加藤シゲアキ(33)は人気グループ・NEWSのメンバーにして、8年前からは“小説家”としての才能も発揮しているが、これまでに発表した小説のテーマは“芸能界”“SF”“ホスト”など、多岐にわたる。そんな加藤が、新作の長編小説『オルタネート』(新潮社 19日発売)で「高校生の恋愛」と「マッチングアプリ」のかけ合わせに意欲的に挑戦した。「創作なのに、これは間違いなく僕の物語です」と今作について語る加藤に、作品の中に秘められた思い、コロナ禍での創作活動、新たな一歩を踏み出したNEWS、小説家としての覚悟に迫った。

【書影】加藤シゲアキの長編小説『オルタネート』

■今だからこそ書けた高校生がテーマの小説 何者なのかを自問自答し続けた高校時代

 今作は、加藤が初めて小説誌に連載した長編小説だが、第1回が掲載された『小説新潮』2020年1月号には発売前から予約が殺到。ネット書店を中心に売切れ店が続出し、発売4日目となる1月24日には、同誌の記録が残るなかで初の重版が決定し、大きな反響を呼んだ。このタイミングで“高校生”をテーマにした理由について、自身の年齢を引き合いに言葉を紡いだ。

 「もっと若い時期に書いてもよかったのかもしれないのですが、近すぎて冷静に見られなかったかもしれないなという気もしています。青春小説というと、すごく軽やかなライトなものを想像されてしまうので、作家としてのある程度の信頼を得てからではないと、しっくりこないんじゃないかなという思いもあって。だからといって、今の自分がそうなったというわけではないのですが、6冊目というタイミング、30代という年齢から考えて今かなという感じがしたので、チャレンジしてみました」

 高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」が必須のウェブサービスとなった時代を舞台に、調理部部長で品行方正、しかし、あるトラウマから人付き合いにコンプレックスを抱える蓉(いるる)。母との軋轢(あつれき)を機に、絶対真実の愛を求め続けるオルタネート信奉者の凪津(なづ)。高校を中退し、かつてのバンド仲間の存在を求めて大阪から単身上京した尚志(なおし)の3人の若者の運命が交錯していく。「創作なのに、これは間違いなく僕の物語です」とのコメントを残していた加藤だが、キャラクターに自身と重なる部分もあると明かす。

 「自分が好きなものじゃないと書けないと思ったので、調理部にしたり、音楽が好きなキャラクターになっています。メインの3人は対照的ですが、全部自分の中にあるキャラクターだなと思います。各パートで、それぞれのキャラクターに感情移入しながら書いていたのは、自分でも面白い経験でした。その反面、のめり込みすぎずに客観的な視点も保てているのは、30代という年齢が効いてきたのかなとも感じていて。キャラクターへの没入と客観という2つの視点があって、そのどちらも自分であるというのが、表現において大事だなと感じました」

 心が揺れる日々を過ごす高校生と、機械によって相性を選ぶマッチングアプリという対照的な組み合わせが、物語に幅を持たせている。「高校って、本当はすごく狭い世界のはずなのですが、当事者からすれば、そこがすべてになってしまって、その中に同調圧力みたいなものもある一方で『人とは違う自分でいたい』『自分ってなんだろう』という、揺れ動く心模様みたいなものもある時期だと思っていて。もし、高校生限定のマッチングアプリというものがあれば、高校とは別の世界が開けるのですが、果たしてそれで高校生たちは幸せなのか、どうやって生きていくのかということが、今回の作品で描けた気がしています」。

 加藤自身の高校時代も、自分が“何者”なのかという自問自答を繰り返す日々だった。「高校1年の時にデビューしたので、授業には出られていましたが、終わってすぐに仕事というスケジュールで、慌ただしい時間だったんです。グループの方も、デビューすれば未来が約束されるということではなく、自分で自分の立場を作っていかないといけなくて、大きく目立つことの大変さを知る日々でした。注目を浴びるということは、さらされるということでもありますし、自分に足りないものも直視することにもなるので、そういう中で『オレってなんだろうな』と考えることも多くて、高校生の多感な時期の苦しさみたいなものは、今でも覚えています」。

■“書くこと”で見つけた自分の居場所「今の僕たらしめるものになっている」

 そんな高校時代に、光を照らしてくれたのが“書くこと”だった。「大学で論文をかけるように、国語力をつけようと思って『国語表現』という授業を受講したのですが、創造性を重視する授業で、卒業制作で4ページを使って何でもいいから書いてみてくださいというお題だったんです。僕自身は、国語が苦手だなと思っていたのですが、僕の書いた文章を『面白い』って言ってもらえて…。まさか褒められるとは思っていなかったので、そこから書くことが好きなのかなという気持ちが芽生えて、ブログをやったり、エッセイをやらせていただいたり、書く仕事が増えてきたのが、今の仕事につながるはじまりでした」。ふとしたきっかけが、加藤の新たな魅力を引き出した。

 「意図した出会いではありませんでしたが、それが今の僕たらしめるものになっているので、ランダムな出会い、ハプニングみたいなものが結果として大きな影響を与えることが多いなと思いますね。今回の作品も予想していなかったことが、その瞬間はすごく傷つくかもしれないけれど、結果的には自分を育てていくのだという物語になっていますが、まさにそれは僕自身がいつも考えていることでもあります」

