今月9日よりテレビ朝日系で放送が始まった日本版リメイク『24 JAPAN』(毎週金曜 後11:15分~深0:15※一部地域を除く)。2003年から10年にかけて一大ブームを巻き起こした海外ドラマ『24』(邦題:『24-TWENTY FOUR-』)の日本初リメイク作品だ。オリジナル版へのリスペクトが感じられた第1話。はてさて『24』とはどんな作品だったのか。伝説となった数々のエピソードについて、当時を知る関係者に取材を敢行。これを見れば(読めば)より『24 JAPAN』が楽しめること間違いなしだ。

【写真】『24 JAPAN』で日本版ジャックを演じる唐沢寿明

【作品力がすごい!】24時間ワンストーリー、リアルタイムで事件が進行

 オリジナル版『24』(以下、『24』)は、9・11同時多発テロからわずか2ヶ月後の2001年11月6日より米国のFOXで放送がはじまったテレビドラマ。物語内の時間と視聴者の現実の時間が同じ速度で進行、事件がリアルタイムで展開しながら、CMも含めた1話60分、全24話。24時間でワンストーリーを描くというエンターテインメント史上初の試みが実行されたのだ。

 『24 JAPAN』の元にもなっているシーズン1は、カリフォルニア州の大統領予備選前夜、テロ対策ユニット(略称:CTU/Counter Terrorist Unit)のロス支局リーダー、ジャック・バウアーが、アフリカ系米国人として初の大統領候補となったパーマー上院議員の暗殺テロの計画とCTU内部に内通者がいることを知らされることから始まる。大統領候補暗殺計画を軸に旅客機爆破、誘拐、殺人、拉致、機密漏洩など、さまざまな事件が同時多発的に発生。ジャックはたびたび窮地に追い込まれながらも24時間でこれらすべてを解決するため、奔走する。

 24時間といえば、2時間の映画12本分の長さ。そのスケールの大きさだけでなく、出演者すら騙されてしまう緻密な脚本、どんでん返しの連続で予想できない展開、分割画面やデジタル時計の表示などでリアルタイム進行を盛り上げる独自の画面演出、何よりテロ阻止と誘拐された家族の救出に命をかけるジャック・バウアー役のキーファー・サザーランドの熱演に視聴者は心を奪われた。『24』はまたたく間に人気ドラマとなり、やがて日本をはじめとする世界各国でもブームを巻き起こしていく。

 そんな『24』が日本に上陸したのは、2003年10月3日。新作VHS&DVDとしてレンタルが開始されることになった(セルは同年11月3日発売)。米国ではすでに「シーズン3」の放送が始まろうとしている頃だ。

 今回、『24』を日本で大ヒットさせた仕掛け人の一人、20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパンの元社員・Sさんから当時の話を聞くことができた。

【RP戦略がすごかった!】全社一丸、ビデオ店も巻き込んだプロモーション

――当時の海外ドラマ事情というのは?

 1994年に『X-ファイル』のレンタルビデオがリリースされ、ブームとなりました。海外TVシリーズは、クオリティーも高く、コアユーザーを満足させ、リピーターを生む。ビデオ店の品ぞろえに欠かせない主力商品となりました。その後、20世紀FOXからはジェームズ・キャメロン監督、ジェシカ・アルバ主演の『ダーク・エンジェル』がヒット。他社からもさまざまな作品がリリースされるようになりました。

 ですが、2002年に『ダーク・エンジェル』、03年に『X-ファイル』といった人気シリーズが終了していき、ブームは減速。そこに現れたのが『24』だったんです。アクション、サスペンス、人間ドラマ、政治ドラマなど、いろんなジャンルがミックスされていて、これまでの海外ドラマの常識を破る、誰も見たことのない新しいエンターテインメント。本国で、数々の受賞やノミネートも納得のクオリティー。レンタルビデオ・マーケットの救世主となりうる作品として、リリースの約1年前から全社一丸となって取り組みました。

――具体的にどんなことをしたのですか?

