渋谷、吉祥寺、京都に映画館を持ち、配給も行う映画会社のアップリンクの浅井隆社長が19日、同社のサイトを更新。元従業員からパワハラで提訴されていた浅井社長は「私のこれまでの言動に過ちがあったことを認め、傷つけたことを深く謝罪致します」と謝罪した。

【写真】パワハラで提訴したことを発表した元従業員4名

 16日に元従業員4人は、浅井氏に対しパワーハラスメントによる損害賠償を求めて東京地裁に提訴。ほかに1人を加えた5人はアップリンクの関連会社も訴えていた。その後、4人は実名で会見。浅井氏に対して「日常的なハラスメント。まず、それを自覚してもらいたい。その上での謝罪。ここから先は仮定の話ですが、なおアップリンクが続くとしたら改善してほしい。いい雰囲気で仕事ができる場になってもらいたいのが要望」と思いを伝えていた。

 同社のサイトで浅井氏は「今回提訴した元従業員5名の方、そして、そのほかの元従業員、現在勤務している従業員の皆さんに対して、私のこれまでの言動に過ちがあったことを認め、傷つけたことを深く謝罪致します。また、これまでアップリンクを支えて下さったお客様、関係者の皆様にもお詫び申し上げます」と謝罪。続けて「コロナ禍で映画館の営業ができなかった時も、配信やチケットを購入してくださったり、寄付してくださったり、温かいお言葉をかけていただきました。そうしたお気持ちを裏切るような行動を深く反省し、今後決して繰り返さないよう、努めて参ります」と猛省した。

 そして、これまでのアップリンクの成り立ちを回顧。会社の規模が100人の従業員を抱えるほど大きくなってからもワンマン経営を続けてきたそうで「規模に応じた組織づくりを行なうことができていませんでした」と自戒。「特にマネージメントの体制が会社の規模にふさわしく行えず、スタッフ1人1人に過大な負荷がかかる状況が常態化していました。アップリンク吉祥寺、京都のオープン時は、誰もが未経験の大きなプロジェクトであったにも関わらず、十分な研修もできずスタッフの負担は大きなものでした。研修を十分にせず、責任の重い仕事を任せ、スタッフに過度のプレッシャーを与えること自体がハラスメントにあたるという認識が自分に欠けていました」とパワハラの認識すらなかったことを明かした。

 一方で「社長として、無理なスケジュールや采配を行っていたことは明らかです」とも。さらに「従業員への態度に対しても、これまでにスタッフから何度も『これはハラスメントである』という指摘を受け、是正するよう言われてきました。そのたびに理解したつもりになっていましたが、理解できていませんでした」とパワハラが常態化した原因を語っている。

 ただ、会社を離れることはなく、社長職には留まる。「自分が退くことで会社を刷新させることができるのかもしれませんが、アップリンクは自分一人で始めた会社で、全ての経済的リスクを負ってきました。現在も多額の負債があり、その連帯保証人は自分一人です。そういった中で誰かに社長を務めてもらうことは難しい状況です」と理由を説明。「私自身が会社を退くということは、アップリンクがなくなり現従業員を路頭に迷わすことになります。自分自身と会社を変革し、ハラスメントのない会社、そして今まで以上に映画という文化、映画産業において、有意義かつ独自性の高い活動をしていく会社にする所存です」とする。

 今後は、1.外部委員会の設置、2.通報制度・窓口の設置、3.社内体制の改革・スタッフとの定期的な協議、4.取締役会の設置、5.セミナー、カウンセリングへの参加で組織の改善を行うという。

 最後は「アップリンクは社会の均質化に抗うことを標榜してきました。スタッフは皆、そこに共感してくれた人たちです。今回、提訴にあたって、原告の皆さんが実名で顔を出して会見をしたことはとても覚悟のいることだったと思います。それを深く受け止め、心に刻みます。同時に、現職のスタッフ、これまで働いてくれたスタッフの訴えに耳を貸さなかったこと、わかったつもりになって、きちんと対応しなかったことを、深く反省しています」と改めて反省の言葉を綴る。そして「アップリンクを応援してくださった皆様に残念な思いをさせてしまい、大変申し訳ありませんでした。会社の運営体制、職場環境を根本的に変えていくこと、そして、もう一度、皆様に応援していただけるアップリンクに生まれ変わることを、ここにお約束致します」と結んでいた。

■訴訟で原告が主張する浅井隆氏によるパワハラの例
・休日返上の業務中に、猫カフェに一緒に入店するように求められ、業務とは無関係に2時間も拘束したこと。

・従業員に対して「精神疾患者を雇った俺がおかしかった」との発言

・浅井氏が落とした物(ゴミや飲み食いした物など)を浅井氏自身が拾うことができるにもかかわらず、従業員に拾わせる

・アップリンク従業員の面前での叱責

・映画館利用客の面前での叱責

・他社の従業員の面前での叱責

・従業員に対して「怒鳴られる側が悪い」との発言

・サービス残業を当然視した言動