今期ドラマで『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)や『親バカ青春白書』(日本テレビ系)とおじさんがモテるドラマがオンエア中。また、CMでもずんの飯尾和樹が田中みな実の夫役に扮する『明治 TANPACT』CM、武田玲奈から意味深に慕われる『ボートレース』CMなどが話題になっている。これまでにもエンタテインメントシーンでは、「ちょいワルおやじ」をはじめ、『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)や『バイプレイヤーズ』(テレビ東京系)などおじさんがフィーチャーされるブームはあった。しかし、今回はこれまでとは傾向が異なり、おおよそモテとは縁遠い地味なおじさんたちが、若い世代の女性にモテていることだ。

【写真】妻・田中みな実が夫・飯尾和樹にキスを迫る…意外とお似合いラブラブショット

◆モテとは縁遠いタイプが…ドラマやCMで増える若い女性からの“おじさんモテ”ブーム

 大森南朋が家政婦を演じる『私の家政夫ナギサさん』は、働き盛りのキャリアウーマンで家事と恋には不器用な28歳の独身女性・相原メイ(多部未華子)が主人公。彼女が雇うことになるエプロン姿の家政婦おじさんに対して最初は抵抗感をあらわにするが、次第に心を許していく。包容力のある大人の男性にいつのまにか人として惹かれるようになり、同世代の異性とは異なる親近感を抱いていく。

 一方の『親バカ青春白書』は、娘・さくら(永野芽郁)が大好きすぎて、娘と同じ大学に入学し同級生になった親バカの父・ガタロー(ムロツヨシ)が主人公。娘のキャンパスライフに首をつっこむ父に周囲の学生仲間たちは奇異の目を向けるが、彼らに対する自然なスタンスやその特有の存在感、機転を利かせて彼らの窮地を救う姿などから、さくらの友人の寛子(今田美桜)だけでなく、さくらが密かに思いを寄せる男子学生・畠山(中川大志)から、好意と敬意を超えた愛情に近い感情を向けられる(畠山は作家であるガタローの大ファンだったことが第2話で明かされる)。

 また、俳優としても活躍中の芸人・飯尾が出演するCMでも、おじさんのモテ姿が映し出されている。『ボートレース』CMでは、レーサーたちの勝利への執念とライバル心が描かれるなか、飯尾演じるベテランレーサーに対して、若き天才女子ボートレーサーのレナ(武田玲奈)が意味深かつ衝撃的な言葉をつぶやくなど、憧れ以上の特別な感情を有していることが示されている。『明治 TANPACT』CMでは、田中みな実演じる年下の若き美人妻に腕を組まれ、仲良く寄り添い合う姿が、ふつうのおじさんのモテ(=美人妻に惚れられている夫)への世の男性の羨望の眼差しを集めるとともに、女性層からも好感を得ている。

 このように、王道の渋い系やイケメン系ではないおじさんが若い女性にモテる系のドラマ、CMがいま相次いで登場し、話題になっている。SNSでは、田中みな実の夫役の飯尾へ「意外だったけど円満夫婦っぽくてお似合い」「自然体のおじさん(飯尾さん)がカッコよく観えた!」といった声が上がり、家政婦役の大森南朋に対しては「物腰の柔らかい大人の優しさとエプロン姿がたまらない」「私の家にも来て!癒やしてほしい」などのツイートが飛び交い、女性たちの心をくすぐっている。

◆ちょいワルおやじ、おっさんずラブ、バイプレイヤーズ…時代ごとに変遷を遂げるおじさんブームの系譜

 振り返ると、“おじさんブーム”は過去に何度も起きている。80〜90年代には、ウイスキーCMでダンディなイメージが定着した長塚京三が、人生経験豊富な大人の魅力で女性を惹きつけた。また、当時型破りな刑事像を打ち出した人気ドラマ『あぶない刑事』の舘ひろしや柴田恭兵など、イケメン系ダンディおじさん俳優たちもモテの対象となった。