 米国ではすでに人気を獲得していていても、日本ではほとんど知られてない新作を売り出す時は、アテンションプリーズ(注目してください)から始めなければなりません。

 主演のキーファー・サザーランドは若手の頃に『スタンド・バイ・ミー』(1986年)や『ヤングガン』(88年)などに出て、その後も活躍していましたけど、日本ではすぐにピンとくる存在ではなかったですし、1話1時間で24時間リアルタイム進行のドラマだという作品の最大の特徴をうまく伝えないと、単なるアクションドラマだと思われてしまう。だから、シーズン1のキービジュアルにあえてジャックのビジュアルは使わず、「24」という数字を全面に打ち出すことにしました。パッケージには、ジャックをはじめ主要キャストのビジュアルを小さく入れましたが、『24-TWENTY FOUR-』というタイトルが一番目に留まるようにデザイン。本国のタイトルは数字だけですが、日本では「にじゅうよん」と読まれてしまう危険性があったので、「-TWENTY FOUR-」を入れることにしたんです。

――できる範囲で日本流にアレンジしたんですね。

 10月のリリース開始に向けて5月頃から新聞・TV・雑誌・交通広告といったマス広告で大露出を図り、タイアップ、専門誌・一般誌・ラジオでのパブリシティも展開する最大規模のプロモーションを行いました。最も力を入れたのはレンタルビデオ店での店頭告知でした。当時、海外ドラマはレンタルビデオで楽しむのが主流でしたから。ポスターやバナー、スタンディ、箱POPを提供して、各ショップにコーナー展開を働きかけたんです。

 店側にはリスクもありました。『24』は24時間でワンストーリーなので、回転させるには12巻セット(1巻に2~3話収録)を何セットか買いそろえなければならなかった。その上、当初はVHSの字幕版・吹替版とDVDの3種類もあったので。それだけ用意して、万一、お客さんが借りていかなかったら大損。ビジネス的には大きなチャレンジだったと思います。

 ビデオ店の人たちに納得して協力してもらうためにサンプルもバンバン貸し出しました。通常の海外ドラマは第1話を見るだけで十分なのですが、『24』は第1話だけではその良さが伝わらないから全24話見てもらいました。大変な作業だったと思いますが、結果、TSUTAYAやGEOなど大手チェーンから、当時はたくさんあった独立系のショップまで協力していただきました。

【口コミがすごかった!】SNSが普及してなかった時代の口コミのパワー

――それでリリースされるや否や最初の『24』旋風が起きたんですね。翌04年3月にシーズン2がリリースされ、4月についにフジテレビでシーズン1が地上波初放送されました。

 あのタイミングでフジテレビが放送してくれたのは大きかったですね。深夜帯とはいえ、地上波放送は母数が違いますから。しかも、短期間に集中放送してくださって、一気に認知が広がりました。シーズン2が見たくなった人、テレビを見逃した人がレンタル店に殺到して、私たちの想像以上の反響でした。借りる時は、たいてい全巻借りていくんです。そうしないと観たい巻が貸出中だった時のフラストレーションが耐えられない(笑)。だからいつ店に行っても貸出中で、「いついっても借りられないやつでしょ」という評判が口コミで広がったんです。そういう飢餓感も、大ヒットにつながったんじゃないかと思います。

 まとめて借りて、きょうは3巻までにしよう思っても止まらなくて、結局、朝まで見てしまって、そのまま会社や学校に行くという人も続出。「眠れない」「睡眠不足になるほどハマる」という評判も広がっていきました。

 米国では週に1回、放送されているものを見る。続きが観たくて1週間が待ち遠しくて話題になったけれど、日本ではレンタルなので全話を一気に見るというのが流行った。英語で「ビンジウォッチング(binge-watching)」というんですが、米国でその言葉が広がるのはずっと後、Netflixなどの配信サービスが始まってからなんです。言葉としてはあったかもしれないんですが、視聴方法としては一般的ではなかった。当時、日本で流行っている「一気見」をどう英訳したらいいのか、苦労した覚えがあります。

――以降、リリース日にはレンタル店に行列ができ、シリーズ終了がアナウンスされた2010年のシーズン8まで人気を保ち続けました。全社員一丸となって取り組んだ『24』はまさに「キング・オブ・エンターテイメント」になったんですね。

