9月1日で最終回を迎える、多部未華子主演ドラマ『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)。視聴率が好調なことはもちろん、大森南朋演じる家政夫のナギサさんに癒される視聴者も多く、早くも“わたナギ”ロスが懸念されている。これまで、80年代にスタートした『家政婦は見た!』(テレビ朝日系)をはじめ、家政婦・家政夫をテーマにした作品は数多いが、ドラマでの描かれ方を“本職”はどう見ているのだろうか? 時には弊害もあったという家政婦ドラマについて、公益社団法人 日本看護家政紹介事業協会の担当者に話を聞いた。

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■放送に反響、『わたナギ』でようやく描かれた“普通の家政婦”

 多部未華子主演のドラマ『私の家政夫ナギサさん』は、25日放送の第8話で世帯平均視聴率16.7%を獲得(関東地区世帯・ビデオリサーチ調べ)。「ドラマ満足度ランキング」(オリコン)でも第3位と好調だ。このドラマは漫画が原作で、製薬会社のMR(医療情報担当者)として働く28歳のキャリアウーマン(多部)が、おじさん家政夫(大森南朋)を雇うことから巻き起こるハートフルラブコメディ。登場する家政夫のナギサは、仕事に猛進するあまり家事ができないメイの身の回りの世話をしたり、ときには仕事やプライベートの悩み相談に乗るなど彼女に寄り添うこともある。こうした描き方を、本職の家政士はどう見ているのか?

――ドラマを観た人からの反響はいかがでしょうか?

 「当協会で『家政士検定』の公式テキストをドラマの小道具として提供したのですが、その際には放送後、サイトに300件近いアクセスがありました。家政婦サービスについての問い合わせよりも、検定や家政士の仕事に興味を持たれた方が多かったようです。やはりテレビの影響力はすごいですね。数年前に情報番組で取り上げられたときもそうでしたが、サービス自体への問い合わせは、放送から少し経ってから増える傾向があります。これからもっと多くなるかもしれません」

――本作では家政夫・ナギサさんの仕事も多く描かれていますが、本職の方はどんな感想を持たれたのでしょうか?

 「誇張したものではないですし、内容がまともだと思いました(笑)。家政婦をテーマにしたドラマの中には、これまであまり良いイメージで描かれていない作品もありましたが、今回はようやく、普通に描かれているなというイメージです」

――これまでには、『家政婦は見た!』(市原悦子主演/1983~2008年放送 テレビ朝日系)や『家政婦のミタ』(松嶋菜々子主演/2011年放送 日本テレビ系)など、人気作も多いですね。

 「実は『家政婦は見た!』の放送時、業界団体として制作会社に抗議したこともあるんです。お話としては面白いし、素晴らしいドラマだとは思いますが、”個人情報”を扱う点で問題がありました。このドラマの放送が始まった当初は、まだ個人情報保護法などの法律が整っていませんでしたから、『知られたくないようなことまで覗き見したり、同僚に情報を話したりするの?』と不安になられる方もいらっしゃいました。

 『家政婦のミタ』のときは、主人公が“スーパーウルトラ家政婦”だったので、『あんな完璧な家政婦さんがいるなら紹介してほしい』という問い合わせがありました。でも、ドラマですから当然誇張しているわけで、そこまで求められると困ってしまいますよね(笑)。掃除が得意、料理が得意など、得意分野を持っている方はいらっしゃいますが、さすがにああいう家政婦は見たことがないです。

 『きょうの猫村さん』(2020年放送。松重豊主演)もありましたが、これは漫画も面白く拝見しました。核家族化で人間間の関係が希薄な時代に、親に叱られたことがないような子が猫村さんに親身になって叱ってもらうというのが、若い人の感性に合っていたのかなと思います」

■今では利用者も多様化、サービスをお金で買う時代に

――ドラマでの描かれ方によって、家政婦のイメージが変わってきた部分もありますか?

