NHKで放送中の大河ドラマ『麒麟がくる』(毎週日曜 後8:00 総合ほか)に、主人公・明智十兵衛光秀(長谷川博己)の母、牧役で出演する歌手の石川さゆり(62)が、初めての大河ドラマの撮影を経験した感想や、共演する長谷川の印象などを語った。

【写真】第25回の主な場面写真

 1973年に歌手デビューして47年、「津軽海峡・冬景色」や「天城越え」などのヒット曲で知られ、第一線で歌い続けてきた石川は「声も音楽に聞こえてしまう」そう。そんな独特の感性で、初めて大河ドラマの撮影に参加し、「お芝居の中でも、ことばを交わすせりふの中にちゃんと音があるんだと気がつきました。いろんな声があり、そこには感情の中の間合いやテンションの音があることをたくさん感じさせていただいたので、今度はこれを音楽の世界に、自分のところに戻るときにちゃんと持って帰りたいなと思います」。

 本作では、光秀が幼少時に死んだ父の代わりに「武士としての心構え」を諭す厳しくも心優しき母を演じている。

 「息子を育てるという感覚とは違い、ちゃんと家を譲っていく、その家をしっかりと継いでいく、その長となる者を育てていきます。十兵衛はいつどこで命を取られるかという日々を過ごして大人になっていきますが、十兵衛が帰ってきたときに『おかえり!』と声をかけるせりふにも、『けがはしてないか、ちゃんと無事か』と、その一言に気持ちを込めながら演じています」

 27日放送の第25回では、信長(染谷将太)が長きにわたる斎藤龍興との戦に勝ち、ついに美濃を平定。かつての家臣・伝吾(徳重聡)から文が届き、光秀は母・牧(石川さゆり)を連れて、なつかしい美濃へと旅をする。そんな中、牧は「誇りを持って自分の思うがままに生きなさい。そうする中できっと自分のやるべきことが見えてくるはずです」と、光秀に話すシーンがある。

 「十兵衛が母を美濃に送り届けて帰るときに、きっと彼の頭の中では『誇りを持って生きていくんだ。自分には土岐源氏の血が流れているんだ。でも思うがままって何なんだろう』と、また葛藤しながら、自分の中で自分の行く末を作っていくのだろうと思います。そういう良いせりふがいっぱいありますね。十兵衛に母としての言葉を1つずつ置いているような、そんな気がしています」

 越前から美濃へ帰還する道中、牧は馬に乗って移動するが、石川の希望していたことでもあった。

 「私がポロリと『みんなが馬に乗るシーンがあって格好いいな、馬に乗りたいな』と言ったところ、馬に乗るシーンがありました。馬に乗りたいな、っていうことから、あのようなシーンを作っていただけたとしたら、『皆さん、愛をありがとう!』という気持ちです。十兵衛が馬を引いてくれて私は乗っているだけでしたので、怖くはありませんでした。馬がとてもかわいかったです」

 光秀役の長谷川の印象については「最初の十兵衛は若いので、とにかくがむしゃらに感情を思いっきりぶつけている息子でしたが、経験を積み、十兵衛は男としての心の葛藤を持ちながら今いるわけですよね。長谷川さんと『十兵衛の心の闇なのか悩みなのか分からないけど、そういうのを感じるようになってきたよね』と、ちょっと生意気ですが、お話ししたりしていました。この1年半くらいの間に、長谷川さんも1人の男の人生をお作りになっていて、見ていてとても楽しかったです」と話していた。

 ドラマも後半戦。初回からすでに20年の時が経っている。「最初は光安さん(西村まさ彦)と碁を打っているシーンから始まったのですが、そのとき初めて立て膝をしました。その囲碁をしているときのひざの高さを、少しずつひざを折っていき、小さくなっていくことで、時間の経過みたいなものも感じていただけたらいいなと思います」と、細部にまでこだわって演じてきたそう。そんな大河ドラマの撮影を経験して思うことがある。

 「歌い手は自分が真ん中に立って旗を振り、エネルギーをお客様に届けます。50年近くやってきましたが、今回は十兵衛が立ち上がっていくのを支える、見守る立場でしたので、歌い手では経験できない、人と人が心をつないでいき支えていくことの楽しさを感じました。歌も面白いですが、やはり“表現”はさまざまな角度でできますので、楽しいな、って。人を表現していくのは面白いですね」。

 『麒麟がくる』に期待していることを聞いた。

 「『麒麟がくる』は、今の時代とすごく重なると思います。みんなのやり場のない、『どうなっていくの、日本?』という思いや、『みんないつか幸せになりたいんだよ』という思いで、それをどうにか見つけよう、という思い…。あまりにも思いもしないことがいっぱいありますが、でも生きてるってそういうことなんだと改めて感じています。

 日曜日に大河ドラマを見て『なんだよ、負けてられないよ!』『そうだな、自分もちゃんと生きていかなきゃ』と、みんながそう思えるような結末があればいいなと思います。

 高度成長の時もあり、バブルがはじけた時があり、また自然の中に翻ろうされる日があり、いろんな時を経て今があるわけですから、戦国時代でも人はたくましく立ち上がったんだから、人はそれくらいたくましく、ある部分では愚かで、ある部分では喜びを感じながら、ここまで来たんだ、という気がします。

 きっと絶対に麒麟は来ますので、どうぞ楽しみにしていてください。でもいきなりは来ないんですよね。いろんな日があった先に、麒麟がくると思いますので、来るまでの課程、みなさんが作る人間模様、世の動き、そういうものを楽しんで、感じていただきながら、最後まで見届けていただきたいです。私も十兵衛の成長を、母としてちゃんと見守っていきたいと思います」