俳優の高橋一生が主演するNHK総合/BS4Kのドラマ『岸辺露伴は動かない』(28日から3夜連続 後10:00)。荒木飛呂彦氏の大ヒット漫画『ジョジョの奇妙な冒険』からスピンオフした傑作漫画を初めて映像化する。脚本は、原作の“完全再現”で熱烈なファンからも高評価を得ているアニメ版のシリーズ構成を手掛けた、小林靖子氏が担当。実写版《岸辺露伴》はどのように生まれたのか。執筆秘話を明かした。

【写真】高橋一生ら『岸辺露伴は動かない』場面カット

 『岸辺露伴は動かない』の主人公は、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』(第4部)に登場する漫画家・岸辺露伴。相手を「本」にしてその生い立ちや秘密を知り、書き込んで指示を与えることができる“ヘブンズ・ドアー”という特殊な能力を持つ。そんな彼が、遭遇する奇妙な事件に立ち向かう姿を描く。今回ドラマ化されるのは「富豪村」「D.N.A」、そして「岸辺露伴は叫ばない 短編小説集」より「くしゃがら」の3エピソード。

 「原作はどれも短編で、49分のドラマにするにはどれも短いため、全話を通して1本の物語とする縦軸をつくり、オリジナル要素も入れつつ、物語全体を再構築しました。今回はNHKの地上波で、子どもから大人まで幅広い層の方が観る、原作漫画やアニメを知らない方も観る、ということを前提に、主人公の岸辺露伴がどんな人物なのか説明するシーンも必要です。そこで第1話『富豪村』の原作に出てくる露伴の担当編集者・泉京香(飯豊まりえ)を全話に出したいと提案しました。そのほか、実写に即した描写へ変更する際も、“ジョジョ”の世界を壊さないように、相談しつつ進めていきました」

 今回の実写化プロジェクトに携わり、目からうろこが落ちるような発見もあったという。

 「第3話に、逆さ言葉(※こんにちは→ハチニンコ)しかしゃべらない女の子が出てくるのですが、実写でそれをやったらギャグになってしまって、作品全体の雰囲気を壊してしまうのではないか、と思ったんです。ですが、荒木先生はそこにこそこだわっていらっしゃいました。

 先生からのフィードバックを重ねていくうちに、『ジョジョの奇妙な冒険』には《奇妙》がついているだけのおかしみがある。そのことを忘れがちになっていたな、と気付かされました。私は理詰めに考えて、つじつまが合っていないとダメなんじゃないかと思ってしまうのですが、そんなことをふっ飛ばして生まれるおかしみこそ“ジョジョ”だよね、と改めて認識させられました。8年もアニメで携わってきたのに、いまさらですが(笑)。《だが断る》や独特のせりふ回し、シチュエーション、生身の人間が実際にやってみると不自然なポージング…そのすべてが妙なおかしみを生んで印象に残る。原作の魅力を再発見しました」

 アニメでは、語尾の「ッ!」や「じゃない」ではなく「じゃあない」、「レロレロレロ…」といった“ジョジョ”独特の言い回しは、原作に記されているとおり台本に書き起こし、声優たちが緻密に表現してきたという。今回のドラマも同様に、高橋が「だが断る」や「おいおいおい…」などの独特の言い回し、さらにはポージングにも挑戦している。

 「アニメ化の時も思っていたことですが、原作を知らない人が映像作品を通して荒木作品に初めて触れた時、その面白さに気づいてもらえたら、本当にうれしいです。今回のドラマ『岸辺露伴は動かない』も、そういう作品になっていると思います」

■作家でも脚本家でもない、強いて言えば“脚本士”

 小林氏は、アニメ作品、特撮テレビドラマ作品を多く手掛け、『仮面ライダー龍騎』『仮面ライダー電王』『侍戦隊シンケンジャー』『灼眼のシャナ』『進撃の巨人』などの作品に参加している。特に原作がある作品では、原作に忠実でありながら作品世界を丁寧に掘り下げていく手腕でファンの絶大な信頼を得ている。

 「子どもの頃からアニメや仮面ライダー作品を観て育ってきたので、キャラクターをどう見せていったらいいか、子どもの頃から刷り込まれているんでしょうね。商品化される玩具を取り入れたストーリーを考えるのは得意ですが、恋愛小説を書けと言われたら書けないかもしれないです(笑)。そもそも文章を書くことが好きではないですし…」

 まさかの発言に驚いていると、小林氏は笑いながら続けた。

 「文章というか、小説の地の文が苦手。せりふを考えるのは好きなんです。だからシナリオは書ける。ト書きには美しい文章や独特な表現はいりませんからね。小学生の頃からノートにせりふのやり取りだけを書いて、脳内で映像化して楽しんでいました。作家や脚本家は自分の表現したいことや自分にしか書けないものを持っているイメージがあるのですが、私はそういうタイプではないんですね。だから自分のことを作家とも脚本家とも思っていないんです。強いて言えば“脚本士”。作品やキャラクターの魅力を映像的にどう伝えるべきかを考えて、これまで培ってきたシナリオライティングの技術を駆使してそれを実現する。そこに自分らしさは必要ないというか、全く意識していないですね」

 縁の下の力持ちに徹し、何を期待されているのかを読み取って、求められていることに高い精度で応えてきた小林氏。ドラマ『岸辺露伴は動かない』への期待は高まるばかりだが、続編があれば、「ぜひ!やりたいです」とアピールしていた。

★第1話「富豪村」
12月28日(月)午後10:00〜10:49
 周囲から隔絶された山奥に豪邸が11軒ある「富豪村」。所有者はいずれも各界で成功した大富豪ばかりで、いずれも20代でこの村の土地を所有してから成功しているという。ただし、条件をクリアしないと買うことが許されないらしい。ことの真偽を確かめるべく、露伴(高橋一生)は、新人の担当編集・泉京香(飯豊まりえ)と共に富豪村に赴く。そこで課されたのは奇妙な試験だった。それは「マナー」。マナーに寛容はない。「正しい」か「正しくない」か。一つマナーを守れば成功に近づくが、一つ破れば大切なものを一つ失っていく…。

★第2話「くしゃがら」
12月29日(火)午後10:00〜10:49
 露伴は同僚の漫画家・志士十五(森山未來)から奇妙な相談を受ける。担当編集者から「くしゃがら」という言葉は使用禁止だと言われたのだ。しかしネットにもどんな辞書にも意味は載っていない。使うなと言われると使いたい。だが意味を知らないと使えない。「好奇心」の魔物にむしばまれ、十五は心身に異常をきたす。露伴が彼を「本」にするとそこには袋とじページが。袋とじの中に何かが蠢(うごめ)いていて…。

★第3話「D.N.A」
12月30日(水)午後10:00〜10:49
 京香から彼女が付き合っている写真家の平井太郎(中村倫也)の記憶喪失を、“催眠術”で探って欲しいと頼まれた露伴。太郎は、著名な写真家だったが、6年前に交通事故にあい、一命は取り留めたが、完全な社会復帰に至っていなかった。露伴が京香に太郎を紹介され話しているところに、バギーに女の子を乗せた片平真依(瀧内公美)が通りかかる。すれ違い様バギーの奥から娘・真央の手が伸び太郎の裾を掴み、太郎を転倒させてしまう。その瞬間、露伴はシェードの奥から見つめる真央の目に異変を感じていた。