車のプラモデルを愛好するカーモデラーは数多くいるが、楽しみ方は人それぞれ。Sho_taro(@1980RZ250)さんは、車と人を組み合わせてその空間をドラマの1シーンのようにとらえ、観る人の想像力を働かせるような表現を行っている。一方、kunny(@exclusive2301k1)さんはレースカーに、砂埃や泥などを加え、レースの模様を再現。臨場感あふれる迫力ある表現を展開している。同じカーモデルでありながら“静”と“動”、対照的な表現を行う2人が語るそれぞれの魅力とは?

【ジオラマ写真】泥ハネの臨場感半端ない…今にも飛び出してきそうなレース車ほかカージオラマコレクション

■時代考証をゆるく自由にできるのが、カーモデル×フィギュアの楽しさ(Sho_taro)

――代表作である「フェラーリF40」は、車だけでなく、人(フィギュア)を入れた形で発表されています。

【Sho_taro】今年2月に開催された「第一回松本城下町モデルコレクション」に「One+Oneコンペ」というものがあり、そこに出品するために制作しました。このコンペは、キット1つとフィギュア1体での構成が条件だったので、いろいろ妄想を膨らませて制作しました。おかげさまで、同コンペの1位をいただきました。フィギュアとカーモデルの組み合わせはこのコンペがなかったらやっていなかったと思います。そういう意味ではとてもいいきっかけを与えてくれて感謝してます。

――制作の際、どんな“妄想”を繰り広げたのですか?

【Sho_taro】フェラーリF40オーナーのガレージをイメージしました。オーナーになったらガレージという自分だけの城でメンテしたいし、「オレのマシンどうよ」って自慢したくなる気持ちを表したものです(笑)。ブルース・スプリングスティーンのCDやマルボロ(タバコ)を配置して、アメリカの車好き兄ちゃん感を演出してます。作品タイトルはスプリングスティーンの曲から『Born to Run』です。いわゆる労働者だけど、一生懸命頑張って手に入れたアメリカン・ドリーム感を出してみました。今、この作品の連作としてF40の後継マシンF50とフィギュアの組み合わせで、この兄ちゃんの向かいに住む設定のものを作ってます。こちらも現在妄想膨らませ中です。

――コンペ出品にあたって、もう1作制作されたと伺いました。

【Sho_taro】シトロエン2CVを使ったものですね。フランスのモンマルタルあたり、マロニエの街路樹の下っていう情景をイメージして作っていたのですが、何か説明的な感じがしたので途中でやめてしまいました。未完成なので作品名もありません。ただ、この女性も現代版アンナ・カリーナっぽいイメージを勝手に重ねて作ってました。街路樹の下にはゴダールのリバイバル映画のポスターなんかも配置する構想だったのですが…。あっ、ゴダールの映画は観たことないですけどね(笑)。

――カーモデル+フィギュアの作品を制作してみてどんなところに魅力を感じましたか?

【Sho_taro】戦車などのジオラマと違って時代考証もゆるくできるのがカーモデルのいいところだと思います。シトロエン2CVの作品の女性だって、2CVの現役の頃の時代の人ではなく、旧車マニアの現代の女性っていう設定。でもその逆も普通に成立する。この設定の自由さがカーモデルとフィギュアの組み合わせの楽しさです。私の理想のイメージはマツダのCMで新旧ロードスターに乗った老人と若者が峠道で出会って気持ちよく走ってそのまま別れるといったものがありましたが、その世界観です。「新しいものも古いものもいいものはいい!」全て横並びなのがカーモデルの面白みですね。

■動く描写の制作は“野性味あふれる表現で作りたい”という思いから(kunny)

――kunnyさんは、臨場感のある見事な“動描写ジオラマ”を制作されてます。

【kunny】もちろん普通の乗用車を作るときは静止描写なのですが、競技車両、特にラリーカーは、レースカーのように人工のサーキットではなく、大自然のフィールドで戦う獰猛な野生動物のようなイメージが私の中にあるんです。“野性味あふれる表現で作りたい”というのが動描写の制作を始めた大きな理由です。

――その後、車を使った数々の“動描写ジオラマ”を制作されていますが、なかでも「日産240RS 1983ニュージーランドラリー」はすごい迫力です。今作は、どのようなストーリーをイメージし制作されましたか?

【kunny】これはラリーカーの歴史の中で最も過激で危険なカテゴリーだった80年代半ばの“グループB”の車両です。これがマカオの新規メーカー「BEEMAX」から発売されたと聞き、驚いたのと同時にうれしかったのがきっかけですね。パーツの造形も良く、有り余るパワーでモンスターのように駆け抜ける姿を作りたいと思いました。

――臨場感を演出する「砂塵」が見事ですが、表現に苦労したのでは?

【kunny】撒きあがる砂塵の表現は、一番苦労しました(笑)。ナイロン、レーヨン、ポリエステルとそれぞれ柔らかさの違う3種類の綿を着色して表現しています。
 また、ほぼ全てのキットにドライバーとなる人は付いていません。走っている情景作品には、ドライバーは必須ですのでこれが苦労します。最近はメーカーのカスタマーサービスさんにお願いして同サイズのドライバーのフィギュアを10人分とかまとめ買いしてストックしています。ドライバーの着ているシーツはYouTubeなどで調べてできるだけ忠実に再現しています。

――制作後の反響はいかがでしたか?

【kunny】模型だと知ってみんなびっくりしていました。実車だと思ったそうです。「ここまで再現されているのは見たことない」と喜んでくれました。

――本作も含め、静止描写であるカーモデルを使って、動描写を作る際、どんなこだわりをもって制作されていますか?

【kunny】静の姿勢は基本「水平」ですが、動は「傾斜」だと思います、なので車に走っているような姿勢を与えることですね。めいっぱいハンドルを切ってタイヤを沈み込ませ本物の車のような姿勢を与える改造が大変です。
 こだわりは、タイヤとボディの汚しに使う塗料と塗装の技法です、長時間走ったことによる排気ガスやタイヤカスの汚れを表現するために、あえてきれいに噴霧しないダマが出てしまう壊れたエアブラシを使い、大きい汚れの粒を表現したりしています。
 車やバイクは人が使う道具です。買ったばかりの新車、10年使われた中古車、レストアされた旧車、ラリーカー…それぞれの持ち味をしっかり引き出すことを信念に制作しています。