ネット上に溢れている、勝手な思い込みや偏見の数々。誰しもが気軽に誹謗中傷を行えてしまう環境の中で、実際に傷つけられている人もたくさんいる。そういった問題に向き合い続ける2つのSNSアカウントが注目を集めている。1人目は、夏ノ瀬いのさん。“アンチコメントを送るのにハマっている”という女性の様子を漫画に描いて話題を呼んでいる。

【漫画】「コメント荒れるほどおもしろい」アンチコメント残す人の実体って?

■「どこかでその過ちに気づいてほしい」 匿名で責任を持たない誹謗中傷が悲劇を生み出す

 とある飲み会に参加した夏ノ瀬さんは、そこでとても好印象に見える女性と出会った。だが、徐々にお酒が回ってきた頃、「ユーチューバーの動画にアンチコメントを送るのにハマっているんですよ~」とその女性が語り始める。しかも、「そのユーチューバーのことは好きでも嫌いでもない」「ただのストレス発散で寝る前のルーティーン」「私のアンチコメントにグッドがたくさん付く」などとも平然と話し出す始末。その姿を見て、夏ノ瀬さんは愕然としてしまうというのが漫画の内容だ。

 漫画には、「怖すぎます。武勇伝のように語って聞かせる精神が本当に怖い」「ストレス発散するなら誰にも迷惑かけずにやってほしい」「“アンチを気にするだけ無駄”と遠回しに教えてくれた、実はいい人なのかも」などと、多くの反響とコメントが寄せられた。

「その子は本当に身なりもきれいで、人間関係も問題のなさそうな子で。いったい何を言っているのだろう…何がこの子をそうさせたのだろう…と、そればかり思っていました。人間誰しもが持っている承認欲求が、おかしな方向に働くとこうなってしまうのかなと怖かったです」(夏ノ瀬さん、以下同)

 ネット上での心無い誹謗中傷によって、最近では芸能人が死を選んでしまったり、SNSで活動の幅を広げるYouTuberやクリエイターが苦しめられたりするケースも増えている。夏ノ瀬さんは、こういった現状に警鐘を鳴らす。

「匿名で何の責任も持たずに発言ができる時代だからこそ、こう言った心無い行為ができるのだろうと思います。実際に目の前にいる人に向かって、暴言は吐かないじゃないですか。彼らには画面の先に人がいることや、事態がどう向かうかなどが、全く想像できていないのだろうなと感じます。本当にどこかでその過ちに気づいてほしいです」

■「社会は思い込みや勘違いで満たされている」 それを知ることで救える人もいる

 2人目は、日本育ちのカメルーン人・星野ルネさんだ。4歳直前で母親の結婚を機に日本にやってきたという。日本語もバリバリ話せるのに、何も事情を知らない人は必ず英語で話し掛けられ、新たな出会いを経験するたびに自身の事情を話すことがルーティーンに。幼い頃から周囲の人々が無意識のうちに抱く“思い込み”や“偏見”に常に向き合ってきた。そういった体験や出来事が、SNSに投稿されるユーモアあふれる漫画に表現されている。

 例えば、運動会の短距離走で、星野さんが3着だったときのこと。周囲からは「アフリカの子が負けた?」「調子が悪かったのかな?」といった反応があったという。「黒人全員が超人的に運動神経がいいわけではないんです!」という星野さんのコメントが、この漫画のオチとなっている。

「基本的なテーマとしては、『僕たちの社会は思い込みや勘違いで満たされている』ということを、さまざまなエピソードを通して伝えています。そして、それを知ることによって、救われる人、救える人がいるということもわかってきました。あと、単純に関西人である僕は、何よりも楽しいお話をシェアすることに快感を覚えるのです」(星野ルネさん、以下同)

 星野さんの漫画には、入学式に民族衣装で登場する母、アフリカ人の母以上にアフリカ事情に詳しい父など、強烈な個性を持つ人物たちも頻繁に登場する。中でも、お母さんはとてもインパクトがあっておもしろく、読者から人気のキャラクターでもある。そんなお母さんからの教えの中で、星野さんの心に強く響いているものがあるという。

「母親からもらったメッセージの中で、一番自分の身になっているのは、『漠然と信じる』という姿勢や言葉です。クリスチャンである母は、祈りによって将来の希望を信じていて、その態度が自分を楽観的にした要素の1つであると思っています。漫画はハーフのお子さんをお持ちの親御さんや海外の人、学者さん、小学生などなど、かなり幅広い人々からご支持をいただいたので、そのことに驚いています。今後も、自分が『面白い』『これは意義がある』と思う活動を引き続き行っていきたいです」