多くのアーティストが活動形態の見直しを迫られた、コロナ禍。安定した人気を誇るコブクロでさえも状況は同じで、これまでの「ルーティーン」が崩壊し、がく然としたそうだ。とはいえ、決して悪いことばかりではない。ストリート出身だからこそ、「ここからは俺らの得意なサバイバル」と自信を見せる真意は? 不条理の乗り越え方、マイナスをプラスに変換する考え方を聞いた。

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■地球全体で闘う初めての経験、「ちょっと角度を変えるだけで正解が変わってしまう」

――ニューシングル「灯ル祈リ」(10月14日発売)はドラマ『DIVER-特殊潜入班-』(カンテレ・フジテレビ系)主題歌ですが、ドラマの内容とリンクしているだけじゃなく、コロナによりたくさんの不条理を味わった世の中へのメッセージとしても響く曲だと感じました。

【小渕健太郎】ドラマの脚本にも、世の中の条理と不条理が描かれていて。毒をもって毒を制しにいくダークヒーローの姿があるんですけど、今の世の中も同じだと思うんです。地球全体で何かと闘うという初めての経験の中で、ちょっと角度を変えるだけで正解が変わってしまうし、何が本当なのかもわらない。今まで、僕の中で正しさや美しさはずっと同じだったんですが、世の中がこうなったことで変わってきました。「こうじゃなきゃいけない」と思っていたものが、「こうでもいいよね?」って思えるようになったんです。光を灯すだけでは見えない、周りを暗くすればするほど小さな光が輝くような歌があってもいいんじゃないかと思って、今回の曲を作りました。

――勝ちか負けか、善か悪かのように明確に割り切れないこと自体をテーマにした歌は、今までなかったですよね。

【小渕健太郎】なかったです。今はみんなが間違えるし、みんなが落とし穴に落ちる。ニュースやネットを見ていても、数年前にはなかったような足の引っ張り合いや、誹謗中傷が飛び交っていますよね。でも、そういうドブ川のような部分があるからこそ、反対側にある美しさや正しさが保てるのかなと。全部が正しかったら、崩壊してしまうのかもしれない。明るい日々の中には、変なものに支えられてる部分もあるのかも…ということをイメージしました。

――なるほど。

【小渕健太郎】それに、今は頑張ろうと思っても、頑張らせてもらえない状況でもある。これは不条理としか言いようがないし、できるのは祈ることくらいですよね。でもそこには、たとえ無力だとしても「もうダメだ!」となった後の、最後の想いが込められてると思うんです。

【黒田俊介】僕らもライブができない、音楽ができないという不条理を味わいました。今の状況が歴史の1ページになって、いつかその体験を語るときのために「みんな家から出られへんかったんやで」と、今のうちに面白エピソードを貯めておくしかないのかなと(笑)。個人でできることなんて、祈ることしかないですから。

――自粛期間を経て、音楽をやれることになったときはどう感じました?

【小渕健太郎】二人でギター1本で歌った動画を配信することから始めたんですが、「あ、俺たちはこっち側(発信する側)やったんやな」と思うくらい新鮮でした。こんなに長いこと何もしない時間は、この20年なかったので。いろんな人がプライベート満載の動画を出していたし、僕らも色々やったんですけど…。僕らはやっぱり音楽をきちんと届けてこそ、この期間を生きてきた意味があるのかなと気が付きました。

――特にコブクロは路上で目の前の人に向けて歌うところから始まったわけですし、それができないとなったときの衝撃は大きかったでしょうね。

【小渕健太郎】めちゃくちゃ大きかったですね。でも、20年前の僕らはとにかく生活が大変で、音楽がなくなったら明日からの生活はないという状態で、生きるために音楽をやっていた。そう考えると、今もそのときの感覚に近いんですよ。「僕らは歌うことが仕事」ではなく、「生きるために音楽をやっている」という、あの頃の感覚があるんです。

