6月18日に初回が放送された木村拓哉主演のドラマ『BG~身辺警護人~』新シーズン(テレビ朝日系)。ネットでは、木村拓哉と斎藤工の前作よりも増したバディ感に歓喜する声が続々と上がっている。たしかに本作は、過去の主演ドラマと比較すると、“キムタク推し”よりも群像劇としての色が濃い。それでもなお座長としての揺るぎない存在感は、今や同世代のみならず10~20代の視聴者の心もつかんでいる。約30年にわたってシーンをけん引してきた木村拓哉の「主役の器」とは何か。

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■「強い信念がドラマを進化させてくれる」、P語るコロナ禍での存在感

『BG~身辺警護人~』が、初回視聴率17.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と好発進した。前シリーズ(18年1月期)の初回視聴率15.7%を上回る結果で、新たな視聴層を取り込んだことがうかがえる。

 木村拓哉が演じる島崎章は、民間会社のボディガードで、警察やSPと違って武器を帯同できない。それだけに“丸腰”によるキレ味のいいアクションは見応え十分だ。鋭い目線や仕草といった演技も相まって、SNSには「やっぱりキムタクカッコいい!」という声が溢れた。

 4月放送を予定していた同ドラマだが、新型コロナの影響で現場が中断していたのはご存じの通り。そんな最中の5月8日に木村が公式インスタグラムを開設。最初の投稿で「BG」のワッペンが付いたジャケットを披露している。ドラマファンはもちろん、共演陣やスタッフはこの投稿にどれだけ勇気づけられたことだろう。

 島崎と何かと衝突しながらもバディ的な絆で結ばれた高梨雅也を演じる斎藤工は、撮影のストップに気持ちが沈んでいた時期に、「『なんでわかるんだろう!?』というようなタイミングで、木村さんが連絡をくださって…! そこで『僕は今、BGの途中にいるんだ』と認識できて、モチベーションも途切れなかったんです」と振り返っている。

 6月3日にはようやく現場が再開。しかしリハーサル中はマスクとフェイスガード装着と、芝居をする上でのベストな環境はいまだ戻っていない。それでも再開初日、いち早くフェイスガードを付けた木村が「早くこれをニュースタンダードとして捉えたほうがいいんじゃないか」と呼びかけたことによって、共演陣にさらなる一体感が生まれたと斎藤は証言する。

 同ドラマの担当プロデューサーは、「木村さんの揺るがない姿勢、もっと上を目指そうという強い信念がドラマを進化させてくれています」と逆境の今だからこそより鮮明となった、木村拓哉の座長としての真価に全幅の信頼を寄せている。

■テレ朝とのタッグで見せた、俳優としての新境地

『BG』で木村が演じる島崎には、ボディガードの一方でシングルファーザーとしての一面もある。思春期真っ只中の息子といまいち噛み合わない様子はなかなかにリアルで、苦笑いしながら共感を覚えてしまうキムタク世代の男性もいるかもしれない。

 振り返れば、木村が連ドラで父親役を演じたことが話題となった『アイムホーム』(15年4月期)もテレビ朝日だった。娘たちの活躍もあって「キムタクもお父さんなんだ…」と再認識する今日この頃だが、すでに5年前には父親としての顔を“解禁”してきたと言えよう。

 1988年にドラマデビューして以来、キムタクと言えば長らく時代の若者トレンドをけん引する存在だった。ドラマで着用したことでブームとなったファッションは数知れず。主演ドラマも必須、木村単独の存在にフォーカスを当てた作風が多くなっていった。そのせいか、やっかみも込みで「何をやってもキムタク」と揶揄されることもあった。それでもしっかりと高視聴率を叩き出してきたのは、さすがとしか言いようがない。

 とは言え、木村も生身の俳優。47歳という年齢からは十分若々しいものの、『BG』で高梨から何度も「オッサン」と呼ばれるように、時代の若者を演じる世代ではないことはたしかだ。

 ところがドラマ満足度調査「オリコンドラマバリュー」によると、近年再び木村の主演ドラマに対して若者層(10~20代)の好印象の声が増加している。とくに直近の『グランメゾン東京』(TBS系/19年10月期)では、「ドラマを観た」という回答者の約3分の1が10~20代で占められる結果となった。

 ちなみに同ドラマでも木村が「おじさん呼ばわり」されたことが話題となったが、10~20代にとって木村は親と同世代。かつて木村のファッションを真似ていた世代にとっては驚愕だった「おじさん呼ばわり」も、おそらく若者にとっては、なんら不自然はないのだろう。

■若年層はキムタクの「カッコよさ」をどうみているのか

 では10~20代にとって木村拓哉とはどういう存在なのだろうか。『グランメゾン東京』に感想を寄せた若者層の声を拾ってみると、やはり「カッコいい」という声が目立つ。しかしこの「カッコいい」の意味合いは、かつてとは変わっているのではないかと推測される。

 たとえば木村と同世代(40~50代)が子どもの頃に、親から「石原裕次郎がいかにオシャレでカッコよかったか」を力説されていまいちピンとこなかった記憶はないだろうか。このとき親が言っている「カッコいい」とは石原裕次郎(と自分)が若者だった頃のことであり、ピンとこないのは無理もない話だ。

 それでもリアルタイムで目にしている『太陽にほえろ!』(日本テレビ系)のボスや『西部警察』(テレビ朝日系)の木暮課長のかっこよさは理解できたはず。何より画面に映ったとたん、その濃厚なオーラに子どもながら圧倒されていた人は多かっただろう。

 その意味で、木村もまた徐々にそんな“"重鎮”に近づいているとは言えないだろうか。

 現代の10~20代は当然、若者のトレンドセッターだった頃の木村を知らない。それでもなお、画面から溢れ出る木村のオーラはひしひしと感じているはずだ。言葉には表しがたいその圧倒的なオーラこそが、シンプルな「カッコいい」という感想になったと考えれば腑に落ちる。

 ところで、『BG』は主役の島崎メインのストーリーよりも群像劇としての印象が強い。これもまた主演ドラマで一貫して“単独センター”的なポジションを背負ってきた俳優・木村拓哉の変化だ。

 何度も例に出すようだが、若い頃に一貫して単独主演を貼ってきた石原裕次郎も、『太陽にほえろ!』や『西部警察』では後進に席を譲るポジションに収まっていた。それでもやはりどっしりと構える石原がいてこそ、この両名作も引き締まるものになっていた。

 その点で言えば、『BG』で木村が演じる島崎は組織に反旗を翻すなど、まだまだヤンチャな軽やかさを発揮している。それでもかつてのようなキムタク推し一辺倒のドラマ設計でないのは、製作陣が木村の揺るぎない「主役の器」を信頼していることの表れだと考えられる。

 今後、さらに年齢を重ねていくに従って、ドラマにおける木村のポジションも徐々にシフトしていくだろう。重鎮たる貫禄。それこそが今まさに俳優・木村拓哉がまとっているオーラなのではないだろうか。
(文/児玉澄子)