『BanG Dream!』や『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』といったメディアミックス作品や、『新日本プロレス』などの人気ライブコンテンツを保有するブシロード。2月には予定していたすべてのイベントの中止を発表したが、7月からは徹底した感染防止対策のもとでライブイベントを再開させている。一方で、この間には配信事業も成熟してきた。withコロナの時代に、生のライブと配信はどのように共存していくのか、木谷高明会長に話を聞いた。

■「ファンの目はさらに肥えた」オーラ放つ“本物”が稼ぐ時代に

──御社はライブイベントを再開させつつ、開催から2週間経過するごとに「感染者ゼロ」のリリース報告もされています。現場に来場者が戻ってきた感覚はありますか?

【木谷高明】9月に入ってだいぶ「ライブに行きたい」というモチベーションは高まってきたようですが、「配信で観られるのはありがたい」という声も多いですし、まだ恐る恐る…という感じでしょうね。当社も現在は、ほとんどのイベントで、動員人数を縮小した「会場観覧+配信」のハイブリッドで行っています。

──配信事業が好調な様子です。

【木谷】すべてとは言わないですが、全体で見ればちゃんと黒字は出ていますよ。ただライブ配信が定着したことで、ユーザーの目はさらに肥えたような気がします。今後、ライブ事業はますます勝ち負けが明確に二極化されていくんじゃないかと思いますね。

──勝敗を分けるのは?

【木谷】端的に言って実力でしょう。歌唱力や演奏力もそうだし、ビジュアルもそう。大画面テレビの映像もキレイだし、ようは技術で補正できないオーラを放つアーティストは、従来の会場やパッケージに加えて、配信、アーカイブ、ライブビューイングと収益機会が増えたんです。その収益を再投資すれば、さらに差が付きますよね。その狙いもあって、当社でも今、アーティストのブラッシュアップの場のために大型物件を探してるんですよ。

──物件ですか?!

【木谷】アーティストが今まで以上にスキルアップできるように、練習できたり先輩の練習する姿を後輩が見学できたりする場です。これからますます、実力がものを言う厳しい世界になるでしょうから。

■「ライブは観客と作るもの」高まるリアルライブの価値

──コロナ後もライブ配信が定着すると想定すれば、生のライブの価値はさらに上がりそうですね。

【木谷】アメリカでスポーツが巨大産業となった背景を考えれば、それは必然でしょう。ペイパービューのケーブルテレビで観戦したら、やっぱり次は会場で生の熱気を感じたくなりますからね。チケットも配信はやや安価、一方で会場観覧はこれまでよりも高価格設定になると思います。コストも圧倒的に会場にかかっていますしね。

──8月開催の「『BanG Dream! 8th☆LIVE』夏の野外3DAYS」は感染防止対策の徹底とキャパシティの調整のため、当初発表していたチケット価格の改定がありましたが、購入者の反応はいかがでしたか?

【木谷】当初発表から2000円プラスさせていただいたんですが、こんな状況だし、まあまあ、みなさん納得してくれたんじゃないですかね。用意したチケットは9割程度売れて、完売に近い状態でした。といっても3日間で1万2500人とキャパの4分の1程度でしたが。ライブビューイングは2万3500人ほどで、例年よりやや少ないくらいでした。やはり映画館に行くのも躊躇した人も少なからずいたんだと思います。

──配信の手応えはいかがでしたか? 

【写真】『テラハ』故・木村花さんの強烈ビンタで吹っ飛ぶブシロード木谷会長

【木谷】バンドリの場合、ライブ配信は行わず、1ヵ月後にアーカイブ配信を行ったのですが、国内外で約2万3000視聴と想定以上に多かったんですよ。このときは3DAYSそれぞれ1日限定での配信だったんですが、もう一度同じコンテンツを配信したらどのくらい数字が行くかなど、こんな機会なのでいろんな形で検証してみたいと考えているところです。

──会場で観覧した人が、「あの感動をもう一度味わいたい」とアーカイブ視聴するケースもありそうです。

【木谷】そういう人も多かったと思いますよ。僕も現地に3日間行きましたけど、やっぱりライブは観客がいたほうがいいですね。フィナーレで夜空に花火が上がって、みんなで見上げてる光景は本当に感動的でした。今回は声援の禁止をお願いしたり、お客さん同士が密にならないように銀テープなどの演出を中止したりしましたけど、やはりライブは観客と一緒に作るものなんだと実感しました。

■「舞台」コンテンツに金脈の予感、「35歳以上が活躍できる作品をつくりたい」

──舞台コンテンツの配信事業についてはいかがですか?

【木谷】舞台は、音楽ライブ以上に配信に活路があると感じています。舞台を見慣れている方なら定点カメラの映像でも十分満足できますから、まずコストがそれほどかからない。また舞台ファンの中には全日程を観覧したいという層もけっこうな数でいますし、とくにチケット入手困難な舞台は配信でかなりビジネスが広がると思いますよ。

──御社でも新たなメディアミックスプロジェクト『ROAD59-新時代任侠特区-』が、12月の舞台公演から始動します。

【木谷】男性キャストがメインの硬派な世界観で、これまでの当社の舞台とはかなり違った雰囲気になりそうです。僕は35歳以上のカッコいい男性たちが活躍するコンテンツがやりたかったんですよ。2.5次元系の活況から新人が出てくる場は増えているけど、年齢を重ねると実力は付いていくのに活躍の場は減っていく。もちろん(同舞台に出演する)京本政樹さんクラスになれば別ですけど、そのことがちょっと気になっていて。

──たしかに2.5次元は少年コミック原作が多いですから、キャストも必然的に若くなってしまう。

【木谷】だったらオリジナルを作ってしまおうと。またオリジナルの良さは、どれだけメディアをミックスしても「演じる人物を同じ」にできることなんですよね。ようは当社の『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』や『アサルトリリィ』なんかもそうですけど、アニメでもゲームでも、そして舞台でも声が同じなんです。個人的にこれってすごく重要だと思うんですよ。

──なるほど。見た目は衣装やメイクで寄せることはできても、持って生まれた声質だけは模倣できないと。

【木谷】そうなんです。もっと言えば、アニメやゲームのキャラクターデザインもキャストが決まってから制作するので、より世界観に一体感が出るんです。『ROAD59』もゆくゆくはアニメやゲームに展開することを想定して、すでにキャストに寄せたイラストも発表しています。

──かつて「仮面ライダー」で活躍された役者も数多く出演します。新たなファン層の獲得が期待できそうですね。

【木谷】あとは、とりあえず当社の作品は乗っかってみるという“ブシロード箱推し”の方もいますので(笑)、そういった方々にも満足していただけるよう、まずは12月の第一弾舞台をさせられるよう頑張っているところです。
(撮影:厚地健太郎/文:児玉澄子)