベスト10入りを達成。その人気の秘密はどこにあるのか。13時間にもおよぶ超ロングインタビューと再現VTRによって、濃密な内容に仕上げ、改めてオードリーの魅力に徹底的に迫り話題となったTBS系バラエティー番組『中居正広のキンスマ』を通して検証していく。

【写真】『2020テレビ番組出演本数ランキング』コンビそろってトップ10入り

■NGなしですべてを激白 秘蔵映像&超ロングインタビューで明かされた2人の歴史

 5月1日には『キンスマスペシャル』として、2時間ぶち抜きでオードリーを大特集。インタビュー、中居正広とのスタジオトーク、再現VTRなどを通して、幼少期からの半生、両親の話、それぞれ既婚者となった2人のプライベートエピソードまで、NGなしですべて激白した。2人が“活動のベース”と公言するラジオ『オードリーのオールナイトニッポン(ANN)』で語られてきたエピソードも数々飛び出てくる展開に、リトルトゥース(ラジオリスナーの愛称)は「#annkw」と番組のハッシュタグをつけて実況。「エピソードトークが映像化されている」「フリートークの実写化に感謝」といった声が相次いで寄せられた。

 昨年11月に交際3ヶ月でのスピード婚をした若林は、結婚の決め手となった出来事として、亡くなった父親との思い出を回顧。4年前に肺がんで入院していた父がある時に「お前は結婚しないのか? 結婚はいいぞ」と語りかけたといい「ビックリしましたね。『ずっと思っていた』っていうのも言われて、(父と母が)2人で旅行したのも見たことないので、シャイな親父が熱量を込めて言うんだったら、『そうなんだな』と…」と振り返った。

 父との印象的な思い出については「いろいろありますけど、一番は(亡くなる)1日前だったかな。食べたいものを聞いたら『コンビニのソフトクリームが食べたいな。あれが食べたいんだ』って。死ぬ間際に食べたいって思うものがコンビニで手に入るっていうのは衝撃でした」と告白。「そんなに楽しいことであふれているんだなって思っちゃうと、自分が一応細々と積み上げてきたキャラがオジャンになりました」とインタビューで語り、自らのVTRを見つめていた若林は目に涙を浮かべていた。

 2時間のスペシャルには収まりきらず、翌6月19日には第2弾を放送。売れない暗黒時代からの奇跡の逆転ストーリーにスポットを当て、高校・大学時代のコンビ結成秘話から、当初のコンビ名「ナイスミドル」時代も紹介。当時は若林がボケで春日がツッコミと現在とは担当が逆だったが、今では考えられない超貴重な「ナイスミドル」のお宝動画や、迷走中の若林が生み出してしまったという、伝説の珍ネタ「アメフト」の映像までも公開された。

 結成当初にあたる2000年代前半、ネタ番組全盛の時代にあって、9年間テレビに出られなかった2人は、アルバイトの給料6万円のみで生活をしのいでいた。2005年には、コンビ名を「オードリー」にしたが、すぐに状況は好転せず、春日は当時の心境について「コンビ名を変えるくらいでよくなるとは思ってなかったですから。ヘップバーンの方が良かったんじゃないかって」とかみしめるように語っていた。

 解散を決意した若林だったが、ショーレストラン『そっくり館(やかた)キサラ』に、ともに出演していたビートたけしのものまね芸人・ビトタケシの「死んでも、やめんじゃねーぞ」の一言で、気持ちに変化。『オードリーのANN』のコーナーにもなっているほど、2人にとってターニングポイントとなった名シーンの再現VTRには、ビト本人が出演するなど、リスナーにとってうれしい演出も見られた。

■『金スマ』スタッフが語るオードリーの魅力 若林の話術に「見事に釣られました(笑)」

 過去をひも解きながら、今の活躍につながる一面が次々と垣間見えた『キンスマ』オードリー特番を手がけた同局の高田脩氏に、特番の意図や反響などを聞いてみた。

――特番を行おうと思った理由

大それた狙いがあったわけではないのですが、20周年という節目にメモリアルな放送にできたら面白いだろうと思ったのと、ラジオなどで話すオードリーさんのエピソードは“金スマ再現”したら面白くなるだろうとは思っていました。2019年に岡村隆史さんに出演していただいた時に、ラジオなどで話す、ファンにはなじみのあるエピソードトークでも、再現ドラマにすると、違った面白さが生まれると発見できていたので、オードリーさんは、その形にハマる人だと思っていました。オードリーさんは、とにかくエピソードがたくさんあったので、インタビューや収録も長くなるだろうとは予測できていました(笑)。

