毎年恒例の「2020年ブレイク芸人ランキング」(オリコン調べ)が先日発表された。1位には【ぺこぱ】が選ばれたが、2位に【フワちゃん】、3位【3時のヒロイン】と、上半期でTOP3圏外だった2組に加え、8位の【ぼる塾】も初のランクインをするなど、女芸人の躍進が目立った。ほかにも先日放送された『女芸人No.1決定戦 THE W』(日本テレビ系)で4代目女王に輝いた吉住が話題になるなど、今年は女芸人が活躍している1年だった。彼女たちの需要が年々と増加傾向にある理由とは。

【写真】ゆりやんレトリィバァ、減量後の大胆“美ボディ”公開「とってもきれい…!素敵!」

■ピン女芸人が作ってきたレール“自虐ネタ”とそれを崩す存在

 ここ10年ほどで女芸人たちが築いてきたレールは、(1)「ブス」「デブ」「モテない」などの自虐系のテンプレネタ、(2)男芸人に負けないくらい体を張った芸、の2パターンに大別できる。

 大久保佳代子や柳原可奈子、いとうあさこ、椿鬼奴にアジアン・馬場園梓などは、自虐を武器にお笑い界で存在感を発揮してきた(1)パターンに入るし、体を張った(2)でいえば、スポーツ系のイモトアヤコにや、下ネタも辞さない森三中、ガンバレルーヤ、おかずクラブといったあたりが入る。実際は(1)と(2)をクロスオーバーする女芸人が多く、ひと言でいえば『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)の時代と言っていいかもしれない。

 そんな流れの中、きっかけこそ“豊満すぎる肉体でビヨンセを完コピする面白さ”だった渡辺直美は、「自虐」と「体を張る」だけの女芸人のスタイルをぶっ壊し、ファッションアイコンにまで自分を昇華させた。さらに「笑われる側」から「笑わせる側」へと自分を変容させ、日本を超えて海外ツアーまで敢行してみせた功績は、女芸人を取り巻く環境を大きく変えたのである。

 また、昨今のジェンダーレス(性差を取り払う、取り払おうという考え)の流れも、女芸人たちに与えた影響は大きい。尼神インター・誠子は「ブス」も「はたき」もやめたとインタビューで語り、フォーリンラブ・バービーも女性としての生きにくさや、性の問題などについて自身の立ち位置をSNSで発信。光浦靖子やたんぽぽ・川村エミコらもエッセイを発売し、これまで“女芸人”として生きてきた思いを吐き出すなど、今年は今まであまり語られることのなかった女芸人たちの内面に焦点が当たった。

■第7世代、NEXT第七世代が切り開いている女芸人の新しい立ち位置

 こうした“渡辺直美以降”と“ジェンダーレス”の流れは、いわゆる「お笑い第7世代」に象徴的に表われているかもしれない。今回のランキングに登場する女芸人はみな第7世代以降だ。

 その筆頭ともいえる3時のヒロインこそ、若干の女性らしさを残しているものの、最近勢いが増しているぼる塾は、「実は水着や大食いはNG」であることを感じさせないほど“それまでの女芸人”的な姿ながら、あくまでもネタや純粋な面白さで勝負している。

 さらに『女芸人NO.1決定戦 THE W』に出場した女性コンビのAマッソは、真っ向から「女でも男でもできて、テレビに固執しない」ネタを披露し、優勝した吉住以上に高く評価された。過去のインタビューでも「テレビで求められていることがすべてではない」と語り、ライブでウケること、テレビで求められることを精査しながら、自分たちの笑い(ネタ)を追及している。

 これまで売れる芸人とは、“テレビ”から発生・醸成・形式化した流れに沿った笑いに長けていたものだが、今では自分自身の生き方、女性であれば女性としての自分の生き方を楽しむ方向を自分で形式化し、笑いに乗せる流れに入っている。
 
■テレビの中心で活躍 実力も補償され女性芸人の需要が拡大

 その他、今年は女芸人の活躍が各所で目立った。阿佐ヶ谷姉妹は老若男女を問わず安心できる安定した笑いを提供し、制作側にも重宝された。コロナ禍でスタジオ収録がままならない時期であっても、隣同士に住む強味を生かし、自宅でのゆるい2人の空気感が伝わる独自のリモート出演で、好感度もあげた。

 最近では珍しい“純度100%”のお笑い番組『有吉の壁』(日本テレビ系)でも、多数の男性若手&中堅芸人に混じり、友近や大久保佳代子、平野ノラ、森三中・黒沢かずこらが出演。有吉弘行から「◯(クリア)」をバシバシ獲得し、果敢に笑いをとっていく。バラエティのひな壇では見ることのできない、ベテラン女芸人が実力で挑んでいる姿に、昨今の女芸人の動きが芸人魂に火をつけているのでは?とにわかに感じる。

 『THE W』は今回で4回目だが、視聴者からは参加者の実力が年々上がっているというコメントが多く、制作側、同業陣(男性芸人)が女芸人を見る目にも変化が生じていることがうかがえる。

 そもそもこのご時世、お笑いの実力に男女の性差を持ち込むのはもはやナンセンスであり、外見やビジュアル“だけ”で笑いを取る時代はとうの昔に終わっているのかもしれない。

 逆に、ネットとテレビを股にかけるフワちゃんのタメ口キャラにしても、いわば女性ゆえの“武器”(男だったらもっと反感を買うだろう)ともいえるし、それもSNSが普及し、多様性のあるお笑いを視聴者が受け入れる時代に入ったからこそであろう。

 こうした「性差」も「性差から生まれる笑い」もイーブンな目で視る流れは、さらなる新しい笑いが生まれる可能性を開き、お笑い界の未来をますます明るくするのではないだろうか。