新型コロナによるリモートワークや外出自粛で、化粧をする機会が減少した昨今。これを受けて、実際に美容部員に化粧をしてもらう「タッチアップ」を自粛する店舗が増え、ECサイトの運営やSNSでのライブ配信など、販売のアプローチが変わってきている。このような状況を消費者側はどう感じているのか。コミカライズやドラマ化もされたエッセイ本『だから私はメイクする』の編著者で劇団雌猫のメンバーであるひらりささんとユッケさんに、コロナ禍でのコスメやメイクに対する意識の変化について話を聞いた。

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■マスク着用になったからこそ、メイクやスキンケアより輪郭を鍛える人も

――今年はコロナ禍で外出や飲み会の機会が減り、更に顔の下半分がほぼ隠れてしまうマスクの着用によってメイクに対する意識も変化してきたのではないかと思いますが、お2人はどうですか?

【ひらりさ】日本での流行が始まった最初の頃は、家にいてもリモート会議がある日はメイクをしていたのですが、そのうちどんどんしなくなっていきましたね。ただ、そのぶん外出する際にはコロナ禍以前よりも気合いを入れてメイクしたい気持ちが湧いてきたので、メリハリがついたかもしれません。とはいえやはりマスクをするので、口紅を塗らないことも多いです。

【ユッケ】私も、リモートでの打ち合わせは全員カメラをオフにした状態でやっているので、直接人に会うとき以外はメイクをしなくなってしまいました。それと同時にコスメに関しても、マスクで見えないリップやチークへの興味がほぼなくなってしまったんですね。その代わり、例えば“顔色が悪く見えないアイメイク”を研究したり、どんなアイシャドウを塗れば“仕事ができる感”を演出できるのかといったことを考えながらメイクをするようにはなりました。

――マスクの着用でメイクへの関心が薄れているだけではなく、肌荒れで悩むようになったという人も増えていますよね。

【ユッケ】私自身、マスクをするようになってからニキビや吹き出物が出て肌荒れするようになりました。

【ひらりさ】マスクだけじゃなく、生活の変化によるストレスなどが肌に出てしまうこともありますよね。ただ、私の周りはコロナをきっかけに家にいる時間をうまく活用して、肌の改善のためのスキンケアをしている人が増えましたね。カラーコスメよりもスキンケアにお金を使う人が増えているのではないかなと。

【ユッケ】SNSで美容に関心が高いアカウントを見ると、肌を整えるというよりは顔の輪郭のほうに意識がいっている人も多い気がします。例えば、マスクを付けていることをうまく活用して、外でも口の中で舌をぐるぐる回す“舌回しの運動”で顎をシャープにしようとしている人がいたり。マスクで覆われているうちに、顔の下半分をケアするという発想は面白いなと思います。そう考えると、肌荒れは嫌ですが、マスクも悪くないのかもしれませんね(笑)。

■ECサイトでの購入に“慣れ”、即完売する人気ブランドも

――スキンケアの需要が伸びている一方で、コスメなどはコスメカウンターでのタッチアップができないこともあって購買意欲が下がっているように感じます。それは企業側にとっても消費者側にとってもかなりのダメージではないかと思うのですが、お2人はどう感じていますか?

【ユッケ】確かにタッチアップができないので、失敗するのが怖くてうかつに買えないというのはあります。サンプルがもっと沢山あったらいいのにと思ったり。

【ひらりさ】少量でいいので様々な種類のサンプルをコスメカウンターで配ってくれたらありがたいのになと。そうすればもっと気軽に新しい商品に手を出せるような気がします。ただ、ここ数年は海外コスメを通販で買う人が増えていて、コスメカウンターで実物を見なくても抵抗なく新しい商品にトライできたりもするんですよね。海外コスメ以外にも、SUQQUなどの人気ブランドの新作はオンラインで販売した途端に即完したり。もちろん慎重派な方や敏感肌の方は実物を試さず買うことに抵抗があると思いますが、コロナ前に比べてもネット通販の需要は高まっているように感じています。

――メイクを楽しんでいた方やコスメにハマっていた方は、この状況下でも以前と同じようにメイクへのモチベーションを失うことなく過ごしているのでしょうか?

【ひらりさ】周りのコスメ好きの人達は、コスメよりも香水やネイルの話をすることが多くなりました。それから、少しでも気分を上げるために家の中をきちんと整える人が増えた。

【ユッケ】確かにインテリアにこだわる人が急増しています。部屋の写真をアップするためのインスタアカウントを作る人も私の周りではも増えたかも。

【ひらりさ】外に買いにいくというよりも楽天ROOMなどでお部屋コーデを眺めてる、いいものがあったら通販している感じ。美容やコスメの延長でインテリアを変えたり家を整えているのかもね。マスクでメイクを工夫する以外のところでどう楽しく過ごすかを考える人が増えたように思います。コスメで新作を買おうという欲求は収まっている印象ですが、自分と向き合ったり癒す方向だけでなく、単純に気分が上がるのが楽しいと思える消費も盛り上がってほしいですよね。

■デパコスとプチプラコスメの境目は消滅?

――私のメイク好きの友人は海外ドラマを参考にした、複数人で“派手なアイメイクをする会”をリモートでやっていたりするのですが、今後はそういったメイクの楽しみ方も増えていくのではないかなと思います。

【ひらりさ】確かに、以前よりも“誰かのため”じゃなく“自分のためのメイク”をする人が増えてるのが、ドラマ「だから私はメイクする」の感想を観ても伝わってきます。最近は女性誌も“モテメイク”から“自分のごきげんをとるメイク”にシフトした記事を作っているという指摘をネットで見かけました。企業側も商品展開をそこに合わせていかないといけないのではないかと。

 また、この半年あまりはコスメや美容に限らず、単純に何かを買うのが言いづらい時代になってきたなと感じます。だから物のおすすめをするよりは、自分はこんなふうに楽しんだというのを意識して発信する時代なのかなと思いますね。

――今後のメイク業界はどのようになっていくと予想しますか?

【ひらりさ】デパートカウンターのコスメに求めていたものって「持ったときの特別感」もありましたよね。別に誰かに見せるわけじゃなくても、ポーチから取り出す時のワクワク感が楽しかったり。出歩く機会が減って、そのときめきの重要性が薄れているのが少し寂しいですよね。家で使う限りでは、ドラッグストアのプチプラコスメでもいいかな、と選ぶ人は増えそうです。

【ユッケ】私はデパコスとプチプラコスメの境目がなくなってきているからこそ、誰かに会う日のメイクは“特別感”を出すのも良いんじゃないかなと思います。このようにマスク生活が続くと、マスクを外した顔を見せる相手って相当親しい間柄だと思うので、それならば“とっておきの自分”を見せたいじゃないですか。もちろん自分のためにメイクを楽しむのも素敵だけど、たまには誰かのために気合いを入れてみるのもいいんじゃないかなって。だから企業側も今後はその両方にアプローチできるような売り方を考えて展開していくと良いかもしれませんね。

(文:奥村百恵)