 2000年代には、男性ファッション誌『LEON』から生まれた“ちょいワルおやじ”ブームが到来。アウトローな雰囲気をかもし出す不良っぽいファッションに身を包むおじさんが、経済力があるからこその大人の余裕や若い世代とは異なるラグジュアリー感などからもてはやされた。当時の人気番組『笑っていいとも!』(フジテレビ系)には「ちょい不良おやじコンテスト」というコーナーも生まれるなど、ファッションとあわせたおじさんブームがメディアを席巻した。

 そして近年では、おじさん同士の純愛を描いた『おっさんずラブ』や、端役俳優たちの悲哀をおもしろおかしく映し出した『バイプレイヤーズ』など、おじさん俳優がフィーチャーされるドラマが人気を集めている。見た目は“いかつくて強面”のおじさんたちのギャップのある心優しさや生真面目さ、滑稽さを若い女性たちがかわいいと感じて愛でたり、いじったりすることで話題になるとともに、おじさん株が急上昇した。

 『おっさんずラブ』のテレビ朝日・貴島彩理プロデューサーは、「『バイプレイヤーズ』や『メゾン・ド・ポリス』など、かわいいおじさんたちに、なんだか癒やされる…という気持ちは、いち視聴者としてとてもよくわかります(笑)」(ORICON NEWSより/2019年3月1日)と語っているが、“癒やし”がひとつのキーワードになっている。そこからはバイプレイヤーブームも生まれ、その呼び名のとおりの端役ばかりではなく、ドラマや映画などのメジャーシーンで主演を張る作品も増えるなど、おじさん俳優たちが活躍の場を広げていった。

◆嫌われるのが定番の冴えないおじさんが心の拠り所に…「おじデレラ」を地で行く今期ドラマ

 時代とともに繰り返し到来している“おじさんブーム”だが、ここ最近では、ドラマやCMなどでおじさんが若い女性にモテる姿が描かれ、それが男性ばかりでなく、女性層の支持も得ている。

 これまでのブームと異なるのは、嫌われるのが定番だった“冴えないおじさん”の「おじデレラ」を地でいくような物語がメインストリームで支持を受けていること。『相棒』(テレビ朝日系)の反町隆史や『BG~身辺警護人~』(同系)の木村拓哉など、かつてのイケメン俳優が歳を重ねて渋さが加わり、再びモテ期を迎えるのは当たり前のことだが、飯尾やムロツヨシ、大森南朋ら、若い頃にモテとは縁遠い地味なイケメン系ではないタイプが、おじさんになった今、モテるようになったことが特徴だ。

 その背景のひとつには、演技力の評価は高くても、イメージ的におじさんが“きれいではない”印象が女性たちに定着していたことがあるだろう。それが昨今では、飯尾やムロのようにおじさん俳優たちの多くが、研ぎ澄まされた清潔感を醸し出している。『わたナギ』での家政夫・大森南朋のエプロン姿は、おじさんの清潔感を象徴している。SNSでは、「カジュアルな服装のエプロン姿なのに、なんであんなに、色気ダダ漏れなんだ…」「まさか、エプロン姿のほんわか大森南朋に癒される日が来るなんて… 」「何だこのギャップ…家政夫の大森南朋が可愛い」とそのエプロン姿に萌える人が続出しているようだ。それとともに、隣にいるだけでほっとする安心感や寄り添える存在であることが、今の時代にマッチした女性に求められる要素になっていることがある。

 もちろん、積み重ねてきた経験値などによる人間性の大きさや人生観、大人としての余裕といった魅力もある。ある種イケメンではないおじさんが、これまでのブームのような滑稽さからのかわいらしさやいじりではなく、内面から出た渋さや人生経験ともまた違う、そこにいるだけでほっとする存在として、人の内面からの「モテ」として扱われるようになったのが、これまでとは異なるおじさんブームになっているのだ。

 そこには時代性もあるだろう。そのモテは、競争社会でささくれだった女性たちの心をどこか穏やかにし、同世代の男性視聴者のカタルシスになっているのも特徴だ。不安な世の中における一服の清涼剤のような役割を担っている。ウィズコロナの時代に求められている、観る人に幸福感をもたらすブームかもしれない。

(文/武井保之)