主演ドラマ『35歳の少女』(日本テレビ系)での好演が話題の柴咲コウ。不慮の事故による25年の眠りから目覚めた「心は10歳、体は35歳」の女性という難役をこなす高い演技力に称賛の声が集まっている。今年はNHK連続テレビ小説『エール』に初出演するなど女優業も充実。またデビュー以来所属していた事務所から独立するという環境の変化もあった。女優、歌手、そしてレトロワグラース代表と、ますます活動の幅を広げる彼女に自身の現在地、急激な変化を遂げる芸能界について話を聞いた。

【写真】太ももチラリ… ひざ上白ワンピで美脚を披露した柴咲コウ

◆過去は、現在の自分に連なって存在していることを実感

──ドラマ『35歳の少女』の迫真の演技が話題です。実年齢よりも何十歳も幼い少女を演じるために、どのような役作りをされたのでしょうか?

【柴咲コウ】 このドラマのお話をいただいて、10歳の頃の自分の声を吹き込んだカセットテープを聞いてみたんです。そうしたら懐かしいという気持ちよりも、あの頃の情景がとてもリアルに目の前に広がってきて。過去というのは点ではなく、現在の自分に連なって存在していることを実感しました。

──現在の柴咲さんにも存在する“10歳の少女”の要素を、芝居にも生かしているということでしょうか?

【柴咲コウ】 もちろん演じる対象は私自身ではないわけですが、人間の本質というのは幼い頃からそれほど変わらないんじゃないかなとカセットテープを聴いて感じたんですね。ということは、望美という女性の本質を捉えることができれば10歳でも中学生でも、それこそ35歳でも演じられるのではないかと、そんな気持ちで役に臨んでいます。

──柴咲さんが考える時岡望美の本質とは?

【柴咲コウ】 人を思いやることのできる女性ですよね。周りの大人からは偽善だとかきれい事だとか言われてしまうような──。でもその純粋さは“10歳”だからではなく、彼女が本質的に持ち合わせているもの。そんな彼女の存在を通して、バラバラになってしまった家族がどのように再生されていくのか、この先の台本をいただくのが私も楽しみです。

◆芸能界がより良い環境になるために変わり始めている

──今年3月には事務所を退社し、ご自身が代表を務める会社でマネジメントも行うようになりました。

【柴咲コウ】 会社の設立は2016年で、いきなり起業し独立というわけではないんです。アパレルやプロダクトの企画開発といった企業活動も徐々に充実してきたなかで、エンタテインメントを扱う部署も加わったという形でした。

──ご自身も含めて、“独立ラッシュ”の芸能界の今をどのように捉えていますか?

【柴咲コウ】 日本の芸能界には昔ながらに根付いている慣習がたくさんあります。なかにいるとなかなか気づかないものですが、いざ外部の方と関わると「特殊だね」と指摘されることも多いんですね。

──例えばどのような指摘が?

【柴咲コウ】 例えば契約1つとっても「そんな不透明でいいの?」と驚かれたことがありました。情報化社会のいま、芸能界で働く人たちも一般社会の体制ときちんと折り合っていかなければならないと思います。いずれにしても芸能界がより良い環境になるために変わり始めている。今はそんなフェイズに来ているように感じています。

──大手事務所から個人事務所へ。働き方はどのように変わりましたか?

【柴咲コウ】 私は代表取締役でもあるので、自分が行動しなければ誰も動いてくれません。スタッフへの責任も伴いますし、やるべきことも格段に増えました。でも自分で決定権を持ち、こんな仕事をしたい、こういう形で向上したいと自らハンドルできるのは、自分には合っているような気がしますね。

◆来年40歳、年齢なんて記号。そんなのに縛られたくない

──来年40歳になりますが、年代が変わる意識はありますか?

【柴咲コウ】 まるでないと言ったら嘘になりますが、「年齢なんて記号。そんなのに縛られたくない」と抗っている自分もいて(笑)。一方でその年齢に見合う生き方はできているかなと省みることもあったりと、やはりキリのいい数字というのは節目なんだなと思わざるを得ないですよね。

──公式YouTubeチャンネルには、「北海道に生活拠点を作る計画」が公開されています。それも節目に関係あるのでしょうか?

【柴咲コウ】 いえ、計画はもっと以前から着々と進めてきたことなんです。私は生まれも育ちも東京ですが、子どもの頃の夏休みは、両親の知り合いの住んでいた家、静岡で過ごすのが恒例になっていました。また両親はともに北海道出身で、冬はスキーをしに祖母の暮らす北海道へ行くことも。それもあって自然が大好きになった一方で、自分の生まれ育った環境がどんどんコンクリートに埋め尽くされていくのを見てきて、果たして自分はどこで生きていくのがベストなんだろう? と考えたんですね。

──北海道への移住を考えたことも?

【柴咲コウ】 幼い頃から自分には実際住んでいる東京と、ルーツとしての北海道とがあるという意識でいたので、「移住」というよりはそれを改めて具体化するという感覚ですね。どんな物事でもバランスが大切だと思います。例えば、快適な暮らしを求めるのは当然としても、それを追求するあまりに自然を犠牲にするのはやはりバランスを欠いている。そんな思いが強くなったことも、「美しく生きること」を企業理念とする会社の立ち上げにはありました。

──テレワークの普及で「地方で暮らし、都内の企業で働く」という人も増えそうですが、女優業についてはいかがでしょうか?

【柴咲コウ】 もともと女優業は出稼ぎみたいなところがありますからね(笑)。連続ドラマであれば3ヵ月とにかくその現場に集中して、それが終わったら1ヵ月スケジュールが空いてしまうなんてこともよくあります。SNSやYouTubeを活用すれば場所を問わず発信することもできます。向上心を持ちながらバランスの取れた生き方をしていくこと。それを実現するのが、40代に向かっていくこれからなのかなと思っています。

(文/児玉澄子)