家庭用ゲーム機黎明期に誕生し、今も楽しめる名作から、“クソゲー”と呼ばれる不人気作まで、さまざまなソフトを生み出した『ファミリーコンピュータ』。そのソフトは1000タイトル以上と言われ、誰もが知っている名作から、まったく日の目を見なかったものまで、実にさまざま。そこで、ゲームソフト所有本数3万本、約3000万円をゲームに捧げたファミコン芸人・フジタ協力のもと、この“ファミカセ”をさまざまな角度で切り取り、ピックアップ。第15回のテーマは、「魔境・ロンダルキア誕生の真相とは?ファミコン芸人フジタが語る『“ドラゴンクエスト”シリーズの革新』」。※以降の内容は、ゲーム攻略法などネタバレ要素を含みます。閲覧にご注意ください。

【写真】“たわわ”な爆弾ボディ「ドラクエ」女賢者、女僧侶も…美女レイヤーコレクション

「I」のヒットにあぐらをかかず、常に“革新的”であることが魅力

「10月から派生シリーズである『ダイの大冒険』(テレビ東京系)のアニメが始まったり、先日も音楽を担当されているすぎやまこういちさんが、2020年度の文化功労者に選出されるなど、『ドラゴンクエスト』まわりの明るいニュースがあふれています。「I」の発売から来年で35年になるにもかかわらず、今もなおホットな話題を提供できる『ドラクエ』コンテンツのすごさを感じます」と語るフジタ。

 シナリオ、キャラクター、音楽など大ヒットの要因を挙げれば枚挙にいとまがないが、そのなかでもフジタは、「ドラクエ」の革新性がすごいという。

「『I』が大ヒットしたわけですから、その名前を使って当たり障りない内容で“二匹目のどじょう”を狙ってもいいなか、『ドラクエ』は単なる続編ではなく、必ず前作を超える革新をし続けた。そこが大きなポイントだと思います。『ドラクエ』は、他のソフトではなく常に過去の『ドラクエ』を超えていった。これが一番すごいところだと思います。もっとも、堀井雄二さんのシナリオ、鳥山明さんのキャラクター、すぎやまこういちさんの音楽。この3本柱として強力だからこそできることだと思いますが」

 そんなフジタが語る、進化する「ドラゴンクエスト」シリーズ革新のポイントは以下の通り。

RPGの概念を植え付けた「I」、仲間との絆を感じた「II」

◆ドラゴンクエスト(1986年/エニックス)

 ロールプレイングゲーム(RPG)というものをほとんど誰もやったことがない時代、RPGを知らない人たちに向けて堀井さんが、とにかく「親切に」「わかりやすく」、RPGがどういうものなのかを知らしめた、ということが革新のポイントですね。

 もともと、RPGはパソコンゲームの世界でコアユーザーをターゲットにしていたゲーム。今と違ってパソコンもそんなに普及していない1980年代前半、パソコンでRPGをする人はかなりのコアユーザーで、RPGゲーム自体、不親切なものが多かったと言われています。当時あったパソコンのRPGをそのままファミコンに移植していたら、初心者ユーザーはわからないことだらけだったと思いますし、最初がそんなんだったら、今ゲーム業界におけるRPGの立ち位置も変わっていたと思います。

 例えば、ゲームが始まって、勇者はまず王様に会いますよね。チュートリアル風の展開で、「次どうしろ」とか、進むべき道を示してくれる。それってリアリティはないですけど、そうすることで、絶対的に進まなければならない道を示してくれる。
 しかも、城の中からスタートするので、城内や街で「はなす」「とる」「とびら」「かいだん」などのコマンドを一通り試してから外に出て冒険に出ることができる。

 しかも前にも話しましたが、「Aで決定」「Bでキャンセル」というルールを定めたり、「呪文」というものがどういうものなのかを、ちびっこにもわかりやすく知らしめた。日本におけるRPGの概念を植え付け、何もわからない人に教えた作品ですね。

