まるで生きているかのような柴犬の木彫りが、SNS上で話題になっている。「固い木なのに温もりや、柔らかさを感じられる」「愛を感じる彫刻」などと反響を集めた。制作者のはしもとみおさんは15歳の時、阪神・淡路大震災を経験。彼女は、地震の後にまわりにいた犬や猫たちがいなくなってしまったのを目の当たりにし、「生きていた大切な命をずっと残しておきたい」という決意を持ち“動物の命”をテーマとする彫刻家を志した。現在コロナ禍の中で個展を開催している彼女に、その意義を聞いた。

【画像】「生きてる…?」本物と見間違うかわいらしい動物の彫刻作品集

■「そのものがそのままの形で輝けるよう…」彫刻に込める“生命感”とは

 はしもとさんの愛犬である月くんが、アトリエに置いてある犬や猫の彫刻のポーズに寄せにいっている、というかわいらしい写真が投稿され12.5万いいねと話題になった。さらに、その2日前には月くん自身がモデルの彫刻に挟まれて座っている姿に、「どれが本物かわからない」と4.5万いいねの反響を集めた。

 月くんの彫刻をいくつも制作しているはしもとさん。生後2ヵ月からアトリエで生活している月くんは、「彫刻は兄弟のように寄り添う存在なのだと思う」と語る。普段も彫刻のそばで寄り添っていたり、彫刻を枕にして寝ていたりするそうで、特に大きなクマの彫刻が大好きで、いつもクマのお腹のところで丸くなっているという。

 そんな月くんの彫刻のように、画像だと判別が難しいほど精巧に制作された動物の彫刻たちを生み出す際には「そのこの愛らしさや魅力を、100%ジュースの様にギュッと絞って彫刻に籠めている」とのこと。気を付けていることを聞くと、「“生命感”を最も大事にしているので、木彫の技術や、自分のこだわりなどは捨てて、その子、そのものがそのままの形で輝けるよう気を付けています」と、制作者の“エゴ”ではなく、モデルにした動物たちそれぞれの“らしさ”を作品に込めていると教えてくれた。

■「このような時代だからこそ、美術の力が人々の心に必要」コロナ禍で個展を開催する真意

 はしもとさんは現在、個展『にいみどうぶつ列車へようこそ!はしもとみお 木彫り動物の世界』を開催中。コロナ禍の中で個展を行うことに対しては「感染予防対策は徹底した上で、このような時代だからこそ、美術の力が人々の心に必要だと思っています」という。実際に開催してから、来場者が展覧会場で笑顔になっている様子に、「とても開催する意味を感じています」(はしもとさん)

 展覧会の反響ではほかにも、「画像でも素晴らしいけど、実際に見たほうが伝わる」「凄い!生きてる!」というようなコメントが見られた。はしもとさんは「実際生きている子や、生きていた子がモデルになっているので、その子、そのものに出合ったような感覚になってくれてるものと思います」と作品の魅力を教えてくれた。

■「生き物の多様性の美しさを伝えたい」動物たちの姿を残していくという使命

 1995年、はしもとさんが15歳の時に阪神・淡路大震災を経験。近所で飼われていた犬はいなくなり、街から動物たちの命の気配が消えた。はしもとさんは以前、「震災で亡くなった子に会いたい、触りたいと思った時に絵では物足りない」と彫刻を選んだ理由を明かしていた。自身のブログでは、いきものの家族をむかえ、見送ったことのある人たちへ向けて、「日々、瞬間瞬間の泣きたいほどの美しさとかがやきを、彫刻にこめて届けていきたいと思っています」と強い思いも語っている。

 そんな彼女に彫刻家として活動していてよかったことを聞くと、「作った動物たちの飼い主さんの笑顔が見られることが一番の喜びです」と回答。これからチャレンジしてみたいことは「日本では見られない動物たちや、ここ数十年で絶滅してしまうかもしれない動物たちを、積極的に残していくこと」だという。日本の方々に生き物の多様性の美しさを伝えていきたいと話すはしもとさん。コロナ禍だからこそ、“生命力”が吹き込まれた彼女の作品が、今、より美しくかがやくのかもしれない。