かつては『エンタの神様』(日本テレビ系)などで活躍しながら、その後ゴミ収集会社に就職。現在ではSNSや著書を通じ、ゴミにまつわる活動を行うマシンガンズ・滝沢秀一。以前は、売れなくなったこと、収入が落ちたことへの焦燥もあったが、ゴミ清掃に本気になることで、過去へのこだわりを捨てた。浮き沈みの激しい芸人の世界で、再起する生き方とは? ゴミから学んだ「人間、たとえ捨てられても“リサイクル”可能」という考えに至った経緯を聞いた。

【写真】「この人でなければ離婚してたかも…」滝沢秀一と妻の友紀さんの2ショット

■収入悪化、「もう芸人を廃業しよう」と飛び込んだゴミ清掃業界

 1998年に西堀亮とお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成し、『エンタの神様』(日本テレビ系)などで活躍した滝沢秀一。一時は人気を誇ったものの、徐々に収入は低下し、生計を立てるためにゴミ収集会社に就職した。その後、2018年には清掃員の日常を綴った著書『このゴミは収集できません』を上梓。漫画などの関連書籍を含めてヒットし、大きな話題に。SNSでの活動も注目を浴び、今年10月、環境省から『サステナビリティ広報大使』にも任命された。そんな滝沢が2014年に発表した小説『かごめかごめ』が今冬、大幅にリニューアルした文庫版として発売。ストーカー、殺人から始まる、“ゴミ”にまつわる極上のミステリー作品になっている。

――この10月、小泉環境相から『サステナビリティ広報大使』に任命されました。

【滝沢秀一】驚きですよね。ゴミについての広報活動が評価されたようなのですが、先日、第2号として武井壮さんも任命されました。本当に恐縮ですが、頑張ってやっていきたいと思っています。芸人をやってたつもりなのに、いつの間にか活動家みたいになってますよね(笑)。

――テレビ出演も増えてますね。

【滝沢秀一】今後は、ゴミエンタテインメント、ゴミ芸でやっていきたいなと思ってます(笑)。芸能界の端っこに居させてもらえればいいな、と。お陰様で忙しくさせていただいていますが、ゴミについての広報活動も行っているということで、ゴミ清掃会社にも理解をいただいて両立できています。

――ゴミ清掃会社に入ったきっかけは、奥さんの出産費用のためだったんですよね?

【滝沢秀一】はい。収入が悪化して貯金もなく、そんななか妻は高齢出産だったので40万円かかると聞いて。当時僕は36歳だったんですが、世の中って35歳を超えるとバイトも見つからないんですよ。それを知らなかったので、もう芸人を廃業しようとも思いました。でも、芸人を辞めた友人のつてで、なんとかゴミ清掃業界に入れてもらえることになりました。

――奥様からも感謝されたんじゃないですか? 芸人を続けながらゴミ清掃でも働く矜持に。

【滝沢秀一】あまり感謝されているという体感はないですね。反対もされなかったですし。まあ、お金持ってくりゃ何でもいい、みたいな感じなんでしょうかね(笑)。

――ちなみに、収入はどう変化しましたか?

【滝沢秀一】10年前、お笑いだけで食っていたときは月70万円くらいいただいていたんですが、番組が終わるとどんどん下がっていくんですよ。8年前、ちょうど妻が妊娠した頃が最底辺。ゴミ清掃では月20万円ほどもらえます。僕も、最初は芸人で一発当てようとしていたんですが、次第に「お金があればお笑いが続けられる」って、手段と目的が逆転して嫌になってきて。ゴミ清掃を始めて2~3年は、本当にきつかった。テレビを観ても、下の世代がどんどん出てくるし、「俺、もう必要ねえだろう」と。そのあたりから、ゴミ清掃を本気でやろうかと思い始めました。いつかバラエティのワンコーナーで、「ゴミを早く回収できます」と一芸で出られたらいいな、ぐらいは考えてましたけど。

――なんでも芸に生かせますからね。

【滝沢秀一】そうそう。「ゴミあるある」をSNSで載せ続けた結果、こうして取材を受けたりできるようになった経緯もありますし。

■あてにならない芸能の仕事、こだわりを捨て「芸人かどうかは周りの人が決めてくれれば」

――2019年に「本業はゴミ清掃員で芸人は副業」と語っていましたが、今も同じ気持ち?

