2019年9月にアイドルグループ・乃木坂46を卒業した桜井玲香。その後は、女優としてミュージカルに出演し、歌やダンスを交え精力的に表現活動を続けてきた。そんな桜井がグループ卒業からちょうど1年となる2020年9月に舞台『フラッシュダンス』で、現状に満足せず常に上昇志向の女性・グロリア役に挑む。「私はノー天気なので」とはにかんだ桜井だが「諦めきれない夢を持つ」という部分では共感できることが多かったという――。

【写真】女優業への思いを語った桜井玲香

 乃木坂46時代は初代キャプテンを務めるなど、グループの中心としてメンバーを引っ張って来た桜井だが、第1期生のオーディションに臨むときは「これで食べていくのか?」と親に反対された過去がある。桜井自身も「たくさんアイドルがいるなかで、成功することはすごく難しいこと」と現実の厳しさは理解していたが「親の反対を振り切ってまで、チャレンジするぐらい夢が諦められない」と思いを貫いた。

 『フラッシュダンス』で桜井が演じるグロリアは、愛希れいか演じる主人公アレックス・オーウェンズの親友であり、プロダンサーを目指しながらウエイトレスで生計を立てている女性。自分の現状に満足せず「もっとビッグなスターになる!」と日々葛藤しながらも大きな夢に向かって突き進む女性。桜井自身もこうしたグロリアの「現状を打破したい」という思いには大いに共感できた。

 一方で「でも私はグロリアよりも気弱なところがある」と自己分析すると「じっくりと頑張らなければいけないのだけれど、なにか近道があるのでは……と考えてしまう部分もすごく分かるのですが、危ない道に進んでしまうところは、私と正反対だなとも思います」と慎重な部分を持ち合わせていることも付け加える。だからこそ、現実で自分がやらないような突飛な行動をしてしまうグロリアを演じられることにワクワク感があるという。

 役によって新たな自身を表現できるのが俳優の仕事の魅力。本舞台についても「最近やってきた役とは違う女の子。自分のなかの引き出しをたぐり寄せながらアプローチできるのは、とてもいい経験になると思う」と前を向く。

 本舞台が開催される9月は、桜井が乃木坂46を卒業後、ちょうど1年となる。「自分の置かれている環境がすごく変わったとは正直感じていません」と笑うと「でも、乃木坂46に在籍中よりはいまのほうが、作品に向かう時間が圧倒的に増えたので、そこはすごく大きい」と演じるという仕事を突き詰めていくうえでは、非常によい環境になっているようだ。

 歌とダンスが得意な桜井だけに、ミュージカル作品が続いているが「映像作品もやっていきたいです」とアピール。それでも「舞台って何カ月もじっくりと一つの役を突き詰められるのが、とても幸せです。お客さんの反応もダイレクトに返ってくる。上演日によってまったく違うものになったりするし、自分の演技を変えると共演者の芝居も変わる。逆に共演者によって自分の芝居も変わる……そのライブ感がたまらないんです」と笑顔を見せる。

 生でのパフォーマンスは、アイドル活動を続けてきたからこそだと感じられるが「年々度胸がなくなってきているような気がします」と口ごもる。そこにはグループを卒業して1人になったことも大きな要因であるようだ。「1人になっていろいろなことがスタートして、知らなかった世界に飛び込むことは刺激的でもあるのですが、毎日が挑戦で悩みも多いんです。本当に緊張しっぱなしの毎日です」と弱気な部分を覗かせる一面も。

 それでも今後の抱負を問うと「いまは役者として頑張っているので、もっといろいろな作品に出演して経験を積みたいです」と力強く語ってくれた。(取材・文:磯部正和)

舞台出演情報
ミュージカル『フラッシュダンス』
9月12日~26日:日本青年館ホール
10月3日~4日:日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
10月8日~11日:梅田芸術劇場シアタードラマシティ

1983年に公開され、世界中で1億ドル以上の大ヒットを記録した青春映画『フラッシュダンス』をミュージカル化した本作。俳優として活躍するばかりではなく舞台演出家としても評価の高い岸谷五朗が演出を手掛ける。桜井は、主人公アレックスの親友で、ウエイトレス兼ダンサーのグロリア役で出演。『Maniac』や『Manhunt』、『I Love Rock’N Roll』、『Gloria』ら軽快なヒットナンバー満載の歌やダンスでファンを魅了する。