新型コロナウイルスの影響で、例年とは大きく状況が変化した2021年卒の就職活動。3年前から実施されている『就活川柳・短歌/採用川柳・短歌』(HR総研/就職会議)にもその状況が色濃く反映されている。全国の就活生や採用担当者からの公募で、その約8割を占めたのが「WEB面接」についてだった。異常事態における就職活動を、就活生と採用担当者はどう乗り切ったのか、川柳・短歌に込められた彼らの“心の叫び”とは?

【川柳傑作集】「WEB面接は トイレから」異常なコロナ禍就活の実情 『21年卒就活川柳』まとめ

■コロナ禍で就職活動中の学生に「1人じゃないんだということを知ってもらいたい」

 企業・団体の人事領域に関する調査・研究を行うHR総研(ProFuture株式会社)と、新卒就活生向けクチコミサイト就活会議の共催による『就活川柳・短歌/採用川柳・短歌』。同企画が誕生したきっかけは、就職活動中もしくはこれから就職活動に取り組む学生に、「1人じゃないんだということを知ってもらいたい」という思いからだった。

「毎年、自身の熱い思いと、少なからず不安を抱きながら就職活動に臨む学生の本音をうまく表現した作品を入選作品として紹介させていただいているのですが、これにより、就職活動中もしくはこれから就職活動に取り組む学生さんに、みんな同じような思いを抱きながら頑張っていて、不安なのはあなた1人じゃないんだということを知ってもらいたい、また、日本の企業の皆様に、一生懸命就職活動に取り組む学生の実情や、本音を理解していただくことで、より良い採用活動に生かしていただきたいと考えました」(HR総研 久木田氏)

 学生による就活川柳を募集・発表している企業や就職関連サイトは他にも存在するが、本企画は学生だけでなく、人事担当者側からも募集・発表しているのが大きな特徴。

「スタートした3年前は、経団連が就活ルールからの脱退を表明、採用にAIを導入する企業が現れるなど、就活関連において新しい動きが生まれていた時代でした。学生と人事担当者の双方の思いを同時に発表することで、その年特有のトピックや、新しいトレンドなど社会情勢を端的に伝えられると考えたことも、企画をスタートさせた大きな要因でした」

 今年は新型コロナウイルスの影響で、就職活動が本格化する3月に大規模イベントの自粛要請が重なり、企業による合同説明会のほとんどがキャンセルまたは延期に。何より大きかったのは、大半の企業がWEB面接を採用したことだった。それだけに、寄せられた788作品中8割はWEB面接をテーマにしたものに。最優秀賞も学生、採用担当者ともにWEB面接を詠んだ川柳だった。

■「選考では作者の思いに寄り添うことを意識」自虐の裏にある学生の実情も解説

 就活生部門の最優秀賞に選ばれた川柳は「人生が懸かっている就活面接で、回線が止まってしまうと本当に焦ってシャツがびしょびしょになるくらい冷や汗が止まりませんでした」という学生の切実な思いから生まれたもの。対面の面接とは違う、回線や機器トラブルに関する不安や緊張感をリアルに生々しく表現している。

『ウエブ面接 止まる回線 止まらぬ汗』(大阪府 はらDさん)

「選考にあたっては、作者がどのような思いでその作品を詠んだのか、作者の思いや立場にできる限り寄り添うことを強く意識しています。たとえ自虐的な作品であっても、その裏にどのような実情があるのか、また、違う視点で見ると意外なメリットもあることをコメントすることで、作者が少しでも救われる気持ちになれると思いますから」(久木田氏)

 その言葉どおり、入選作の中には、WEB面接の見えない裏側を詠った川柳も。

『散歩ゆく 自宅面接 母の愛』(東京都 ひらこすさん)
『WEB面接 ハキハキ笑顔で 下ジャージ』(東京都 TKさん)
『部屋がない WEB面接は トイレから』(東京都 ながくぅさん)

 1つ目の川柳は「WEB面接を受ける私に気を遣い、『あまり聞かれたくないでしょ?』と、そっと散歩に行ってくれる母に感謝です。」と作者。子どもの面接が何時からあるのかを把握し、面接が始まる前に席を外してくれる母親に思わず感謝する息子の心情を見事に表現した作品である。

 次はオンライン面接で見えている部分と見えていない部分のギャップを詠んだ作品。この状況は就活生だけでなく面接官も同じはず。オンライン面接のメリットの1つと寛容に受け止めてもいいのかもしれない。最後の句は、自分だけの部屋がなかなか無く、家中で面接を受けられる空間を探し回った結果、誰にも邪魔される心配のないトイレに行き着いたというユーモラスながら切実な裏側が伝わってくる。

「就活生の作品には、自宅でのWEB面接の方法を模索しながら、家族の協力に感謝する様子や、企業の事情や社会動向に翻弄されながらも懸命に就職活動に臨む前向きな気持ちがうかがえるものが多数ありました」

 一方の採用担当者部門では、「面接時に、ささやき女将のように近くで指示している親御さんがチラッと映ってしまっていた」経験から読まれた川柳が最優秀賞に。

「オンライン 親が近くで カンペ出し」(東京都 アイスの実さん)

 このように、WEB面接での実際にあったエピソードを詠んだ作品が多い中、入選作には、SNSに不慣れな採用担当者が悪戦苦闘している様子を表現した作品も。

「つぶやいて(Twitter)撮って(Instagram)踊って(TikTok)いいねして(SNS全般)どれだけやったら 学生来るのか」(神奈川県 川崎の大仏さん)
「WEBセミナー 画面の向こうは カメラ無し まるで気分は YouTuber」(愛知県 守りの会社の攻めの人事担当さん)
「採用で 保ち続けた ディスタンス 内定しても 距離は埋まらず」(愛知県 守りの会社の攻めの人事担当さん)

「不慣れなオンラインツールを活用しながら、なんとか採用活動を進めようとする採用担当者の必死な思いや、最後まで対面することなく内定を出すことへの不安感なども、多くの作品から垣間見ることができました」
 

■企業側に試される「対応力」 これからはリアルとオンラインのハイブリッドに

 紹介した入選作からもわかる通り、『就活川柳・短歌/採用川柳・短歌』で見えてきた2021年の就職・採用戦線の1番の特徴は「リアルな場での就職活動ができなくなったこと」。来年も、withコロナの採用活動が続くだろうが、久木田氏は「新型コロナの感染拡大状況を鑑みながら、オンラインと対面のメリットをうまく活用し、ハイブリッドな採用活動が展開されるのではないか」と予想する。その裏で、問われるのが企業の対応力だ。

「企業が学生をよく見ているのと同様に、学生も入社後に後悔することがないよう企業側の対応力をよく見ています。企業にとっては、コロナ禍において、不足の事態にどのように速やかに柔軟な対応ができるかが、学生からの支持を得られるか否かの分かれ道になるでしょう」(久木田氏)

 今年の学生部門の作品にも、それはズバリ詠まれている。

「コロナ禍で わかる企業の 対応力」(神奈川県 ぬんぴぃ)

 一方の採用担当者側も、自社がwithコロナ時代の新しい働き方に対応できるか否か、危機感がうかがえる。

「IT化 成功しないと上層部 やれば出来るよ 部下優秀」(東京都 ひがし)

 新型コロナ収束の見通しが立たない中、来年はどのような作品が就活生と採用担当者から寄せられるのか。両者の嘆きがこもった17文字から見えてくる、新時代の就活戦線の実態に注目したい。