1999年より4年間放送されたTVアニメ「おジャ魔女どれみ」。世代別では女児の9割が視聴していたといわれるほど圧倒的な人気を誇っており、最高視聴率は13.9%(『も~っと!おジャ魔女どれみ』)。そんな同作が今年新作映画として帰ってくることが発表されると、関連ワードが続々とTwitterトレンド入りするなど、アニメ放送開始から20年という時を経た今も注目度の高さを伺わせた。同作をはじめ、『デジモン』『プリキュア』などを手掛けた関弘美プロデューサーと、『美少女戦士セーラームーン』『ケロロ軍曹』などを生み出した佐藤順一監督に、ヒットの法則を聞いた。

【画像】“どれみ”は出てくる?最新映画『魔女見習いをさがして』場面カット集

■当時アニメでは珍しかった不登校や親の離婚・再婚もトピックに「共感を呼ぶ“リアル”を突き詰めた」

 自信をなくして進路に戸惑う大学生・長瀬ソラ(声/森川葵)、望んだ仕事についたものの葛藤する帰国子女・吉月ミレ(声/松井玲奈)、ダメ彼氏に振り回されるフリーター・川谷レイカ(声/百田夏菜子)。13日に公開された「おジャ魔女どれみ」20周年記念作品の映画『魔女見習いをさがして』は、この3人が「おジャ魔女」ゆかりの地をめぐる旅に出るアニメ映画だ。

「開始から20年。節目であることに意味を感じましたし、その当時から子どもたちに夢や魔法を届けてきたので、20年経って大人になったその子たちにちゃんと“落とし前”をつけませんか。という感じで、オリジナルスタッフの佐藤順一監督にお声がけをして始まった映画です」(関プロデューサー)

 「おジャ魔女」の世界には、正義のヒロインや戦闘シーンが出てこない。これまでの魔法少女シリーズとは異なるストーリー構成に、アニメの企画段階から「戦わないんだ!」とスタッフにも驚かれたという。悪者がいなくても、戦わずとも、等身大の子どもたちが学校や家庭での悩みを抱え、もがき、乗り越えていく姿が共感を呼んでいた。その“共感”には徹底的なリサーチが根本にある。

 「20年前はインターネットで調べてパッと出てくる時代ではなかったので、国会図書館で調査をしていました。不登校になった同級生について取り上げた回がありましたが、当時まだアニメでは珍しいトピックでした。でも、現実社会では重要な問題として確実に存在していたトピックです。だから、1話30分で解決、という制作都合は捨て、しっかり3話かけました。また、当時は1クラスにつき5人程度が片親というデータがあり、物語に盛り込んでいます。魔女見習いの妹尾あいこも両親が離婚していましたが、再婚するまで4年をかけて描いています。“そんな馬鹿な”ではなく、“そこまでやるか!”、“あーいるいる”と思われるところまでリアルを突き詰めるのがおジャ魔女。それは今回の映画でも意識し、反映されています」(関プロデューサー)

 「おジャ魔女どれみ」では、クラスメイト全員に名前が付けられている。生徒一人ひとりの性格まで考えることから、おジャ魔女ワールドは作られているのだ。

■「子どもが親より優位に立てる」15年経っても忘れられない“ピーリカピリララ”の妙

 映画公開を受け、SNS上で『おジャ魔女どれみ』『魔女見習い』というワードがトレンド入りしたほか、『ピーリカピリララポポリナペペルト』も横に並んだ。どれみが劇中に使っていた魔法の呪文だ。アニメ終了から15年経った今も、この不思議なカタカナの羅列とリズムが多くの人の耳に残っているのだ。そこに隠された“魔法”は何だったのか。

 「“ピーリカピリララ”をはじめ、魔女見習いたちの魔法の呪文は、言葉を覚えたての幼い子どもが言いやすいパ行、マ行をベースに着想しました。実は“アンパンマン”も同じ原理で子どもが言いやすい言葉なんですよ。さらに、どれみの声を演じた千葉千恵巳さんには、アドリブで癖をつけた発音と独特のリズムにしてもらいました。これは意味不明な文字列をお母さんやお父さんがただ文字をなぞった時に、「違うよ、“ピーリカピリララ”だよ」と子どもが親より優位に立つことが出来るからです。そんな親子のコミュニケーションも考えながら作ったTVシリーズでした」(佐藤順一監督)

 さらに『プリキュア』などと違う点がある。他アニメでは、ヒロイン等が魔法の言葉や呪文を発する際は基本的に張り上げた声でその言葉を放つ。だが、どれみは気の抜けたような言い方。これも、どれみが“普通の子”であることで“共感”を生んだのだろう。

 「『セーラームーン』や『プリキュア』などは子どもにとって“憧れ”なんです。それとは違う“共感”を同作では大切にしたため、おジャ魔女たちは悪と戦う設定ではないとも言えます」(関プロデューサー)

■“子どもを侮らない”作品づくりが生んだ日本の誇るべき文化「アニメこそ緻密なマーケティングが必要」

 『おジャ魔女』には“おジャ魔女フォーマット”というものも存在する。まずギャグパートで子どもたちを引きつける。そして、そのギャグパートに忍び込ませておいた人間ドラマを後半でシビアに描き、“泣き”を作る。「ギャグパートがあったことで、子どもが飽きることなく観られ、女児だけでなく男児にも楽しんでいただけたのかもしれませんね」と関さん。

 それから20年。時代とともにアニメ視聴者の見方の変化を強く感じるという。「昔は『絵がきれいだったね』は褒めるところがない時にいう言葉でしたが、今は誉め言葉になっていますよね。今の視聴者はSNSで常に情報交換し、制作の裏側についても知識が豊富です。目が肥えていますし、声優のみならず、誰が監督で誰がキャラクターデザインで、などと本当に細かいところまで見ていただいていることを感じます。『この作画のここが神』などというコメントもよく見ますが、自分が見る側だった時は持っていない視点で、毎回驚かされます」(佐藤監督)

 『美少女戦士セーラームーン』『ケロロ軍曹』『ひみつのアッコちゃん』『おジャ魔女どれみ』『デジモンアドベンチャー』『プリキュア』と、佐藤監督・関プロデューサーそれぞれが関わった名作の数は枚挙に暇がない。この20年で日本のアニメは世界的コンテンツへと大きく成長したが、2人の存在と技量が大きく貢献していることは間違いないだろう。

 『プリキュア』でいえば、芸人のFUJIWARA・原西も大ファンを公言しているが、子どもたちのみならず、親世代にも広く愛された作品だ。ここでも母親世代の趣味嗜好まで調べ、その時代のウエディングドレスの流行をキャッチ。変身後のユニフォームにそのデザインを活かすことで、母親が見ても「かわいい」と思えるものにしたのだという。

 「子どもって嘘っぽい話にはすぐ気づいてそっぽを向いてしまうから、アニメ番組こそ緻密なマーケティングが必要なんです」と関さんは語る。“子どもだから”と侮ることなく、誠実に向き合ってきたその姿勢が、“子ども向け”だった日本のアニメを、世代・性別・国籍問わず愛される誇るべき文化にまで押し上げた。その遺伝子がしっかりと受け継がれた今作『魔女見習いをさがして』。大人になった『おジャ魔女』ファンたちが、あの頃と同じ興奮と感動を再び取り戻せるのか、注目したい。


(取材・文=衣輪晋一)