日本刀を作る職人である刀鍛冶の父親と一緒に、日本刀に関しての勉強やアニメに出てくる刀の分析などを行っているYouTubeチャンネル『一刀両断TV』が人気を集めている。特に、『鬼滅の刃」に登場する刀・日輪刀を詳しく分析したり、実際に作成したりする動画が人気で、なかには200万回を超える再生回数を記録しているものもある。なぜこのような配信をしようと思ったのか、投稿主である息子・HoyKey(ホイキー)さんと父・刀鍛冶さんに話を聞いた。

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■『鬼滅の刃』を観て「作者やアニメーターの方々は刀についてかなり勉強したのでは?」

――『鬼滅の刃』日輪刀を実際に作ってみる動画や分析動画などが反響を呼んでいますが、そのことについてはどのように感じていますか?

【父・刀鍛冶さん】日本中の老若男女がこれほど注目してくれるとは思いませんでした。視聴回数を見て驚いていますし、たくさんのコメントもいただき、有難いの一言です。

【息子・HoyKeyさん】父の仕事や知識に、大変多くの方が興味を持ってくれて嬉しく思っています。それと同時に、動画に対しての責任も強く感じています。

――嬉しかったコメントや印象的なコメントなどがあれば教えてください。

【刀鍛冶さん】「日本刀に興味を持ちました」「刀鍛冶になりたいです」「刀鍛冶の父をもって幸せですね」「動画を見てほっこりした」とか「話に涙した」など、胸が熱くなるようなコメントが嬉しいです。

【HoyKeyさん】「もっとこうした方が見やすくなる!」や「ここがダメ!」というコメントが来たときは、編集の参考にさせてもらっています。企画に関しても、「こういうものが見たい!」など多くのコメントをいただいていて有難く思っています。最も多いコメントは、やはり「刀鍛冶を継いでほしい」ですかね。

――日輪刀の分析動画は刀鍛冶ならではの視点が大変興味深いのですが、『鬼滅の刃』をご覧になった感想を教えてください。

【刀鍛冶さん】久しぶりに映画館でアニメを観て、絵の綺麗さや音響の迫力に圧倒されました。鬼滅の刃という作品に色々な方が魅了されるのも納得です。ただやっぱり私は刀に目が行ってしまいます。

――そんな人気アニメに登場する日本刀を分析する企画の面白さを、刀鍛冶としてどのように感じていますか?

【刀鍛冶さん】アニメの刀を分析するのは難しいですが、作者の方やアニメーターの方々は刀についてかなり勉強したのではないかと感じます。勝手に分析をして私の見解を述べていますが、実際のところはどうなのかと毎回気になっています。

■「刀鍛冶としての父の存在を形として残したい」 YouTubeにかける息子の思い

――そもそもHoyKeyさんはお父様の仕事を発信しようと思ったのには、どういったきっかけがあったのですか?

【HoyKeyさん】HoyKeyとしてYouTubeを2年ほど続けてきて、自分なりに楽しむことができたので投稿をやめるつもりでいました。最後に僕がYouTubeをやっていたということと、父が刀鍛冶として存在した証を形として残したいと思い、投稿を始めました。

――YouTube出演や日輪刀作りの提案をした際、お父様はどのような反応でしたか?

【HoyKeyさん】小さな頃から僕が好きなことをするのには賛成してくれた父なので、提案したときは前向きに「やってみようか!」と言ってくれました。

――息子さんが刀鍛冶の仕事をYouTubeやSNSで発信していきたいと思っていることについて、刀鍛冶としてどのように感じていますか?

【刀鍛冶さん】作刀の工程を記録として残し、1人でも多くの人に観てもらえたら…。また、刀鍛冶の存在を少しでもアピールできればと思い快諾しました。

――そんな思いで始めた息子さんと一緒に動画投稿をしてみていかがですか?

【刀鍛冶さん】撮影しながらの作刀は、不慣れなので最初はとても邪魔だと感じていましたが、回を重ねる毎に少しずつ慣れてきました。視聴者の方々の心温まるコメントも励みになり、作刀意欲を駆り立てられますね。

■動画に出てくる刀は「身近に感じてほしくて、ヒョイと出てくる感じで登場させている」

――動画には初めて見る人にもわかりやすい工夫を感じますが、撮影や編集でこだわっていることはありますか?

【HoyKeyさん】分析動画は情報量が多いので、画角を動かさず視聴者様の目が疲れないようにしています。撮影はいつも通りの刀鍛冶がいる我が家の日常を楽しんでもらえるように、打合せなしで撮影しています。動画はテンポよく、見ている人聞いている人が飽きないようにと考えながら編集しています。

――動画の中では本物の日本刀も多数登場しています。すごくサラッと登場していますが、貴重なものもあるのではないでしょうか?

