今年で60周年を迎えた『アヌシー国際アニメーション映画祭』。カンヌ国際映画祭から1960年に独立し、アニメーション映画祭としては世界最大にして最も歴史の古い同映画祭で、フランス南東部のアヌシーで開催されてきたが、今年は新型コロナウイルスの影響によりオンライン開催(現地時間6月15日~30日)となった。そんな中、現地時間20日に各賞が発表され、長編アニメーション部門 グランプリにあたるクリスタル賞をレミ・シャイエ監督の新作『Calamity(カラミティ)』が受賞した。

【写真】レミ・シャイエ監督

 クリスタル賞は、過去に湯浅政明監督の『夜明け告げるルーのうた』(2017年)、高畑勲監督の『平成狸合戦ぽんぽこ』(1995年)、宮崎駿監督の『紅の豚』(1993年)が受賞している。

 今年の受賞作品『カラミティ(仮題)』は、境界線のない独特な手法の作風で知られる、フランス・デンマーク産アニメ『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』の監督であるレミ・シャイエ監督による最新作。

 前作『ロング・ウェイ・ノース』は、アヌシー国際映画祭観客賞、東京アニメアワード・グランプリ受賞後、故・高畑監督が日本公開を切望していながら、なかなか公開が実現せず、3年越しの2019年にようやく日本で公開された、という経緯がある。神アニメーター・井上俊之氏をはじめ、国内の多くのアニメーター、漫画家たちもその作風を絶賛している。

 『カラミティ(仮題)』は、前作『ロング・ウェイ・ノース』と同じ制作スタジオで、主要メンバーも再集結しており、2018年のアヌシー国際映画祭の“Work-in-Progress”(進行中の話題の企画プレゼン)にて披露された数分間のパイロット版の完成度の高さからも、注目を集めていた。

 今年春に完成したばかりで、アニメーションの最高峰の映画祭であるアヌシー国際映画祭にてコンペティション作品(10作品)に選定。「あたかも美しい絵画をみているようだ」と高く評価されているその手法は、本作でさらに磨きがかけられ、栄えあるクリスタル賞受賞となった。アヌシーがワールド・プレミア上映の場となり、本国フランスで年内公開を予定。各国映画祭を巡回し、日本でも2021年に公開予定となっている(日本語吹き替え版も制作予定)。

 内容は、西部開拓史上、初の女性ガンマンと知られるマーサ・ジェーン・キャナリーの子ども時代(12歳)を描いたもの。マーサは家族とともに大規模なコンボイ(旅団)で西に向けて旅を続けているが、旅の途中、父親が暴れ馬で負傷し、マーサが家長として幼い兄弟を含め、家族を守らなければならない立場になってしまう。

 普通の少女であったマーサは、乗馬も、馬車の運転も経験なし。そんなマーサは、少女であることの制約に苛立ち、家族の世話をする義務をよりよく果たすために少年として服を着ることを決心する。女性は女性らしくという時代にあって、マーサの生き方は、古い慣習を大事にする旅団の面々と軋轢(あつれき)を生み、さらに盗みの疑いまでかけられて、旅団から追放されてしまう…。

 北極への旅に出て船が行方不明になった祖父を見つけるために乗り出す14歳のロシア人の少女が主人公だった『ロング・ウェイ・ノース』と同様に、『カラミティ(仮題)』も大胆かつ勇気のある女性ヒーローの成長譚。主人公の少女は周りの大人たちに影響を与え、その大人たちもいつしか少女とともに成長する、老若男女あらゆる世代にアピールする物語となっている。