 あと、細かいところですけど、敵の強さを橋などのエリアで区切った仕組みもすごかった。ここより先にいくと、すごい強い敵が出てくるとか。そうすることで、境界線を引き、自然な形で主人公の行動範囲を決めていた。一見自由に物語を進んでいるような感覚なんだけど、実はシナリオに沿っているという展開もうまかったと思います。

◆ドラゴンクエストII 悪霊の神々(1987年/エニックス)

 「ドラクエII」での革新は「ひとりじゃない」というところですかね。パーティを組めるというところ。仲間で冒険を進め、一緒にボスを倒していくということの連帯感ですね。

 「I」では一人旅なので、攻撃も回復もすべて自分でやらなければいけなかった。ところが「II」では、仲間のために回復をしたり、一斉に攻撃をしたり。「I」での、“戦闘の駆け引き”に“仲間への思いやり”が加わった感じです。

 ファミコン版の「II」と言うと、やはり「ロンダルキア」の記憶が強いですよね。ゲームバランスを崩すほどの強敵ばかりが現れる最終盤のまさに魔境。これは聞いた話なのですが、制作サイドが「納得できない」と言っていたらしいです。「制作期間が短すぎる」と。確かに、「I」が出たのが1986年5月27日に対し、「II」は87年1月26日とわずか8カ月後。しかも、当初「II」は1カ月前の12月発売とアナウンスされていたのを1ヵ月後ろ倒した。だから、さらに遅れることは許されなかったみたいです。

「I」の大ヒットを受けて急ピッチで開発され、ギリギリでゲームバランスを調整することもままならなかったというのが、魔境を生んだ真相のようです。もっとも、ロンダルキアの難易度問題があるにしても、物語としてちゃんと成立させ、前作からわずか8ヵ月であそこまでの完成度に持っていくことがすごいです。

セーブ&ジョブシステムを搭載した「III」、AIを導入した「IV」

◆ドラゴンクエストIII そして伝説へ…(1988年/エニックス)

「III」の革新として挙げられるのは、セーブ機能ですね。このおかげで、パスワードをメモりミスする可能性がなくなった。これは大きかったですね。同時に、「ぼうけんのしょ」が消えるというリスクもはらみましたが(笑)。ただこれは、「III」特有というか、ゲーム業界の技術の進化ということができます。

 「III」ということで言うと「ジョブシステム」ですね。仲間の名前や職業を自由に決め、「ルイーダの酒場」で自由に仲間を入れ替えて、パーティを組めるシステムが画期的でした。「I」で冒険する楽しさを知り、「II」で仲間がいる喜びを知り、「III」で自分の色を出したパーティを組む。RPG初心者だったユーザーを見事に進化、成長させていますよね。

 余談ですが、堀井さんは、パーティシステムを導入した「II」が受け入れられるか心配で、発売日に売り場まで見に行き、行列ができていて安心したそうです。「I」がわかりやすく、「II」はそこから比べると少し複雑になっていたので、ユーザーが付いてこれるか心配だったようです。

◆ドラゴンクエストIV 導かれし者たち(1990年/エニックス)

「IV」はオープニング画面から革新的でしたね。それまでの3作が、真っ暗な画面から始まるのに対し、「IV」が物語の始まりを告げる壮大なファンファーレから、真っ赤な空、雲海に城が浮かぶ。いよいよ始まるってワクワク感がすごかった記憶があります。

 そして、AIの導入が一番かなと思います。パーティのメンバーに「さくせん」で戦術を共有し、自由に戦う戦闘システムは、すごく不評でしたけど、当時の最高の技術を惜しげなく投入したところがすごいと思います。今なら「さくせん」の方針に、AIが学習して、自分の思うようにいくと思うんですけど、当時はパターン化していて、なかなか自分の思うようにいきませんでした。

 あと、オムニバスの「章システム」もよかったですね。一見するとまるでつながりのない5つの物語が、導かれるように見事につながっていく展開。物語も素晴らしかったです。