なるべく他人との関わりを避けて静かに生きてきた主人公に、職場の人気者の女が「友だちになろう」と声をかけてきた。戸惑いながらも誘われるままにリア充な日々を送る主人公だったが、実はその女にはある魂胆があった…。ウェブ漫画『親友偽装~堕ちた陰キャは恐ろしい~』は、「女の友情とは何か」をサスペンス風にテーマにしながら、職場や学校での同調圧力や、人間関係の複雑な距離感についても触れた物語だ。作者の木元紀子さんに、同作に込めた思いを聞いた。

【漫画】「友だちになろうよ」ある日突然、陽キャ女が話しかけてきた! その魂胆とは?

■「友だちは多いほうがいい?」人間付き合いの本質

──「友だちってなんだろう?」誰もが一度は考えてしまうテーマですね。

【木元紀子さん】そうですよね。別に毎日会わなくてもいいし、なんなら何年も会ってなくても会えばすぐに元の関係に戻ることができる。肉親ともパートナーとも違う心を許せる存在って、やっぱりいたらいいなと私は思うんです。もちろん本作の主人公・真衣みたいに「1人でも平気」と考える人もいると思います。私はなかなかそこまで強くなれませんが…。

──物語で「陰キャ」とされている真衣ですが、本質的には強い人?

【木元さん】サブタイトルにはわかりやすいワードとして「陰キャ」と付けましたが、声をかけてきた明花莉と出会う前までの真衣は、人と距離を置きながらもキチンと社会生活を送ってきた人なんです。それって精神的に自立していなければできないことですし、私としてはどこか憧れるところもありますね。

──一方、そんな真衣を陥れようとするのがいわゆる「陽キャ」の明花莉です。

【木元さん】実は今ちょうど、彼女の過去のエピソードを描いています。腹黒い悪役として登場した明花莉ですが、実は理由があって、結果的には真衣よりも多くの方が感情移入できるキャラクターになっていくんじゃないかなと思っています。

──「陽キャ」タイプに見えますが、実はいろんなことを我慢して苦しんでいる?

【木元さん】彼女はいわば同調圧力に負けてしまった子。「友だちはたくさんいたほうがいい」という価値観に縛られてしまっていただけで、根っからの悪い子じゃないんですよね。

■同調圧力に流されるのは、自分が傷つかないための処世術

──たしかに同調圧力はストレスですが、完全に無視するのも難しいものです。

【木元さん】多くの人が、学校や職場といった狭いコミュニティに押し込められて生きているわけですからね。その中でどうやりくりするか。真衣のように人との関わりをキッパリ断つか、明花莉のように周りに合わせられる明るい自分を“演出”するか。漫画なので多少極端に描いていますが、どちらかというと明花莉タイプのほうが多いんじゃないかと思うんです。私もそうでした。

──どちらも自分が傷つかないための処世術。そういう意味では、2人は似た者同士?

【木元さん】そうなんです。今後2人はある出来事をきっかけに相手を理解し、また本当の自分を受け入れられるようになっていきます。そして“真の黒幕”に立ち向かっていく、という展開をこれから予定しています。

──黒幕は、何かとこじらせやすい“オンナの友情”を利用していたわけですね。

【木元さん】大枠ではエンタメ感あるサスペンスを描きたかったので、黒幕の存在はカギになってきます。そのベースに女の子の成長や友情を描くことで、読んでくれる方が共感してくれたらうれしいなと思っています。

──根っからの悪い女の子が出てこない本作からは、先生の女の子への優しい目線を感じます。

【木元さん】物語の構造として、悪役の女性を登場させることもありますけど、基本的に女の子キャラは贔屓しちゃうところがありますね。女の子、大好きなので(笑)。

──本作にはもう1人の重要人物として、容姿はよくないけれど人間的にはカッコいい、琴絵という女性が登場します。

【木元さん】『ブスが7億円もらったら』というシリーズを描いて以来、ブスな女の子もけっこう描くようになったんです。漫画に登場するブスキャラって、明らかなギャグ要員だったり、あるいは「顔も性格も最悪」みたいなざっくりとした描かれ方をされたりすることが多いんですよね。

──「ブスキャラ」という安易なキャラ付けですね。

【木元さん】もちろん容姿コンプレックスが、性格や考え方に影響してしまうことは現実でもあります。だけど、物語に登場させる以上は、「なぜそういう性格になったのか」など、1人の人間としての背景をきちんと描きたいと思ってます。

──そういうところも含めて、女の子には優しいんですね。

【木元さん】私がオジサン気質なんですかね(笑)。どんなに困った子でも、こじらせちゃった子でも、女の子にはみんな可愛いところがあると思っています。漫画もやっぱり年齢を問わず女の子たちを楽しませたいですし、私はホラーとかレディコミも描きますけど、ベースとしては「女の子がんばれ!」という気持ちを込めています。
(文/児玉澄子)