 「予期しない出来事を前に、傷つきながらも進んでいく」。まさに、今のコロナ禍にも通じるテーマにも思える。「新型コロナウイルスの影響で自粛になったはじめの頃は、この状況で何ができるんだろうかと考えていましたが、終盤くらいになると、ここでジタバタしても仕方ないかなと。この記憶や感覚だけはしっかり頭に残しておいて、あとは流れに身を任せようという気持ちになりました。自分にとって必要なものと不要なものの位置づけ、自分と向き合うきっかけになったし、いろんなものが淘汰されて、残った感覚みたいなものが、自分の本質なんだという発見もありました」。その上で、気づいたことがある。

 「次は何を書こうかなと考えながら、本をたくさん読んで、映画も見て、それを経て、何かを作りたい自分がいたので、やっぱり自分はとことん表現することやものを作ることが好きなんだなというのが見えて、自分にとって一番大事なものに気づく時間になりました」

 自分自身のみならず、今回の作品にもとことん向き合った。「連載から書籍になるまで、合計で20回くらい直しましたね。僕は『これでもいいかな』と思っていても、編集の方から修正の提案があって、たけのこで例えると『どこまで食べられるんだっけ?』というくらい、食べられそうなところもめくっていって、最後の方には『もう、なくなっちゃうよ…』みたいな気持ちになりました(笑)。ただ、やっぱり、やればやるほど洗練されていくのは間違いなく、話の核は変わってないんですけど、推敲を重ねる度にすごくシャープな物語になっていきました。校了したら、普通は無敵の時間なんですけど、今回は実物が届くまでまだ気持ちが落ち着かなくて、今も印刷所から戻ってくる夢を見ます(笑)」。

■グループとして踏み出した新たな一歩「ジタバタしても変わらない」 小説で見せる“シゲシゲしさ”

 2020年は、NEWSとしても新たな一歩を踏み出す1年となった。「2020年の加藤シゲアキを小説にするとしたら、どんな内容になりますか?」と向けると、天を仰ぎながら思いを言葉にしていった。「どうですかね…。NEWSも新しい形になったので。でも、やっぱりそれもしょうがないというか、受けて入れていくしかないことですよね。いろんな運命とか。ジタバタしても変わらないことってあるんですよね。でも、ジタバタしなきゃいけない時もあって。そういったことを改めて思い知らされた1年だったし、そうなった時に一番大事なのは、自分が自分でいることだなと思うんですよね。自分にウソをつかずにいることの難しさというか、そういうのも改めて実感した1年だったなと思います」。

 3人での新たな出発で、一人ひとりに求められることも大きくなるが、加藤はブレずに前を向いている。「プレッシャーはありますが、やるしかないじゃないですか。ジタバタして、ムダなエネルギーを使うのではなくて、自分をしっかり磨いていくことに時間を費やすことがすごく難しいけど大事なことだなと。今作の作品に出てくる蓉(いるる)のように、いろんなことがあっても、とにかく(料理大会の)優勝を目指してやっていく。結果はどうあれ、後悔しないように全力をつくすことは、実はとても難しいし、その大事さが僕自身も身につまされる1年だったなと思います」。

 「小説の感想をメンバーから伝えられることは?」との質問には「最近は、みんな『加藤やっているなー』という感じだと思います(笑)。裏を返せば、小説を書くことが当たり前になっているということなので、それがさみしいとは思わないです」ときっぱり。小説家デビューから8年が経過したが、着実に歩みを進めている。「こう言うと生意気に聞こえるかもしれませんが、もっと長い間やっていた印象です。小説を書くって、本当にずっと考えていて、発表されるタイミングはありますけど、筆を置く期間が一度もなく8年間やってきました。自分で文章がうまくなったかどうかはわかりませんが、時間をかけて学んだことはあったなと思いますし、これからもやっていく仕事なんだなという気持ちです」。

 その覚悟は最初からあったものではない。「8年前は、作家でいることが当たり前になるとは思ってなかったですね。1冊目の時は、これで最後のつもりで書いていましたが、気がついたら、今では一列の本棚の半分くらいが自分の作品で埋まるくらいになってきたので、本当にありがたいですね」。小説家・加藤シゲアキは、これからももがきながら読者をハッとさせる作品を届けていく。「みなさんに『加藤、こう来たか』と思っていただけるとうれしいですね。いろんなジャンルに挑戦しているんですが、書いてみると『加藤シゲアキだな』と思いますね(笑)。『シゲシゲしいな』って(笑)。これからも何やっても自分らしくなっちゃうと思うんですけど、新しいものを書いていきたいです」。

【加藤シゲアキ】1987年生まれ、大阪府出身。青山学院大学法学部卒。NEWSのメンバーとして活動しながら、2012年1月に『ピンクとグレー』で作家デビュー。以降『閃光スクランブル』、『Burn.-バーン-』、『傘をもたない蟻たちは』『チュベローズで待ってる(AGE22・AGE32)』とヒット作を生み出し続け、今年3月には初のエッセイ集『出来ることならスティードで』を刊行。アイドルと作家の両立が話題を呼んでいる。