 いろんな企業とのコラボもいろいろやりましたね。フジテレビのイベント『お台場冒険王』でシーズン3の「最速イッキ見」イベントを開催(04年8月)したり、携帯電話のauと組んで無料DVDを配ったり、ドミノ・ピザとコラボして「24セット」を発売したり。シーズン4のリリース時にはジャックが登場する「カロリーメイト」のコラボCMも放送されました。携帯電話の着信音(CTUの電話の着信音)も流行りましたよね。キーホルダーや携帯ストラップ、Tシャツやタオルなどの関連グッズも売り出され、「CTU」の紋章/ロゴ入りのものが人気でしたね。シーズン6のリリース前には、24日は“『24』の日”とキャンペーンを行い、ジャックの着うた、着ボイスもかなり話題になりました。

 日本語吹き替え版の小山力也さんもブレイクして、いろんなところから「ジャック・バウアーの声で」という仕事依頼がいっぱいきたとおっしゃってました。その小山さんのジャックを真似する芸人さん、どきどきキャンプ(岸学)さんにもだいぶ盛り上げていただきました。

 日頃、海外ドラマをあまり見ないという人たちの間にも認知が広がって、『24』だけは観た、ハマったという人がたくさんいましたし、海外ドラマの面白さに目覚めた人もたくさんいて…。『24』が人気絶頂の中、FOXでは『プリズン・ブレイク』をリリースして相乗効果で大ヒットしましたし、他社からも『LOST』や『HEROES』など、有力タイトルがヒットして、第2次海外ドラマ・ブームが起きました。日本に入ってくる海外ドラマって本当にどれも面白いんですよ。

【未来を予言していてすごい!】改めて全シーズンを見直す価値あり

――今回、テレビ朝日開局60周年記念作品としてリメイクされた『24 JAPAN』の放送がはじまり、オリジナル版も再注目されそうですね。

 『24』で描かれたことが、後に現実となることがわりとあって、そのことを指摘する人も多いですよね。一番の例は、オバマさんが大統領(在任期間:2009年1月~17年1月)になったこと。『24』のシーズン1~3における、もう一人の主人公は、アフリカ系米国人として米国初の大統領となったデイビッド・パーマーでしたから。『24』では女性大統領(アリソン・テイラー)も誕生しましたが(リデンプション、シーズン7、8)、トランプ大統領に負けて実現はしませんでしたけどヒラリー(・クリントン)さんが初の女性大統領になってもおかしくなかったですし、シリーズ後半では中国の存在感が増していきました。

 『24』を放送していたFOXは米国では保守・タカ派で知られているのですが、『24』はすごくリベラルな作品なんです。放送当時はブッシュ政権(在任期間:01年1月~09年1月)でしたが、プロデューサーが来日した時にフジテレビの笠井信輔アナウンサーが、「タカ派のテレビ局で、アンチ政府なドラマを放送して大丈夫なんですか?」と聞いたら、「視聴率さえとれていれば大丈夫」って答えていました(笑)。忖度なんてない。数字がすべて。実際、『24』はパソコンや車など優良スポンサーがつくジェネレーション、20代、30代、40代の人たちにすごく人気があったので、シーズン8まで続いたんだと思います(15年に続編の『24:リブ・アナザー・デイ』、17年に新主人公を迎えた『24:レガシー』も製作された)。

 ちょっと、話しが逸れましたが、リアルタイムで『24』を観ていた人が、今、改めて見返すと、『24』で描かれていたことが現実の世界でも起きていたことがわかって楽しいですし、日本版ではどうアジャストしているのか比較するためにもう1度、シーズン1を見直すのもいいと思います。たぶん、忘れていることも多いと思います。ほかのシーズンとごっちゃになっているかもしれないし(笑)。シーズン1を観たら、きっとシーズン2、3、4…と観たくなる、それが『24』。今は動画配信サービスで観られますから。貸出中のイライラもなく、いつでも観ることができるなんて、夢のようですよね。

――貴重なお話、ありがとうございました。

■『24 -TWENTY FOUR-』は各種動画配信サービスで取り扱い中。Huluでは全シーズン配信中。ほかに、TSUTAYAプレミアム、TELASA、ABEMAなどでも配信中。