女芸人に対する“ブスいじり”など、容姿を揶揄することには視聴者からも厳しい目が向けられる昨今。では実際、芸人側はどのように捉えているのか? お笑いコンビ「たんぽぽ」の川村エミコは、幼少期から「粘土」というあだ名を付けられるなど、そんな扱いと向き合ってきた一人。自身でも、容姿や境遇について自虐するネタを披露してきたが、今では変化もあるという。「生きづらさみたいなものにどう対応していくか」を考え、これまでの人生をエッセイにまとめた川村が、過去と現在を語る。

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■父親から「あまり綺麗なほうじゃない」と言われた幼少期

 川村エミコが、幼少期から思春期、成年期に経験したこと、感じたことを素直な筆致で綴ったエッセイ集『わたしもかわいく生まれたかったな』(集英社)を発表した。幼稚園のころに父親から「あまり綺麗なほうじゃない」と言われ、小学生時代のあだ名は「粘土」だったという彼女。容姿を含め、“好かれる側”ではなかった生きづらさを、客観的かつユーモラスに綴っている。過去の自分を掘り起こしながらも、容姿や性格コンプレックスから目を逸らさず、やたらと重く扱うこともせず、ひとつの生き方として提示した本書。「こういう思いをしたことがある…!」と自分の過去を振り返ってしまうような内容は、多くの人の共感を集めるだろう。

――『わたしもかわいく生まれたかったな』とは直球ですが、このタイトルにしたのは?

【川村エミコ】人生は、他人と自分を比べるところから始まるのかなと思ったので、そのへんの感情が伝えられたらと、このタイトルにしたんです。人と違うところを受け入れた上で、「暗かったり静かだったりするのは、別に悪いことではないよ」ってことも言いたかった。本の内容としても、「私の生き様はこうで、これからもこう生きていきます!」みたいな主張は特にないんです。迷子のまま始まって、迷子のまま終わる本になりました(笑)。

――川村さんが、自分の気持ちと冷静に向き合ってきた歴史ですね。

【川村エミコ】自分で自分の気持ちをどうしていいかわからない、生きづらさみたいなものにどう対応していくか。私は暗くて静かな子だったけど、友だちになりたい子に自分から「お友だちになりたいです」と言うなど、自分なりの前向きさで行動してきました。その記録でもあるんです。黙っている子でも、いろんなことを考えているということも、伝わったらいいなと思っています。

――静かな少女ながら、舞台に立ちたいという夢を幼少期から持っていたそうですね。

【川村エミコ】ずっと同じ夢を持ち続けていたわけではなく、アナウンサーになりたいと一瞬思ったこともありました。でも、「私、アナウンサーになりたいなぁ」とぼそっと言ったら、大学生のいとこに「絶対に無理」とバッサリ言われてしまった(笑)。あっという間にその夢は打ち砕かれたわけなんですが、他にもいろんなことに興味を持ち、そのうちのひとつが舞台に立ちたいという夢なんです。

――人前に立つというのは、なかなかハードルが高かったのでは?

【川村エミコ】大学の演劇部で舞台に立ったとき、観客からのアンケートで「良かったです、涙が出ました」と書いてあって、ものすごくうれしかったんです。普段、人と心を通わすのが得意ではなかった分、そういった声があると、心で繋がれた気がしたんですよね。舞台っていいな、生でお芝居するのって楽しいなと思って、ハマりました。

■お笑いは挫折からのスタート、陽気なギャグをやめた転機

――そこから、お笑い方面に進まれたのはなぜ?

【川村エミコ】たまたま、さまぁ~ずさんが学園祭のライブに来たんです。大竹(一樹)さんが講堂に入ったときに、「なんだここ、公民館みたいじゃねーか!」と言ったら、会場が揺れるくらいウケた。お笑いってすごい!って感動しました。

――笑いの力を目の当たりにしたんですね。

【川村エミコ】はい。しかも、そのとき『ホリプロお笑いジェンヌ』の募集要項のチラシが並べられていて。楽しいこと、面白いことに出会えるかもしれない!と思って、履歴書を送ったんです。

――行動するときは早いですね!

