来年デビュー40周年を迎えるギタリストの布袋寅泰。第一線で活躍し続け、映画『キル・ビル』のメインテーマで海外でも知られるようになった彼が、世界7ヵ国のアーティストを迎えたコラボレーションアルバム『Soul to Soul』を発売。コロナ禍でアーティストにできることやロックへのポジティブな思いを始め、昨今問われるSNSの誹謗中傷問題など、真摯な想いを語った。

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◆40年経ってもギターは上手くなってないが、自分のスタイルを築いたことが自信に

──本アルバムは主にリモートで制作されたそうですね。

【布袋寅泰】 この状況では仕方がないですよね。本当は僕も各国を旅したり、逆にロンドンに来てもらったりしたかったけれど。ただその分、各音源をじっくりとアップデートできたのはよかった。吉井(和哉)くんも1曲のために5篇くらい歌詞を書いてくれたり。ギタリストとボーカリストというのは恋人同士のようなところがあるのですが、遠距離ではあっても恋は実るんだと、そんな新鮮な感覚を味わったレコーディングでしたね。

──恋人=コラボ相手はどのような観点でチョイスされたのでしょうか?

【布袋寅泰】 やっぱりその人の声と存在に惚れてナンボですよね。この声に自分のギターを重ねてみたい。この人の隣でギターを弾いてみたい。その思いをラブレターに綴って、1人ひとりのアーティストに送りました。長年やっていると周りがお膳立てしてくれることも増えてくるけれど、待っているだけじゃ開かない扉もありますからね。

──40年のキャリアをお持ちの布袋さんでも?

【布袋寅泰】 僕もロンドンに移住して8年になりますが、海外の方にとっては「布袋って誰だ?」ですから。それでも(映画『キル・ビル』のメインテーマに起用された)「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」は皆さん知っていてくれて、あのギターを弾いてるヤツか、だったら面白そうだと。40年やってきて残念ながらギターはたいして上手くもなっていないけど(笑)、変わらずにやってきたことが自分のスタイルになっていて、それに世界各国のミュージシャンたちが共鳴してくれたことは自信にもなりましたね。

──この状況だけにもっとシリアスなアルバムになるかと思いきや、華やかでセクシーでロックの夢に満ちている1枚です。

【布袋寅泰】 だって布袋が元気ないってうつむいてたら、ファンの皆さんが困るじゃないですか。やっぱりロックは晴れやかで、聴く人にエネルギーを与えるものじゃないといけない。(新型コロナウィルスの感染拡大の)こんな世の中でも、幸い僕にはギターというものがある。それを自分だけのものとしないで、明日も頑張ろうという気持ちを誰かに届けること。それが僕らミュージシャンの仕事だと思うんですよね。

◆若い世代はSNSとドライな付き合い方が上手、大人の方が変な縛られ方をしている

──ロンドンは日本以上にコロナ禍が深刻な状況ですね。

【布袋寅泰】 半年以上、ほぼ外に出ることがなかったです。今回、帰国してからは2週間の自主隔離をして(取材時点の)今日で3日目。こうやって人と相対して話すのも本当に久しぶりなんで、ちゃんとヒゲを剃ってきました(笑)。

──外出自粛の日々をたびたびInstagramで伝えられていました。布袋さんはかなり初期からSNSを活用されていますが。

【布袋寅泰】 もともと僕はイギリスの音楽に影響を受けてバンドを始めたんですが、そのうち自分も世界を旅するようになって、そこで得た情報や味わった感覚を皆とシェアするために音楽に反映してきました。そういう意味ではSNSも同じで、目の前にある美しいものやワクワクした出来事を分かち合うところから始まったツールだと思います。

──とは言え、近年はSNSの負の側面が世界中で社会問題になっています。

【布袋寅泰】 難しいですよね。ユーモアは大事だし、だけど相手が笑えなかったら毒になってしまう。それがまた炎上すると、本来伝えたかったことがどんどん歪められていく。娘とよくそういう話をしますが、自分たちの時代のツールだけに若い世代はわりとその辺にドライというか、フェイクなものを見抜いたり、負のエネルギーから距離を置いたりと、SNSとの付き合い方が上手なんじゃないかなと思う時があります。逆に大人の方が変な縛られ方をしているんじゃないですかね。

──ご自身でもそれを感じることは?

【布袋寅泰】 ないとも言えないです。それでも面白いからやっているんですけどね。日本に戻り、自主隔離が終わって体がなまっていたので2時間くらい散歩した時、スマホを置いて家を出てしまったんですよ。そうしたらなんと自由なことか。ポケットも軽いしね、つい走り出したくなっちゃって。スマホとかSNSとの付き合い方って、そのくらいの距離感がちょうどいいんだと思いましたね。

◆定年や引退がない職業、この先もっと最高の自分がいると妄想しながら走り続けたい

──布袋さんがバンドを始められた頃は、「ロック=若者の音楽」だったと思います。40周年を前にどんな思いがありますか?

【布袋寅泰】 そもそもロンドンに暮らしていると年を重ねることにすごくポジティブな気持ちになれます。何しろ街ですれ違う若者よりも70代、80代の方がおしゃれでカッコいい。僕なんてまだまだ若造っていうかね。早くあの域に達したいなと思うことがよくあります。

──ロックミュージシャンとして年を重ねることについてはいかがですか?

【布袋寅泰】 たしかにかつては50代、60代のロックミュージシャンなんていなかった。でも僕のアイドルであるデヴィッド・ボウイは亡くなってしまったけれど、ブライアン・フェリーやローリング・ストーンズといった憧れのロックスターたちが白髪になってあの頃のまま輝いているしね。やっぱりロックは最高のアンチエイジングなんですよ。

──年齢を重ねてこそ、表現できるロックも?

【布袋寅泰】 もちろん、ロックというのはヤンチャさやギラギラ感、毒っ気といった若さ特有の要素がたくさん含まれている。それに加えて、若い頃にはなかったダンディズムや色気を、絞り出さずとも漂わせることができるのがこの年齢であって。よく欧米には大人のロックがあるというけれど、だったら日本でも大人のロックを作っていこうよと、それが僕ら世代のミュージシャンの役割なのかなと思いますね。40年で身につけたものを堂々とパフォーマンスする時が来たなと。

──来年1月の日本武道館と配信ライブでは、布袋さんを40年間追い続けてきた人も多く集結するはずです。

【布袋寅泰】 なかには昔の布袋は良かったと言う人もいるかもしれません。それはしょうがない、その人の青春だもの。だけど僕は常に、「最新の布袋が最高の布袋」と言い続けています。それは誰に押し付けるわけでもなく、自信を持ってステージに立つために自分に課したハードルであり、自分を突き動かすモチベーションにもなっている。定年や引退がある職業でもない。この気持ちと体がある限り、この先にもっと最高の自分がいると妄想しながら走り続けていきたいと思っています。

(文/児玉澄子)