【刀鍛冶さん】日本刀は決して怖いものではなく、扱いを間違えなければ美しく素晴らしいものです。博物館でガラス越しでしか見ることができない日本刀を身近に感じてもらえたらと思い、ヒョイと出てくる感じで刀を登場させています。紹介した刀で貴重なものは、備前長船盛光<末備前(室町時代)、現在の岡山県で制作。動画『【刀鍛冶】え?銃刀法違反?』内で紹介>や井上真改<慶長(安土桃山~江戸時代)、現在の大阪府で制作。動画『#7【鬼滅の刃】結局だれの日輪刀をつくるの?』内で銘を紹介>です。

――動画を配信したことで若い世代が多くの関心を寄せていますが、実感している現代の刀鍛冶の世間のイメージはどういったものですか?

【刀鍛冶さん】堅物な職人のイメージ。今でも日本刀を造っている人がいるのかと思われるくらい稀少な職種ですね。

【HoyKeyさん】最も刀が身近にあるはずの自分が、今まで刀剣の魅力を感じていなかったので、刀の存在が遠い人も興味を持ってくれていて嬉しく感じています。刀鍛冶や職人さんのイメージというと寡黙で気難しいイメージを持つと思いますが、私の場合、父も祖父も寛容で気さくな人なので、「こんな職人もいる」ということを伝えたかったです。刀剣業界にはすごい技術を持った職人さん(刀に携わるすべて)がまだまだいるので、それが伝わるように盛り上がりを見せてほしいと思います。

■世界に誇れる日本刀、日本の若い人たちに少しでも興味を持ってもらいたい

――家族の交流なども含め、お父様と一緒にYouTubeで活動してみた率直な感想を教えてください。

【HoyKeyさん】家族で話すことは我が家にとって当たり前のことですので、YouTubeがあるからといって変わった点はありません。ただ、父が「こんなコメントがあった」などとYouTubeについて話をするようになったことで、今まで以上に踏み込んだ会話ができているので、楽しい活動になっているなと感じています。

――コメントにもあるように、一般的な職人のイメージとは異なるようなお父様の親しみやすさも『一刀両断TV』の魅力かと思います。父であり職人でもあるお父様は、普段はどのような人ですか?

【HoyKeyさん】何をしているときも楽しみ方を考えている少年のような人です(笑)。小さな頃から何をやっても父にはかないませんでしたが、大人になった今でもそれは変わりません。ただ…鋼鎧塚さん(『鬼滅の刃』に登場する刀鍛冶)に匹敵するほど、世界で一番怒ると怖い男です。

――お父様から見てHoyKeyさんはどのような息子さんですか?

【刀鍛冶さん】子どもの頃は体も小さく大人しい子でしたが、今は体も大きくなり活発で何事にもチャレンジしていく好感の持てる男になりました。普段は仕事熱心で、時間の許す限りYouTube編集に明け暮れています。

――息子さんに跡を継いでもらいたい気持ちは?

【刀鍛冶さん】自身は10歳から父の向鎚を手伝い、自ずと刀鍛冶になるよう育てられました。なので高校卒業後、何の迷いもなくこの世界に入りましたが、息子には継がせる気持ちはありません。ですが、日本刀の扱いや刀の知識、手入れ方法などは覚えてほしいと思います。

――ではHoyKeyさんは、跡を継ぎたい気持ちはありますか?

【HoyKeyさん】刀鍛冶の仕事は体力的(熱さ、重さ、重労働)にきつく、繊細さ(土どり、鑢目、銘切)や、職人として必要なスキルも多いですし、稼業としても安定していないため、身近で母が苦労してきたのも見てきました。その為、現在継ごうとは考えていませんが、自分の中で憧れやロマンを感じているのは事実なので、HoyKey自身の心境がどのように変化していくかを、今後の『一刀両断TV』で確認していただけると幸いです。

――今後は『一刀両断TV』をどのようにしていきたいですか?

【HoyKeyさん】日本の方の一人でも多くに、日本刀の魅力を伝えていきたいです。また、YouTubeは世界中に繋がっているので、最終的には世界中の人に向けて、日本、日本刀、伝統などの魅力を発信していけるようなチャンネルにしていきたいです。

【刀鍛冶さん】日本刀については、今以上に細かい紹介をして頂きたいと思います。世界に誇れる日本刀ですので、日本の若い人たちに少しでも興味を持ってもらいたいと思います。

――最後に、改めてお互いの話を聞いてみていかがでしたか?

【HoyKeyさん】日本刀の事を“世界に誇れる”と堂々と言えることが刀鍛冶としての自信、他の刀鍛冶さんに対するリスペクトを感じ「かっこいいな」と思いました。また、父はこの取材のアンケートに手書きで下書きをしていたのですが、たくさん書き直してあるのを見て自分の言葉に責任を持つという意味も考えさせられました。こんなに一生懸命で刀鍛冶の仕事に精力的な父の一番のファンとして、そして息子として今後も発信していきたいです。

【刀鍛冶さん】自分の考えていることと息子の考えていることが同じ方向を向いていることに気付かされ驚きました。私は刀を作ることや刀の知識などは持っていますが、それを発信することは出来ません。逆に息子は刀のことについては詳しくありませんが発信する力があり、まさに親子二人三脚で歩んでいるなと嬉しくなりました。