 「ドラマもそうですが、2000年に介護保険制度が創設されたことも大きいと思います。この制度ができる前や、できた直後は、介護認定を受けても、世間体を気にして第三者に頼むことをためらう人が多く、浸透するまでに時間がかかりました。でも、あれから20年ほどたって、今は家事や介護などのサービスをお金で買う時代になりました。家事代行やエアコンクリーニング、水回り専門のサービスなど、何かしら利用したことのあるご家庭も多いのではないでしょうか」

――『ナギサさん』でも、最初は主人公が“OLが家政夫を利用する”ということにためらいを見せますが、利用者層にも変化が見られますか?

 「女性も外で仕事をする時間が増えていますから、共働き世帯が時間を有効活用するために家政婦に依頼したり、高齢者の方がご自身では難しい家事を頼まれたり、老人世帯の方が家事プラス介護を頼まれたりするニーズも増えています」

――かつてのドラマの影響か、家政婦というとお金持ちが利用するイメージでした。

 「たしかに、昔は富裕層の人が定期的に利用されていることが多かったと思います。今もそういう方はいらっしゃいますが、最近では短時間で合理的に利用される方も増えてきています。2時間パックや3時間パックという短時間の依頼がしやすくなったので、そういうものを上手に使って『今週はこの部分の清掃を、次の週で別の部分の清掃を』という使い方をされる方もいますね」

――ナギサさんのように、男性の方もいらっしゃいますか?

 「全体としては少ないですが、在籍しています。男性の看護師や介護福祉士が増えてきているように、家政の世界でも男性のニーズが高まっていますね。介護の場面でもそうですが、体力的に男性でないとできないこともありますし、高齢者施設などでも男性の従事者は優しい人が多く、評判も良いのです」

――“家政夫”はドラマの中だけの話ではないんですね。

 「少し余談になりますが、シニアの再就職支援としてホームヘルパーの養成研修があります。これも10年ぐらい前は、ほとんど女性でしたが、今は半分が男性です。在宅介護もどんどん増えるでしょうし、その分男性のニーズも増えますから、男性が医療や福祉、訪問先の家庭でますます活躍することを期待しています」

――新型コロナウィルスの影響としては、何かありますか?

 「第三者が家に入るということで、心配される方もいらっしゃいます。私どもでは、今回のウィルスに限らず感染症の対策や研修をしていて、会員にプログラムのテキストを配布しています」

――この仕事をするためには、どんな試験がありますか?

 「家政士認定試験の受験資格は、受験案内に細かな要件を記載していますが、家事や育児、介護の経験のある方で、試験は学科と実技があります。学科試験はテキスト中心で、講習会を受けてポイントを学習してもらいます」

――試験以外に、向いている資質というのはあるのでしょうか?

 「家政の仕事は幅が広いので、偏った知識ではなく、広く浅く知っている人の方が向いていると思います。たとえば、ご家庭に入って掃除をするとき、各家庭によって状況が違いますから、自分の勝手な判断ではできません。依頼者から指示がありますので、その指示を理解して的確に作業できるかどうかが重要です。知識や技術も必要ですが、深く知っていることよりも、常識的に作業できることの方が大切なのです。試験も決して難しいものではありませんよ」

――最後に、サービスの上手な利用法などがあれば教えてください。

 「家政婦紹介所は全国にあります。身近になったとはいえ、実際に頼むとなると、具体的にどんなことを頼めるのか、所要時間や費用など迷うこともあると思います。協会の窓口では、依頼したい内容を聞いて対応可能かどうかを判断し、お近くの紹介所のご案内や各家庭に合ったプランをコーディネートしてくれますので、ぜひお気軽に相談してみてください。家政婦サービスは個人雇用なので、大手の家事代行業者よりも手数料が少ない分、意外と安価なんですよ(笑)。父の日や母の日のプレゼントに!というのも、素敵な使い方だと思います」