NHKの連続テレビ小説『エール』(月~土 前8:00 総合ほか※土曜は1週間の振り返り)の第20週「栄冠は君に輝く」(第96回~第100回:10月26日~10月30日)では、主人公・古山裕一(窪田正孝)のモデルである古関裕而の代表作の一つ、「栄冠は君に輝く」が誕生するまでを通して、敗戦を境に人生が一変した裕一の幼なじみ・佐藤久志(山崎育三郎)と、ヒロイン・音(二階堂ふみ)の姉・関内吟(松井玲奈)の夫・智彦(奥野瑛太)の“再生”が描かれた。

【写真】『エール』第20週の主な場面

 まず、陸軍の馬政課に所属していた元軍人の智彦。終戦後、復員して就職先を探していたが、元軍人という経歴は「何の価値もない」と全否定され、闇市で見知らぬ男たちからは「軍人のせいで、俺らはこのザマだ」とボコられ、戦災孤児のケン(浅川大治)には財布をすられ、散々。「一杯のラーメンだって作るの大変なんだよ」と言われたことから、ラーメン屋台で働き始めたが、軍人時代の同期・松川(木原勝利)に誘われ、貿易会社に就職することに(以上は、第19週)。

 松川の実家が経営する貿易会社で働き始めて1ヶ月。智彦は、松川から「同期がラーメン屋なんて恥ずかしいからお前を選んだ」と聞き、怒りを覚える。その夜、吟から「人のために命を燃やせることがあなたの誇り。その生き方ができる選択をしてほしい」と言われ、貿易会社を辞め、ラーメン屋に戻ることに。やがて、店主の天野(山中崇)から屋台を引き継ぐまでに腕を上げる。ケンも吟と智彦の家に住み込みで、ラーメン屋を手伝うことになる。

 「長崎の鐘」を書き上げ、音楽への情熱を取り戻した裕一の元に、戦時中に出会った新聞記者の大倉(片桐仁)が「全国高等学校野球選手権大会」の歌の作曲を依頼しにやってくる。学制改革により従来の中等学校が高等学校となり、夏の甲子園大会が全国高等学校野球選手権大会に名称が変わるのにあわせ、新しい大会歌を作ることになったのだ。

 ある日、再会した藤丸(井上希美)に連れられて、闇市近くの家を訪れた裕一と村野鉄男(中村蒼)。そこで久しぶりに久志と再会するが、その変わり果てた姿に絶句する。実は久志は、戦後の農地改革で福島の土地も屋敷も取られ、収入もなくなってしまっていた。父親が亡くなってからは歌もやめて、酒と博打(ばくち)で荒れた生活を送っていたのだ。藤丸はからこれまでの経緯を聞いた裕一たちは、久志のもとを何度も訪れるが、久志は取り合おうとしない。

 一方で、全国高等学校野球選手権大会の大会歌づくりは着々と進んでいた。公募した歌詞は、裕一の意見もあり、「栄冠は君に輝く」に決定する。その後、甲子園を訪れた裕一は、その場でメロディーが浮かび、曲を書き上げてしまう。

 完成した全国高校野球選手権大会の歌「栄冠は君に輝く」を、もう一度前を向くきっかけになるように、久志に歌ってもらいたいと考えた裕一は、さっそく久志の家を訪れるが、久志は「もう昔とは違う」と一方的に裕一を突き放す。鉄男も久志を訪ねるが、話を聞こうとしない。そんなある日の朝、藤丸が久志の姿が見えなくなったと古山家に探しに来る。

 藤丸が見当をつけた福島に向かった裕一。福島の実家で久志を発見する。亡くなった久志の父は、戦争の歌を歌っていた久志のことで周りから陰口を言われ、葬式に来る者もいなかったそうで、久志は「自分が選んだ道が父さんを苦しめた」「どうやって生きていったらいいか分からない」と、裕一に打ち明ける。

 久志もまた、周りの人から陰口をたたかれ、どう生きていいのかわからず、苦悩していたのだ。裕一から久志の話を聞いた劇作家の池田二郎(北村有起哉)は、闇市に久志の様子を見に行き、「夜更けの街」という歌詞を書いた。裕一は、この歌詞に曲をつけるから久志に歌ってほしいと、久志を誘う。

 「歌う」と答えた久志。コロンブスレコードでは、廿日市の秘書だった杉山あかね(加弥乃)がディレクターになっていた。久しぶりに久志はレコードを出すが、立ち直った様子はなく…。「夜更けの街」を歌ったのは、金のためだと話す久志。鉄男も藤丸もあきれる中、「あの歌には魂がこもっていた」と久志のことを信じ続ける裕一。再び久志のもとを訪れ、「栄冠は君に輝く」を久志に歌ってほしいと、楽譜を渡す。

 大倉は、愛国歌謡の印象が強い久志の起用に難色を示すが、裕一は「他のどの歌手よりも彼が向いている」と頭を下げて必死にお願いする。断るつもりで古山家を訪れた久志は、音からその話を聞いて心を動かされる。それでも「こんな希望にあふれた曲を歌えない」と言う久志を誘い、裕一は甲子園へ。

 そこで裕一は久志に、「戦時歌謡を歌わせた責任は自分にある」と詫びる。そして、「栄冠は君に輝く」を作詞した多田良介さんの話をする。ケガで甲子園への夢を失った多田さんは、絶望を経験し、葛藤を乗り越え、自分にできることは、未来ある若者を応援することだと気付き、「栄冠は君に輝く」の詞が生まれた、と。

 裕一は「君も絶望を知ってる。僕もどん底に落ちた。でも、どん底まで落ちた僕たちにしか伝えられないものがある」と、改めて久志に歌ってほしいと懇願した。裕一の言葉を受けて、マウンドに立った久志は、「栄冠は君に輝く」を歌い始める。1948年の夏。「栄冠は君に輝く」は甲子園球場に響き渡り、ラジオの野球中継を通して多くの人の心を沸き立たせた。

 第20週には、サプライズゲストも多数。久志のマージャン仲間・犬井役で、本作の語りを担当している津田健次郎。「栄冠は君に輝く」を作詞した多田良介役で元読売ジャイアンツ、現栃木ゴールデンブレーブス監督の寺内崇幸が出演。第8週で裕一に「紺碧の空」の作曲を依頼した早稲田大学応援部の団長・田中隆(三浦貴大)や元団員たちが再登場した。