【黒田俊介】あのときの、すべてが新しい刺激的な日が戻りつつあるな。コロナでお客さんを入れたライブはできなくなったけど、配信ならやれる。カメラを入れれば、どこでもステージになる。今までとは違い、できるようになったこともいっぱいあるんです。僕らはこれまで、レコーディングしてCD出してツアーを回るというルーティーンで来ましたけど、ほんの一瞬でなにもない野っ原に立たされた。そこで、何の選択肢もないのに「何する?」と聞かれている状態なんですよね。でもそれって、実はストリートのときとまったく同じ状態。「今日は何する?」、「どこで歌う?」とやってたときと一緒なんです。そうしたら、変な話ですけど、ここからはもう俺らの時代やなと思ったんです(笑)。

【小渕健太郎】ははははは! そうそう。

【黒田俊介】なぁ? こっからはコブクロが一番得意なサバイバルですよ。

【小渕健太郎】アリーナとかドームの規模もやらせてもらってますが、僕らは最小規模を知っているので、実はできることが山ほどあって。ギター1本と歌という形を選んだ運命として、変幻自在に時代にあわせて歌ってきたんじゃないかなと。ドームライブの後すぐに、ストリートで歌ったりしてましたしね。

【黒田俊介】コンテンツが変わっただけですよね。それがドームなのかストリートなのか、ライブ配信なのかテレビなのか。でも、僕ら二人のやっていることは一緒で、その時にあわせて選んできただけなんです。次はまた何か、この20年でやってこなかった新たな選択肢があるのかもしれないと思うと、楽しみなんですよね。

――そんなコブクロは、これまで音楽をやってきた中で不条理を感じたことは?

【小渕健太郎】そもそも、ストリートミュージシャン自体が不条理の中でやるものなのかなと。警備員に「まだ歌ってんのか!」ってギターケースの蓋を足で締められたり、ものすごい虐げられてきて…(笑)。あれは不条理だったかもしれない。

【黒田俊介】僕、オーディオマニアなんですよ。音楽の歴史はレコードから始まり、CDになり配信になって、今ではスマホで聴くものになった。どんどん音質が劣化していってるのに、みんなもろ手をあげて「便利になった!」って言うじゃないですか。便利なのはわかるけど、住宅事情は良くなっているはずなのに、どんどん音質が悪くなってるっていう。そんな現状なので、僕らがレコーディングするとき、「今こんなに大きなスタジオで生バンドにこだわるの、コブクロくらいですよ」と言われるんです。不条理ですよね(笑)。

【小渕健太郎】僕ら、京都の老舗和菓子屋さんみたいなことやってますから。見えないところで、蒸かした小豆を濾すところから、こだわりぬいて!(笑)。

【黒田俊介】そう、豆も煮てる。それを聴かれるのがスマホとなると、少し切ないですね。時代の流れだから、仕方ないんですけど。

【小渕健太郎】でも、コロナをきっかけに、また新しい時代になっていくんだと思います。コロナが収束したとしても、リモートのライブはきっと残るし、VRを使った仮想空間でライブをやる人も絶対に出てくる。ドアを開けたら東京ドームで、そのステージに大好きなアーティストがいる…、今の技術では可能なんですよね。

――そういった新しいコンテンツと、コブクロのオーソドックスなスタイルをどう共存させていくのかも楽しみですね。

【黒田俊介】そうですね。だから次の展開としては…老舗の和菓子店が作るタピオカですよね!

【小渕健太郎】ははははは! その通りです。タピオカもまたちょっと前の流行りやけどね(笑)。

【黒田俊介】老舗のこだわりと今の時代がいかにして繋がるか。配信ライブなどの新たなコンテンツに、どこまで突っ込んでいけるか、だと思います。

【小渕健太郎】その逆で、生で楽しんでもらえるコンサートの価値はグンと上がっていきますね。お客さんがいるだけで気持ちも上がるし、お客さん自身もそうでしょう。プレミア感が増した状況で次のステージに立つぶん、当たり前だったことが当たり前じゃない、よりいい方向に向かうと思ってます。

(文:川上きくえ)