ガンプラモデラーというと、「スミ入れ」「スジボリ」「合わせ目消し」「塗装」「改造」と“本格派”を示すことが多いが、そうではない楽しみ方をしているモデラーもいる。石澤ぐり(@AgUJ85zs3Q4h8M5)さんが表現しているのは、こうした“カッコいいガンプラ”ではなく、見た人がクスッとできるようなほのぼのとした世界観。4コマ漫画風のストーリーに仕上げ、ツイッターとブログで発信し続けている。なぜ、このような作品を制作し投稿するようになったのか、話を聞いた。

【ガンプラ写真】リアルにこんな親父いそう…扇風機に氷水でだらしなく涼んでいる“ガンダム親父”ほか石澤ぐりコレクション

■ガンプラと動物フィギュアと一緒に撮影したところからスタート

――ガンプラを始められたのはいつくらいですか?

【石澤ぐり】本格的に始めたという意味ではガンプラ歴は1年半程度です。子どもの頃も作ってはいましたが10体もあるかないか程度で説明書通りに組んでそれっきりでした。この1年半で50体ぐらい制作しました。

ーーガンプラ作りを再開され、ツイッターで作品を発表するようになった運命的なキットがあれば教えてください。

【石澤ぐり】今やっている事のきっかけになったキットと言えば「HGUC 1/144 MSA-003 ネモ(ユニコーンデザートカラーVer.)」ですね。昔作った旧キットに比べて可動域がグッと広がっていて、さまざまなポーズを付けられる事に驚いた記憶があります。

――そこから、ツイッターで発表されている4コマ漫画風の作品につながっていくのですね。このシリーズは、ガンダムが居間で寛ぐ姿など、カッコイイガンダムではなく、実におちゃめで可愛いらしい、人間味あふれるガンダムが描かれています。いつ頃からスタートしたのでしょうか?

【石澤ぐり】このシリーズは、ガンプラを再開してすぐ、ツイッターをやってたので「せっかくだから写真撮ってアップしてみよう」くらいの軽い気持ちで始めました。スタート時は先に申し上げた通り、ネモ、ゴッグやアッガイ、ギャンも作ったのでそれらを使用していました。最初はガンダムを作ってなかったんです…なぜか(笑)。

――投稿の中ではガンダムが擬人化されていて、ありふれた日常風景が描かれていますが、このシリーズを思いついたのはきっかけ何だったのでしょうか?

【石澤ぐり】きっかけは動物フィギュアです。最初はガンプラだけで写真を撮っていたのですが、ウチにあった動物フィギュアを見ていたら「これも一緒に撮ってみるか」と思い立ち、撮っているうちになんとなくストーリーが浮かんできたんですよ。ギャンが動物に襲い掛かろうとしているところを、ネモが阻止しようとします。ですがサーベルを目前に突き付けられたギャンに服従のポーズをとってしまうネモ…といった具合に物語が膨らんでいきました。それが4コマの最初の作品です。

■“人間っぽさ”を可能な限り入れて撮影

――このシリーズを制作する際に1番こだわっているところを教えていただけますか。

【石澤ぐり】パッと見たときに「何が起こっているのか」「何をしているのか」を、見た人が瞬時に分かるように撮ることを意識しています。何体も詰め込まないように、背景もシンプルに、小物も置きすぎないようになどは気をつけていますね。

――確かに一枚画でインパクトがあり、何が起きているのかわかりやすいですね。ツイッターに添えられる言葉(タイトル)にもこだわりがあるのですか?

【石澤ぐり】作品の中ではツッコまないようにしてます。分かりやすい例でいうと、ガンダムがバイオリンをギターのように構えてる写真を一枚だけ載せて、タイトルは「このギター何か弾きにくい」。もちろん周りのキャラクターが「それギターと違う!」みたいなツッコミもできるんですが、それだとそこで止まっちゃうんですよね。
 見てる側の人がその写真を見て「いやいやそれバイオリンだから!」とか「そりゃ弾きにくいよ!」などと感想を抱く方が見てて面白いのではないかと。なのでよほど必要でない限りツッコミは見てる側の人ができるようにと思って撮ってます。
 それとこだわりで言うともう一つ、ガンプラではありますが、暴力的な表現は控えていますね。

――「ガンダム」でありながら。

【石澤ぐり】はい。といっても、自分が平和主義ということを主張しているわけではありません。でも以前にそういう場面を撮った時に、なんとなく自分の中でシックリこない感覚がありました。撮影していて嫌な気分になってしまったんです。なので、それ以降は極力そういった表現を避けるようにしています。

――なるほど。確かに、“戦うモビルスーツ”というより、日常にいても違和感のない“人間らしさ”が随所に盛り込まれています。

【石澤ぐり】そうなんです。例えばジョッキで何か飲んだ後に口を拭うとか、立ち上がる前にヒザに手を置いて中腰の態勢になるとか、それを入れると「人間っぽさ」が増すんですよね。まあ4コマだとなかなかそこまで入れられない場合もありますけど入れられる限りは入れるようにしてます。

――人間らしいポーズも意識されているんですね。

【石澤ぐり】イメージ通りのポーズがなかなか取れなかったり、取れたとしてもそこに小物をもたせると腕が「クタ~」と下がっていったり。金属製の小物を持たせようとした時は本当に何回も試行錯誤しました。あといろいろなポーズを取ることができるガンプラですが、あぐらなどはほぼ無理です。座るポーズもできないキットも割とあるので本当は座らせたい場面でも立たせたりする事は結構あります。

■信念は「頑張りすぎず楽しむこと」

――さまざまな苦労を経て4コマをあげていることが分かりましたが、公開後の反響はいかがでしたか?

【石澤ぐり】概ね好意的に見ていただいているようなのでありがたいです。リプライでも「面白い」「ほのぼのする」「癒やされる」などと言っていただけたり。そういった感想は本当に嬉しいですね。小学生のお嬢さんを育てている方に「娘もいつも見ていて楽しみにしています」と言われた事もありました。特別、対象年齢は意識してなかったのですが「お子さんにも楽しんでもらえている」ことを知った時は、もちろんうれしい気持ちもあるんですが、どこか不思議さもありました。

――継続して作り続ける大変さはありませんか? モチベーションはどのようなところから?

【石澤ぐり】そもそも、あまり大変だと感じた事はないですねぇ…。楽しいんですよ(笑)。「見てもらえている」のはモチベーションにつながっていると思います。やはりSNSはダイレクトに反響を感じることができますし。ただそればかりにとらわれないようには気をつけています。反響ばかりを意識するようになると、きっと作品も駄目になっていくと思うので。

――リアルさを追求するモデラーさんとは少し違った形ですが、ガンダム愛にあふれた作品だと思います。「ガンプラ」を制作するうえで一番気を付けていることは何ですか?

【石澤ぐり】ガンプラ制作で気を付けている事は「頑張りすぎない」ことですね。ガンプラを本格的に始めた当初は「スミ入れ」から始まって「スジボリ」や「合わせ目消し」「塗装」や「改造」も!と意気込んでいたんですが、これがまた疲れるんです(笑)。一体作るのにどれだけ時間がかかるんだ? と。勿論それが醍醐味だと仰るモデラーさんも多いと思いますけど、ちょっと私の性には合わなかった。なので今では割り切って、スミ入れと部分塗装、デカール貼り程度に留めています。信念は、多くの方もそうであると思いますがやはり「楽しむ」ということ。なんだかんだ趣味ですから、やっぱり楽しんでやりたいと思っています。

文/中山洋平