先日(12日)、昨年12月30日にNHK総合にて放送されたスタジオジブリ最新作『アーヤと魔女』が4月29日より全国の劇場で上映されることが発表された。公共放送NHKの番組が劇場公開される例はほかにもある。どういう仕組みになっているのだろうか。

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 先月29日より劇場公開された『心の傷を癒すということ 劇場版』は、昨年1月よりNHK総合の土曜ドラマ枠で放送された『心の傷を癒(いや)すということ』(NHK大阪制作、49分×4話)を上映時間116分の作品に再編集したもの。番組の二次使用を許諾したパターンだ。

 阪神・淡路大震災発生時、自ら被災しながらも、他の被災者の心のケアに奔走した若き精神科医の物語。手探りながらも多くの被災者の声に耳を傾け、震災後、日本におけるPTSD(心的外傷後ストレス障害)研究の先駆者となるも、志半ばでこの世を去った実在の精神科医、安克昌(あん・かつまさ)氏の著書「心の傷を癒すということ 神戸…365日」を原案に、遺族関係者への取材も重ねて紡ぎ上げたオリジナルストーリー。

 主人公・安和隆役を柄本佑、妻・終子役を尾野真千子が演じ、放送文化基金賞(番組部門)・最優秀賞を、主演を務めた柄本が同賞・演技賞、ギャラクシー賞(テレビ部門)の2020年2月度月間賞を受賞するなど、高く評価された。放送後、視聴者からの反響を受け、「もっと多くの人に鑑賞してもらいたい」という思いもあって、映画化する企画が急浮上。製作委員会が立ち上がり、NHKから「二次使用の許諾」を得て、実現された。

 NHKの広報を通じて問い合わせたところ、「NHKでは、番組の放送後に外部から活用の求めがあった場合、放送の成果を社会に還元するため、また放送の成果を社会に届けきるために『放送の二次使用』として、一定のルールのもとで使用許諾をしています。NHKは放送に向けて番組を制作・放送し、外部からの許諾の求めに応じて、関連団体を通じて、映像を有償で提供しています。映画版の制作そのものには関わっていません」と、文書で回答があった(以下、同じ)。

 2018年9月公開の『映画 おかあさんといっしょ はじめての大冒険』や、昨年1月に公開された『映画 おかあさんといっしょ すりかえかめんをつかまえろ!』は、NHKの番組映像は一切使っておらず、外部の製作委員会が新作で映像を制作したもので、NHKは『おかあさんといっしょ』という番組名を「有償で使用を許可」したということだった。

 昨年の第77回ヴェネチア国際映画祭で、日本人作品としては17年ぶりの快挙となる銀獅子賞(監督賞)を受賞して話題となった、蒼井優主演、黒沢清監督作『スパイの妻<劇場版>』は、もとはNHK・BS8Kで昨年6月6日に放送された8Kドラマ。こちらは映像の二次使用ではなく、「NHKと外部の制作会社などが制作原資を分担し合い、放送を目的としたコンテンツ制作に共同で取り組む共同制作」によるもの。劇場版の製作著作には、「NHK, NHKエンタープライズ, Incline, C&Iエンタテインメント」とある。

 俳優の柳楽優弥が主演、女優の有村架純、三浦春馬さん(享年30)が共演し、昨年8月15日にNHK総合で放送された特集ドラマ『太陽の子』も、今年、映画として劇場公開が決まっているが、こちらも「共同制作」。冒頭の『アーヤと魔女』もスタジオジブリとNHK、NHKエンタープライズの「共同制作」である。

 NHKは民放に比べると直接制作する割合は高いのだが、外部の制作プロダクションと共同制作している番組も珍しくない。外部との共同制作する目的や理由を聞くと、「国内外の優れた制作能力を有する制作会社と共同制作することで、多彩で高品質なコンテンツを確保し、また、できあがったコンテンツをパートナー事業者が放送外で利用することで、コンテンツ産業の振興やコンテンツ流通の促進につながることを期待しています」と、返答があった。

 なお、『太陽の子』は国の垣根を超えた国際共同制作で、NHKとELEVEN ARTS Studios (USA)による、日米合作作品。国内外から参加した多数のスタッフが科学と戦争というテーマに国籍問わず議論を重ね、8Kの最新映像技術を用いて制作された。音楽を『愛を読む人』(2009年)のニコ・ミューリー。サウンドディレクターを『アリー/スター誕生』(2018年)のマット・ヴォウレス。『アルマゲドン』(1998年)をはじめとする有名作に出演しているピーター・ストーメアが声の出演をするなど、ハリウッドの第一線で活躍するキャスト・スタッフが参加するというクリエイティビティにもつながっている。

 戦争に翻ろうされた若者たちの姿をテレビドラマとは違う視点で描く、と発表されている映画版『太陽の子』は、ドラマ版を手掛けた黒崎博氏(連続テレビ小説『ひよっこ』、大河ドラマ『青天を衝け』など)が引き続き監督・脚本を担当しているが、「黒崎氏は、『太陽の子』制作当時はNHKエンタープライズに出向していて、テレビドラマはNHKからの委託を受けて制作し、そのテレビドラマをもとにした映画は、共同制作者からの委託を受けて、NHKエンタープライズ独自の事業として進めました」と、説明。

 一貫しているのは、NHKが制作・放送するのはあくまでもテレビドラマで、「映画版(劇場版)の制作や配給には関わっておりません」。NHKの番組が映画などの事業に展開されることがあるのは、「放送の成果を社会に還元するため、また放送の成果を社会に届けきるため」。それによって生じる副次収入は「受信料の抑制等に充てている」とのことだ。