【川村エミコ】はい(笑)。興味が勝ると、すぐ動いちゃいますね。あと、できないことをできるようにするんだっていう、M気質なんだと思います。初めてピン芸人として舞台に立ったとき、「声が小さい」とダメ出しされたので、すぐにワークショップに申し込みました。できないならやれるようにしなくちゃ、という部分では、ポジティブなんですよね。

――特に、お笑いに向いているわけではなかった?

【川村エミコ】全然。むしろ、声が小さいという、挫折からのスタートです。そのままずっと、これでいいのかな?と思いながら今に至っている。もう17年目ですけどね(笑)。結局、答えなんてないんですよ。はじめは、芸人なんだから明るくなきゃいけないっていう思い込みがあった。だから、陽気なギャグを一生懸命やっていたんですが、全然ウケなくて。あれ、違う?と思って、ある日「二十歳になれば、キレイになれると思っていた…」と低いテンションで言ったら、すごくウケたんです。そうか、普段思っていることをネタにすればいいんだ! 無理をして明るくしなくてもいいんだ!とわかってからは、すごくやりやすくなりました。

――かつては「粘土」というあだ名がついていたという川村さん。自分の容姿をネタにすることもありますが、昨今ではお笑いといえど“容姿いじり”に対する賛否の声があります。その点についてはどう思いますか?

【川村エミコ】いろいろな意見があるとは思いますが、私個人としては、全然イヤだと思っていないんです。小さい頃から、何かにつけ「ブスのくせに」っていうのがついてまわるものだと思っていたし、「私には本当のことを言っていいんだよ!」と感じながら生きてきたので。だから、それが笑いになるなんてなんて素敵なんだろうというのが、正直なところなんです。

――なるほど。

【川村エミコ】ただ、こちらがそう思っていても、あまりいい気持ちがしない人がいるのは確かだと思います。私も以前は、自虐だけで笑いが成立していたんですが、今は「私、自分のことをちゃんと肯定しているんですよ」というところまで伝えないと、受け入れてもらえない。私はこれを“ポップ自虐”と呼んでいます。

――自虐にポップさを加味すると。

【川村エミコ】はい。「自分の容姿を笑いにできて楽しい」って言えるのは、私が芸人という立場だから。容姿をいじられることで傷ついたり、苦しいと感じたりする人もいますから、受け取り方は誰ひとりとして同じではないんです。とくに、子どもの頃なんかは、言い返すこともできなかったりしますよね。そこは同列に考えないほうがいいとは思います。

――女性同士の関係性の難しさや、恋愛についての格言など、川村さんなりの考えも記されています。

【川村エミコ】「なんで結婚しないの?」に代表される、女性同士でよくある「なんで?」攻撃ですね(笑)。共感してくださる方がいれば、うれしいです。恋愛の格言も、たった3人しか付き合ったことがないのに、書いちゃった(笑)。自分は頑張らなきゃいけないっていう立場ですから、カワイ子ちゃん向けの参考書は、当てはまらないわけです。だから自分で考えて、実践して見つけていくしかない!という姿勢でやってきました。まだパートナーは見つかっていないので、絶賛アップデート中です(笑)。この本に書いたのは今の時点での答えなので、明日は明日でガラッと変わるかもしれないです。

――こうして1冊の本にまとめたことで、どのような心境の変化がありましたか?

【川村エミコ】自分の中から出して文字にしたことで、記憶がさらに濃くなりました。一度“心のクラウド”に上げたことで、いつまでも胸の中に留めておかなくても大丈夫な気がして。自分の中の容量が空いたおかげで、新しいことが入る隙間ができて、すごくスッキリしました。完成までには大変なこともありましたが、いろんな思い出を掘り起こし、自分と向き合えてよかったです。

(文:根岸聖子)