おおのこうすけ著のコメディ漫画『極主夫道』(新潮社)が、玉木宏主演で10月より日本テレビ系でドラマ化される。人気コミックだけに映像化の第一報は大きな話題を集めたが、振り返れば極道の世界とエンタメは相性がよく、ドラマや映画、漫画化されることが多い。エンタメと相反する世界ともいえる極道が、定番&鉄板エンタメコンテンツとして生き続ける理由とは?

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■高倉健に菅原文太…生々しさや裏切り、哀しさを描いた60~80年代

 極道系コンテンツのルーツである「任侠」「博徒」ものは、戦前から大衆演芸などの題材として人気があったが(国定忠治、清水次郎長など)、戦後1960年代に一世を風靡したのは高倉健主演の『昭和残侠伝』や『網走番外地』シリーズに代表される任侠・ヤクザ映画だろう。

 当時の男性群は、骨太で硬派な男気溢れる登場人物たちの姿に共感し、憧れ、感情移入した。映画が描く男の美学の物語は、一般人が普段見ることも知ることもできない別世界であることも人気の理由だった。1970年代に入ると、菅原文太主演『仁義なき戦い』(1973年~)など、それまでの任侠映画とは一線を画す“実録もの”が人気に。実際の暴力団同士の抗争や発砲事件に基づき、裏社会に生きる男たちの生き様や葛藤をリアルに描いて人気を博すのである。

■女性視点の極道作品増 数々の流行語も登場しエンタメ色濃く

 こうした“おとこ”(男・漢・侠)たちの極道映画の世界に風穴を開けたのは、1982年に公開された故・夏目雅子さん主演『鬼龍院花子の生涯』だ。夏目さんは初ヌードまで披露する迫真の演技を見せ、「なめたらいかんぜよ!」のセリフは流行語にもなった。

 以後、極道の女性の“決めゼリフ”はキラーコンテンツとなり、岩下志麻主演『極道の妻たち』シリーズ(1986年~)の「女の惚れた腫れたはタマのとりあいや、あんたら腹くくってモノ言いや!」へと続き、「極道×女」は新潮流となっていく。

 また同時に、薬師丸ひろ子主演『セーラー服と機関銃』(1981年)では、普通の女子高生が遠縁の弱小暴力団の四代目となる…というストーリーが大いにウケ、配給収入邦画1位となる大ヒットになった。機関銃を撃ちまくりながら主人公が吐く「カ・イ・カ・ン」というセリフも流行語となり、1982年には原田知世、2006年には長澤まさみ主演でTVドラマ化され、2016年には橋本環奈で再映画化されるなど、「女子高生×アイドル×組長」は時代を超える定番コンテンツとなるのである。

■90年代以降はコメディ路線のアプローチへ 極道賛美から時代錯誤感をコメディへ昇華

 しかし1980年代後半になると「極道の男たち」の復権がはじまる。その先駆けとなったのは長渕剛主演のドラマ『とんぼ』(TBS系/1988年)だろう。トレンディドラマ全盛期のさなか真っ向からケンカを売り、通称“長渕キック”に代表される暴力&強烈すぎるラストシーンは大きな話題となり、長渕はその後も同様の映画・ドラマ作品に主演する。

 以降、1990年代に入って極道コンテンツは多様化し、『静かなるドン』『ミナミの帝王』などの劇画がドラマ化・Vシネマ化されたり、同じマンガ原作の『ごくせん』は仲間由紀恵主演で2002年にドラマシリーズ化され、社会現象にもなった。

 また韓国映画が原作で、ヤクザの組長を父に持つ「関東鋭牙(えいげ)会」の若頭・榊真喜男(長瀬智也)が高校に通うという『マイ ボス マイヒーロー』(日本テレビ系)も人気になるなど、コメディ要素を多分に加えることでエンタメ色を強くし、視聴者の男女区別なく楽しめる極道作品が多く作られていった。

 そして現在、第3回フラウマンガ大賞を受賞したボーイズラブ作品『囀(さえず)る鳥は羽ばたかない』が今年の2月に映画化されると、エグい・グロいヤクザ世界もBL要素が加われば儚いラブストーリーになるという、極道の汎用性の高さを証明。さらに冒頭で述べた『極主夫道』では、元極道にエプロンというコスプレ要素を加味するという広がりを見せたのである。

 基本的に極道にあるのは“怖い”“犯罪”といった反社会的イメージ。しかし、映像の世界で描かれてきた“仁義”や“人情”などの要素が確立していることで、「ヤクザなのにちょっとかわいい」的なギャップを活かすなど、時代に合わせてパロディ化・ポップ化しやすくなっているともいえる。

 実際、60年代的な極道をストレートに美化する作品は今の時代、適当とはいえず、さまざまなアレンジを施し反社会性を中和していく必要がある。しかし、一般人にはいまだ知られざる「最後のファンタジーの聖域」ともいえるだけに、今後も“極道もの”は時代時代の意匠をほどこされながら、経年劣化しないコンテンツとして生き続けていくのではないだろうか。