「Nizi Project」特集でも話題になった朝の情報番組『スッキリ』(日本テレビ系)。最近では「#スッキリバンドやろうぜ」企画などのオリジナルコンテンツを発信したり、俳優の武田真治が番宣で出演した際、MCの加藤浩次が延々と結婚をイジり続けて話題になるなど、バラエティ番組的な側面も際立っている。新型コロナウイルスの感染拡大等、重いニュースとのギャップに戸惑う声もあるが、多くの視聴者に新たな“情報番組”として受け入れられているようだ。SNSやネットニュースなど情報収集の手段が多様化し、他番組・他メディアとの差別化が求められる中、『スッキリ』が確立しようとしている“情報番組”の姿とは?

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■MCがバンド!? 『スッキリ』キャストの汎用性

 冒頭で触れた「#スッキリバンドやろうぜ」は、自粛期間中の企画として5月にギター/加藤浩次・森圭介アナ、ドラム/近藤春菜、ベース/水卜麻美アナのレギュラーメンバー4人で結成。森アナ以外は担当する楽器に初めて触るというレベルで、課題曲はエレファントカシマシの名曲『悲しみの果て』に決まったが、ボーカル兼ギター担当予定の加藤は「そこまでの余裕がない」とギター専任となり、ボーカルは番組出演者からオーディションで選ばれた月曜コメンテーターの俳優・小澤征悦に。バンド演奏を披露する放送では、見事に完奏し、メンバーは「カッコいい!」「すごい!」と大興奮。水卜アナ、森アナにいたっては号泣していた。SNSでは「#スッキリバンドやろうぜ」がTwitterでトレンド入りし、「私も泣いた」「バンド再結成見たい」といった声があふれるなど、まさに“大団円”を迎えたのである。

 さらに、4月には加藤が豚骨ラーメンを作ったり、南海キャンディーズの山里亮太がデコレーションケーキを作ったりなどお家で料理を作る「一度作ってみたかった!」という企画も行った。最近では、加藤、近藤、水卜が「豪華!夏休みスペシャルウィーク」としてそれぞれゲストとのロケ企画が放送されるなど、様々な企画にスッキリメンバーが挑むことが多くなり、スッキリキャストの汎用性の高さがうかがえる。

■組み込まれ始めたバラエティ要素 出演者の変遷からみられる『スッキリ』の意図

 そもそも、『スッキリ』がスタートした2006年の段階では、朝のニュース・情報番組で芸人がMCを務めることは極めて珍しいことだった。今では『ノンストップ!』(フジテレビ系/午前9:50~)のバナナマン・設楽統や、過去では同時間帯の『PON!』(日本テレビ系)のますだおかだ・岡田圭右、ビビる大木などがいるが、朝8時台となると『スッキリ』の加藤が先駆者となる。

 当番組の放送開始時(2006年)は、サブMCとして前番組『ザ!情報ツウ』のレギュラーコメンテーターだったテリー伊藤が出演。何かと問題発言の多いことがウリ(!?)でもあったテリー伊藤を、加藤がフォローしていく形で番組が進行。テリー伊藤降板後は上重聡アナと岩本乃蒼アナがサブMCを務め、上重アナが1年で降板すると、2016年から芸人の近藤春菜を起用。これまでにない「芸人2人の総合司会」という体制が確立し、加藤による春菜イジりからツッコミ…というバラエティ的掛け合いが見られるようになった。

 さらに2017年からは岩本アナに代わって、それまで報道のイメージがない水卜アナが加わり、バラエティ要素が加速して前面に出はじめたのである。2018年に出演した俳優の吉沢亮が「バラエティは出慣れていなくて緊張した」とコメントすると、加藤が「情報番組だから!」とすかさず突っ込むという場面もあった。今の加藤、近藤、水卜の3人体制に落ち着いてから3年経つが、『スッキリ』は視聴率を7~9%に伸ばして推移。同時間帯では3年連続民放首位を獲得している『モーニングショー』(テレビ朝日系)に迫る勢いを見せ、これまで競っていた『とくダネ!』(フジテレビ系)の平均6%を大きく引き離す結果となっている。

■報道番組にはできない、“情報番組”としての価値とは?

 こうしてみると、バラエティ色が組み込まれた情報番組が、視聴者にも受け入れられていることがわかるが、それは決して同番組のバラエティ的側面だけが受け入れられているわけではない。情報番組としての価値をしっかりと提示しつつ、視聴者に笑顔や元気を与える企画を展開させていることが『スッキリ』が受け入れられている理由である。

 そもそも情報番組の価値とは感情の入ったMCの“肉声”にある。報道番組とは異なり、事実だけでなく、MCの感情と主観が入り混じった、独自のコメントがより求められる傾向にある。吉本興業の芸人が闇営業を行っていたとして謝罪会見を行った際には、加藤が感情をむき出しにした発言に大きな反響が巻き起こった。賛同だけでなく、批判的な意見も多かったが、それこそが情報番組の価値と言える。『サンデージャポン』(TBS系)では爆笑問題の太田光が“川崎・20人殺傷事件”について自分の過去から死を考えている人に向けてのメッセージが大きな反響を集め、『ワイドナショー』(フジテレビ系)ではダウンタウンの松本人志が事件の容疑者に対して「不良品」という言葉を用いて話題を呼んだ。賛否はどうあれ、これらはMCによる“情報番組”にしかできないことである。視聴者にMC独自の発言や考え方を通して、報道された事象ついて考えさせる場となることが、情報番組の定義と言えるのではないだろうか。

 かつて“狂犬”と呼ばれた加藤浩次が、衝撃のMC就任を果たして早14年。当初は加藤本人、「始まったとき、どうせ終わるだろ。俺みたいなもんがやって。すぐに終わって、『めちゃイケ』とかでイジられればいいと思ってた」と告白している。しかし相方・山本圭壱の不祥事に対し、番組開始直後の号泣謝罪を経て心境に変化があったようで、熱心に勉強を始めるようになったという。ここ数年、MCとして一本筋を通し、説得力のあるコメントが話題になることが多いのは、情報番組に対して真摯に向き合うようになった結果ではないだろうか。そして近年、近藤春菜と水卜アナのバラエティ要素が加わり、“芸人”加藤の持ち味もうまく引き出され、現在の報道×バラエティのほどよい“共存”が可能となったのだ。

 何かと悲観的になるニュースが多い昨今、『スッキリ』は各コメンテーターとともに論評し、情報番組の定義を押さえながらも、コーナーが替われば独自コンテンツで笑顔になれるエンタメもあり、今日一日をがんばる元気を与えてくれる。そうした部分が、新しい朝の情報番組として視聴者に受け入れられている理由ではなないだろうか。