“ガンプラ再生工場”を称するSHIGE(@GunplaRefine)さんは、「ジャンク品」を補修し、丁寧に仕上げ、作品として発表しているモデラー。そんな同氏が制作した『10年の差』は、ドムがジムを真っ二つにする衝撃的な作品。特に、溶断面の表現はSNSでも「(断面から)熱を感じる」などの多くの反響を呼んだ。「制作に苦労した」という溶断面へのこだわりとは?

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■欠品や壊れたガンプラでも、作品として生まれ変われる

――「ガンプラ再生工場」を名乗っておられますが、どういった意味で「再生工場」と付けられたのですか?

【SHIGE】物を大切にするという気持ちを込めて再生工場という名前を使ってます。キットは組立て済みの不要となった中古(ジャンクキット)をネットで購入してます。届いた時は、パーツの欠品や破損は当たり前。それらの修理を済ませて改造、塗装を施し、再度ガンプラに命を吹き込むことを楽しんでます。「うまく作れなかった、あるいは壊れてしまった」という理由で手放してしまいがちなプラモデルでも、「リタッチすればまだまだ作品として生まれ変わるよ」ということが、作品を通じて伝わったらと思っています。完成後に屋外の曇天を背景に撮影するのがクセになってますね。

――こうした作品を作るキッカケは?いつ頃から作り始めましたか?

【SHIGE】現在制作中の「HGオリジンシリーズ」以外はずっと中古を素材としています。ただ作品が増えて展示会に出展させていただくようになってからは、自身の完成品も再生するようになりました。単体で毎回同じ出展物だと観覧者の方々も飽きてしまうので、単体同士を組み合わせて、戦闘シーンを作って違う展示作品に見せる作戦です。

――ツイッターで発表されている作品のなかでも、ジムがドムに真っ二つにされる作品が衝撃的でした。

【SHIGE】「MGドム」「MG陸戦型ジム」を使用して完成させました。作品名は『10年の差』。劇中に出てきた「連邦とジオンの技術の差、10年」【※】という言葉がきっかけです。2体の脚部に貼ってある補修パーツのデザインの違いで、10年の差を表現しています。

【※】ジオン軍の技術が、連邦軍に比べ10年進んでいるということを表した言葉。ガンプラのCMで使われた「ジオン脅威(驚異)のメカニズム」とともに、ジオン軍の技術力の高さを伝える言葉として有名なフレーズ。

■作りたい物ではなく、「今ある物で何が出来る?」

――『10年の差』のアイデアはどんなときに思い浮かんだのですか?

【SHIGE】実は、作りたい物が先ではなく「今ある物で何が出来る?」ということが先でした。この頃、模型用のノコギリを購入してたんですが、使いとうて、使いとうて。試しにジムをブった切ったのが出発地点です(笑)。
 切り終えて、「んじゃ切ったのは誰や?」ってなった時に、在庫の中で「圧倒的な体格差のあるドムで行こう」と。そして「ドムの見た目からは想像出来ない程の躍動感をつけたい」と発展していきました。

――どのようなストーリーをイメージして制作されましたか?

【SHIGE】ジムのパイロットが散り際に、一年戦争の勝者は自分たちであることを悟る。でもドムのパイロットはそれを知るはずもなかった…という物哀しさを設定に含めてます。どっちが勝者でどっちが敗者か解らない作品を作るために、勝っているドムには(結末が哀しい)寒色系を、負けているジムには(未来が明るい)暖色系を使ってます。

――この作品において一番のこだわりは?

【SHIGE】2体のデザイン、体型が全く逆やったので「だったら全てを真逆にしよう」と思い、暖色系に対して寒色系、曲線に対して直線、動に対し静。特にドムは重モビルスーツでありながら軽やかに動く躍動感を、対してジムは静止画のような静けさを、と思い制作しました。

――本作制作で、一番苦労したのは?どんなところですか?

【SHIGE】完成品でポージングを考えたので、塗装が何度も剥げ、修正したことですね。これが一番きつかった。制作中の苦労で言うと、ジムの溶断面の塗装です。20回以上塗り重ねてますよ。実は8回目でメッチャええ感じに塗れたんですが「もっとええのん出来るはずや」って9回目にチャレンジしたら、それ以降8回目を超えることなく…。今でこそ笑い話ですが(笑)。技術的な部分では、面積の広い箇所ほど一回の塗装で厚ぼったく塗ります。完全に乾く前に次の色を乗せれば勝手にグラデーションになりました。

――制作後の反響はいかがでしたか?

【SHIGE】ツイッターに限った話で言うと、過去一番反響の多かった作品です。特に溶断面の塗装に関するツイートがすごかったですね。「やっぱり見てる側も必死な作業は解るんやなあ」って思いました。

――作品を拝見すると、本作も含め、歴戦の勇士のような、見事なウェザリングを施された作品が多いようお見受けしました。ご自身の作風として、このような作品が多いのはどういったきっかけだったのでしょうか?

【SHIGE】ガンプラに出戻る際、いろんな方の作例を観た時にカッチョ良く見えたからです。こだわってんのは1/100、1/144の汚れとして、あくまで自然に見えるように”美しく”汚すこと。汚すことでドシッとした重みと実在感が生まれると思ってます。

――ガンプラで表現する際、一番気を付けていることはどんなことですか?

【SHIGE】写真に撮った時に玩具っぽく見えないようにすることです。「マジで18mあるんちゃうん!?」って思ってもらえるような。

――ガンプラモデラーとしての信念は?

【SHIGE】展示会に出展するために模型を作ってるようなモデラーなので、展示会場でひとりでも多くの方の足を止めたいと思うし、観ていただきたい。そして作品をきっかけにたくさんの方々と交流させていただきたいと思ってます。