【滝沢秀一】ニュアンス的にはそうですね。あてにならないですから、芸能の仕事は(笑)。それより、ゴミ清掃員という仕事があることで、一番心が安定するんです。

――安定ですか?「俺は本来、芸人なんだ!」といった悔しさのようなものは?

【滝沢秀一】まったくないんです。売れないのにずっと「俺は芸人だ!」と言い続けるのは、個人的にはすごく恥ずかしいことだと思うんです。芸人かどうかは周りの人が決めてくれればいいですし(笑)、芸人さんが集まって楽しいことをやっているなら、僕らも混ぜてほしいくらいの気持ちでやっています。なので自分が昔、この番組に出ていたとかこだわりがなくて。先日、自分が出ていた番組などのDVD、全部捨ててしまいました(笑)。

――奥様もそんな滝沢さんを理解されているのかもしれませんね。ちなみに、結婚記念日がユニークだとか。

【滝沢秀一】籍を入れる日を相談したところ、妻が「ゴミゼロの日」(毎年5月30日)でいいんじゃないかと。本っ当に偶然なんですが、今の何かを暗示してますよ(笑)。そんな、今の妻じゃなければ、僕たちは離婚することもあり得たかもしれません。というか、どこかおかしくないと、芸人と結婚しようなんて思わないのかもしれない(笑)。妻は僕の書く「ゴミあるある」を漫画でわかりやすく描いてくれていて、とても感謝しています。

――そんな滝沢さんの著書『かごめかごめ』の文庫版が発売されました。

【滝沢秀一】ゴミ回収をしていて、怖いなと思ったのが『かごめかごめ』を書いたきっかけです。女性の方でも、名前や住所が書かれた請求書をそのまま捨てる方がいて、「これをストーカーが拾ったらどうなるんだ」と。ゴミって怖い、この発想から物語がスタートしました。文庫版では大幅に手を入れて、やや大衆文学に寄せたものになっています。

――文学部ご出身とのことで、影響を受けた作家はいますか?

【滝沢秀一】僕が影響を受けた作家は、まずエドガー・アラン・ポー。国内では、村上龍さんや中上健次さんが好きです。中上健次さんの作品にある独特なテンポ感は、この本の文章にも影響が出ているんじゃないですかね。ここには、僕自身の若い頃、芸人時代、ゴミ清掃の経験のすべてが詰まっています。特に最後の一文は自分でもゾッとするような仕上がりになったので、ぜひ読んでいただきたいですね。

――今後も小説を書き続けますか?

【滝沢秀一】はい。今年も文學界の新人賞で最終選考に残ったんですよ。惜しかった(笑)。相方の西堀は俳優のお仕事もやらせてもらっているので、俳優とゴミ作家の「マシンガンズ」ってのも面白いかなと(笑)。

――最後に、ゴミについてどのように考えていますか。

【滝沢秀一】ゴミを見ていると、ゴミが語りかけてくるんです。そこから、「どうしてみんな、こんなにゴミになるほど無駄な物を買うんだろう」と考えるようになってくる。ゴミというのは、「これはゴミだ」と人間が決めた瞬間にゴミになる。キレイ、汚いの問題じゃない。つまり、人の“心”がゴミを生み出しているんです。そう考えると、「僕たち人間自体がゴミなんじゃないか」というところまで思考がたどり着くんですね。

――なるほど。

【滝沢秀一】あと、人間と言えば、何か1つ特技を見つけることは大事だと思いました。何でもいいんですけど、実は絵が描けたり英語ができたり、何か1つできることがあれば、誰か拾ってくれる(笑)。たとえ捨てられても、“リサイクル”可能だと僕は思っています。

――リサイクルされたら、どう復帰すればよいですかね。

【滝沢秀一】それはもう、ニヤニヤして(笑)。ダチョウ倶楽部の肥後さんに言われたんですが、「何かやろうとしてダメだったら、ニヤニヤしながら元の位置に戻ってこい」と。それができるのが芸人だぞ、と言われました。プライドがあると、つい意固地になってしまいがちじゃないですか。それをニヤニヤでごまかせるたくましさ…。ゴミであるかもしれない人間にとって、そういった“ニヤニヤ力”は生きていく上で大切なんじゃないか。そんなことを、ゴミに関わりながら、僕は思ったりしています。

(文:衣輪晋一)