“不倫したくなくなるマンガ”と注目の『サレタガワのブルー』。妻に不倫された夫の逆襲劇が描かれ、集英社の女性向けアプリ『マンガMee』にて連載中。同アプリオリジナル作品では、1年以上連続でランキング1位を独走中だ。主人公の暢は、年上妻の藍子にベタ惚れ。在宅ワークのかたわら家事を完璧にこなす、温厚なイケメン夫だ。しかし藍子は残業と称して、会社の上司・和正と逢瀬を重ねていた。やがてそれは和正の妻である主婦の梢も知るところとなり…。W不倫の代償の重さをえぐる本作の著者に、「不倫を描く意味」について聞いた。

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■裸体の画像をLINEでやりとりは“不倫あるある”、生々しさ描く

──不倫された夫の目線は新鮮です。

【セモトちかさん】今や3組に1組が離婚する時代ですが、妻の不倫が原因のケースも少なくないんですよね。実は主人公の暢くんは、私の知人男性がモデルなんです。

──奥さまが不倫していたんですね…。では物語には、彼の実体験も描かれているのですか?

【セモトさん】かなり参考にさせてもらっています。たとえば自撮りした裸体の画像をLINEでやりとりしていたとか…。不倫された方に取材をしてみると、そんなやりとりは“あるある”らしいですよ。

──そもそも不倫ネタを描こうと思った動機は?

【セモトさん】よくある映画やドラマなどでは、不倫する側が主人公の創作物が多いと思ったんです。私も大ファンなのですが、『昼顔』もそうですよね。そちらが主観ですと、主人公に感情移入するように美しく描かれていますし、それはそれでエンターテインメントとしてはとても楽しめるのですが、現実で不倫する人たちはきっと、少なからず影響を受けて頭の中がロマンティックになってしまうのかな、などと思いながら観ていました。

──不倫に憧れる“昼顔妻”が社会現象になったこともありましたね。

【セモトさん】だけど、現実の不倫はパートナーを傷つけるだけでなく、社会的責任や金銭面でも重い代償が伴いますよね。意外とリアルに既婚者と恋をしている方は、そのことを把握していない人も多いので、ここで濃いエピソードを一発おみまいして、不倫をしたらどんな結末が訪れるのか、読者さんに疑似体験してもらおうと思ったんです(笑)。そういうリアルで美しくない不倫の物語もあっていいんじゃないかなと。

■「離婚して一緒に…」「家庭を壊す気はない」、不倫する男女の差

──読者の反響で男女差はありますか?

【セモトさん】男性は怯えながら読んでくださっているようですね。不倫をうまく隠し通す妻に「こんな女性がリアルにいたらコワい」みたいな。だけど、少なからず既婚者でありながら平気で女性を口説く「和正」の要素を持ってる男性もいるはずなんですけどね(苦笑)。

──読者コメントでは、不倫した妻へのバッシングが多いです。

【セモトさん】やはり、不倫妻を攻撃する声は多いです。ただ私としては、不倫ではありますが、作中の彼女は本気で上司の和正を愛してしまっている、という描き方をしてるんですよ。そのためにはいくらでも腹黒くなれると…。個人的には、妻子がいながらいろんな女性に手を出す和正が、この作品で一番の「悪」だと思っています。

──そこにも不倫に対するリアルな男女差が描かれているのですね。

【セモトさん】取材して感じたのは、女性は離婚してでも相手と一緒になりたいけど、男性は家庭を壊す気はないというケースが多いようですね。された側の男女差でいうと、結婚相手に不倫された場合、男性はとにかく落ち込むけれど、女性は一緒にいるのも気持ち悪いからさっさと離婚に向けて動き出すケースが多いとか。

──本作では、離婚に向けて自立する専業主婦・梢の奮闘も描かれます。

【セモト先生】そのせいか梢を応援する声は多いんですけど、不倫されてもなお、妻の藍子さんを心配する主人公の暢には、「女々しい、さっさと制裁を加えてほしい」という方が多くて。私としては、不倫のリアルな実態を描いているつもりなんですけど、世論は男の暢には厳しいなと思いますね。彼もいろんな葛藤を抱えながら、なんとか前向きに頑張っているんですけどね(笑)。

■不倫を「美しく描く」ことはしない、とことんこだわった“リアル”

──本作で描かれているように、社内不倫が会社にリークされることはよくあるんでしょうか。

【セモトさん】会社に告発したというエピソードは、よく聞きますね。ただ、それはあまり効果がないようです。取材をしてみても、会社は基本的に民事不介入ですから。仕事をキチンとしていればプライべートには首を突っ込まないんですね。コメントでも「なんでクビにならないの?」「社会的に抹殺されろ」という声が多いんですが、残念ながらそれがリアルなようです。

──その一方で、莫大な慰謝料といった代償も伴います。

【セモトさん】慰謝料の相場や法的な面などについても、弁護士さんに相談しながら描いています。とくに不倫をしている女性には「この気持ち、止められないの」という方が多いようですが、まあそれぞれの事情もあるし、それはそれで人の気持ちなので仕方ないとしても、リアルな面で代償は重いということは伝えたいですね。

──不倫を描くにあたって留意しているポイントは?

【セモトさん】不倫された側の悲しみが本作のテーマなので、不倫している2人の行為や表情が美しく見えないように気をつけています。愛を貫く2人が美しく描かれている不倫ものは、わりと世の中に多いと思います。だけど、現実には慰謝料などの重い代償が待ってるわけですから。この作品では、そうした点をリアルに描こうと決めていました。

──とことんリアルにこだわりますね。

【セモトさん】はい。たまに「サレブル(本作)を読んで、怖くなって不倫をやめました」というご感想をいただいたりすると、「よっしゃ、社会貢献した」と思ったりしますね(笑)。この作品に関しては、された側の味方でありたいです。

──連載は大きな山場を迎えています。

【セモトさん】それぞれが背負う苦しみをまだまだ掘り下げたいと考えています。「藍子への制裁が足りない」という読者さんも多いので、そこも楽しみにしていただきつつ…。担当編集さんとは、デビュー当時から「いつか私たちのマンガを実写ドラマ化したい」という夢を描いていて、本作も連載前から配役イメージをビシッと決めてスタートしました。ちなみに私は、千鳥のノブさんの大ファンで、主人公の名前もノブさんからいただいたんです。いつかノブさんが読んでくれて、「クセが強い漫画じゃ!」って突っ込んでくれたらうれしい、なんて密かに思ってます(笑)
(文/児玉澄子)