『ママ求人』で連載中の漫画『フツウって、しんどい。~母親らしさってなんですか?~』が、義母との関係に悩むママたちから共感を集めている。仕事と育児の両立を目指したいのに、40年専業主婦を務めてきた義母の「仕事なんかやめて子育てに専念すべき」という“見えない圧力”や過度なおせっかいに悩むママの物語だ。2人の目線を通して描かれる「母親らしさ」、「自分らしい生き方」とは何か。作者に聞いた。

■「仕事も楽しみたい」嫁と「家事に専念すべき」義母の対立

――「フツウ」「母親らしさ」をテーマにしようと思ったきっかけを教えてください。

【龍たまこさん】『ママ求人』の編集部から、「ママが働くこと」「女性と仕事」などをテーマにしてほしいと依頼をいただいたのがきっかけです。現代版の“嫁姑ストーリー”を軸にして、世代間の考え方の違いや、それぞれの社会的役割、生きづらさを描いた物語を作ってみたいと思いました。

――フィクションとのことですが、リアルなエピソードが続きます。参考にした資料などはありますか?

【龍さん】私の場合は、お義母さんとは良好な関係なんです(笑)。敷地内同居もしていないのですが、基本的に自分が小さいころに経験したことを反映しています。九州の男尊女卑の強い地域で育ったことも、かなり影響していると思います。

――男尊女卑とは具体的に?

【龍さん】たとえば、「学校では男女平等と言われるのに、なぜ家ではいつも、弟ではなく私ばっかりお手伝いをさせられるの?」、「お母さんはなんで、いつも最初に起きて最後に寝るの?」など、小さい頃から無意識にジェンダーについて考えてきました。

――読者からは、どんな反響がありましたか?

【龍さん】主人公のあかりと同じ30代前半のママ向けに発信しているので、やはりあかりに共感する声が多く寄せられますね。義母は、親切だけど過干渉という設定なのですが、過干渉へのアレルギーはかなり強いと感じています。自分たちの領域に踏み込んでこられるのは嫌なんだけど、お義母さんはまったく悪気がないし、敷地内同居という関係上ハッキリと言えない…。そのモヤモヤを抱えている人は多いんだなという印象でした。

■「わたしたちの領域に踏み込まないで」義母が描く“理想の母親像”の呪い

――共働き夫婦が増えていますが、嫁には家事に専念してほしいと願う義母も多いようです。

【龍さん】専業主婦で子育てに専念して“成功した”と考えているお義母さんが、嫁に同じ体験を押しつけたくなる気持ちもわかります。ですが、結婚は個人同士がするものです。その家の姓になったからといって、その家の考え方に染まらなければならないわけではありません。私の考えとしては、女性が家事に専念するも仕事するも、どちらでもいい。ただ、家族には、それぞれの考えを尊重できる関係性であってほしいです。

――義母については、どのような思いを抱いて描かれていますか?

【龍さん】あかりの義母世代は、「我慢をする」「良い母親である」ことが美徳とされてきたので、「自分らしく生きる」とか「自由に生きる」ということを、きちんと考えてこなかった人が多いと思うんです。そう考えると、お義母さんにもどうしようもない事情があったんだなと思えます。

――育児と家事に追われていると、自分の時間を忘れがちです。

【龍さん】子育て中は、自分の時間なんてほとんど持てませんからね。子育てが落ち着いた頃には、「私は何が好きだったっけ? 何がしたかったっけ?」と思うケースも多いでしょう。その結果、子どもに過度に依存してしまったり、干渉をやめられなかったり、上手に子離れすることが難しくなって、子どもの人生を邪魔してしまうことになる。育児中も、母親が自分らしく生きることや、好きなことを手放さずに生きていくことが大事なのだと思いますね。

【漫画】「専業主婦でよかったと思ってるわよ」価値観を押し付ける義母とのモヤモヤエピソード

――少し前に、「ポテサラ論争」や「ギョーザは手抜き論争」が話題になりました。先生はどう感じられましたか?

【龍さん】もう、このテの「母親ならちゃんとしろ」的な話題が出るたびに「ほっといてくれや」って思ってます(笑)。ポテサラを自分で作るもお惣菜で買うも、まったく個人の自由なのに、「他人が口を出してもいい」「正しいことを教えてやらなければ」と思っている層がいて、それこそが“理想の母親像”の呪いだと思います。

■理想の家庭は「夫婦で人生を楽しみ、その姿を子どもに見せられること」

――タイトルにある「フツウらしさ」について、どう考えていますか?

【龍さん】普通って本当に曖昧で、国によっても時代や環境によっても変わります。私自身は、どうせ曖昧に変化していくものであれば、いっそ普通であることにこだわるのは止めてしまった方が、幸せに生きられると考えています。

――義両親とは、どう付き合えばいいのでしょうか。

【龍さん】「いい嫁であろう」とすることを、できるだけ早く放棄するのがいいと思います。たとえば、長期休みの帰省など、お嫁さんまで一緒に帰る必要ある? って私は思います。義両親は、孫の顔さえ見られれば満足なんだし、夫と子どもだけ帰ればいい。私も一緒に訪問するのは3回に1回くらい。いい嫁でないことに時々罪悪感も持ちますが、それでも関係は良好と私は勝手に思っています(笑)。

――では、「母親らしさ」についてはいかがですか?

【龍さん】良妻賢母、ニコニコしていて子ども思い、料理好き、きれい好きというようなイメージを持っている人が多いかもしれません。でも、母親らしさは一人ひとり違うものだから、自分なりのやり方で子どもに愛情を伝えていけばいいと思います。

――先生が理想とする家庭のあり方を教えてください。

【龍さん】夫も妻もそれぞれ経済的に自立して、どちらかがピンチの時は支えあうことができて、家事育児の分担についてもフラットに話し合い、適度に外部に発注することもできる。どちらかが犠牲になることなく、夫婦で人生を楽しみ、その姿を子どもに見せられる家庭が理想ですね。私がそんな家庭を築けているのか? と問われると、答えはノーなのですが(笑)。

――作品では、「男性らしさとは」「父親らしさとは」にも触れています。

【龍さん】様々な世代や立場の人たちの「フツウ」とは何か? を問いかけていますので、ママ世代だけでなく、ぜひ、男性や義両親世代の方にも読んでもらえたらなと思います。

――日々、奮闘している世のママたちにメッセージをお願いします。

【龍さん】私は子どもの頃、とにかく母の笑顔が見たかったことを覚えています。共働きなのに家事育児を一手に引き受け、いつも疲れていて、あまり幸せそうに見えなくて、私もいつかこんなふうにならなくてはいけないのだと思うと怖かった。だからこそ、お母さんたちには人生を楽しんで、笑って暮らしていてほしい。お母さんが自分の人生を楽しんでいる姿は、次世代の希望になると思います。