――視聴者からの反響

放送前にこぼれ話(春日さんの実家に取材に行ったら、エミールのお菓子を出してもらえたなど)をツイートしたら、ファンの方からすごい反響があり、熱狂具合がアイドルを取り扱っている時のようで驚きました。また、『ヤンジャン』で連載している『BUNGO―ブンゴ―』の二宮裕次さんが「しばらくネームは横に置きます」とツイートしてくれたり、業界人の方にもファンがいることにも驚きました。

――改めて感じたオードリーの魅力

僕が『金スマ』という番組で担当した出演者の方の中で、一番、ちゃんと向き合えてインタビューできた芸能人がオードリーさんです。会話をしていて楽しかったですし、その“ノリ”が、インタビューの映像にも出ていたと思います。印象的だったのは、インタビューを受けていただいたのですが、僕の印象としては、「導かれているように、質問をさせられた」のを記憶しています。若林さんの中で全体構成ができていて、そこに誘導されるように質問をさせられた印象です。結婚のことやズレ漫才の発明についても、あれは若林さんの話術だったのではないかと、振り返ると思います。

質問している側なのに、質問させられている。そんな感覚です。(テレビ東京の)『あちこちオードリー』でのMCぶりを見ていても、きっとそうなんだろうとは思っています。見事に釣られました(笑)。それと、『金スマ』に出演することを楽しもうとしている姿も印象的でした。「受けたからには、前向きに挑む。楽しむ」プロフェッショナルな姿勢にこちらもモチベーションが上がり、盛り上がって作れました。本当にありがたかったです。最後に、コアな話ですが、3人目のオードリー、同級生の谷口さんにも取材をさせてもらいましたが、ほとんどカットになってしまったことは、反省しています。本当の未公開です。

■テレビで活躍しながら、ラジオファンに寄り添う 若林が語った「きょう1日が特別」

 高田氏の言葉を聞いて思い出したのは、2016年に訪れたキューバについて書き下ろした旅行記エッセイ『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』の文庫化にあたって、今年の秋に行ったインタビューでの若林の姿だ。記者会見のように、若林が中央にひとり座り、集まった記者たちの質問に答えていくというスタイルだったが、媒体によってさまざまな質問が寄せられる中、若林がゆっくりと言葉を紡いでいくと、それに派生して、さらに質問が飛び交うという時間が流れていった。まさに「導かれているように、質問をさせられた」経験だった。

 「受けたからには、前向きに挑む。楽しむ」、そんなプロフェッショナルな姿勢についても同様だ。オードリーのラジオ、冠バラエティーやレギュラー番組などを見ていると、与えられた環境でベストを尽くして最大限に楽しむという様子が伺え、それを見て視聴者やリスナーも楽しんでいる印象を受ける。『表参道~』文庫化のインタビューで、若林は「自分たちがまた仕事がない時が来ると思うと、本当にきょう1日が特別なんだなと思って。背伸びもせずにやるしかないなという気持ちです」との思いを口にしていたが、決して後ろ向きな意味ではなく、高田氏が指摘した“オードリーのプロフェッショナルな姿勢”に裏打ちされた言葉であると、改めて実感することができた。

 『M-1グランプリ2008』で世間の注目を集め、2010年にはコンビとして『テレビ番組出演本数ランキング』の1位を獲得。その後も常に活躍しながら、一方でラジオという“ホーム”を大切にし、若林は結婚を、春日は第1子誕生をラジオで報告し、リスナーとのつながりも強くしていった。お茶の間を楽しませながらコアなファンにも寄り添い続ける。“第2の黄金期”を迎えたオードリーは、これからも自分たちが楽しみながら全力で前に進んでいく。

 次回はレギュラー番組のスタッフの証言から、オードリーの進化と変わらない部分について、より深堀りしていく。