世界で一番有名なビーグル犬・スヌーピーが活躍するコミック『PEANUTS』が、10月2日に70周年を迎える。日本でも英語の教科書やグッズなどで世代を超えて愛されてきたキャラクターだが、スヌーピーが実は脇役ということを知っている人は少ないだろう。日本での独占エージェント権を持つソニー・クリエイティブプロダクツのIP推進本部・渡辺恵介氏に、改めてスヌーピーの奥深い魅力について聞いた。

【画像】人気低迷の救世主・女きょうだいのベルや超レアな“子犬”時代のスヌーピー

◆グッズ先行で人気を得たスヌーピー、「世界の中心は自分」という主役的な性格が魅力

 “スヌーピーとゆかいな仲間たち”が活躍するコミック『PEANUTS(ピーナッツ)』の連載が、アメリカの新聞7紙で始まったのは1950年10月2日のこと。現在も75カ国、21の言語、2200紙で連載されている不朽の名作コミックだ。

 スヌーピーが初めて登場するのは、連載開始から2日後の10月4日のこと。それもそのはず、『ピーナッツ』の主人公はスヌーピーではなく、その飼い主であるチャーリー・ブラウンなのである。脇役だったスヌーピーが、いわば主役を食うほどの人気者となったのはなぜなのだろうか? ソニー・クリエイティブプロダクツの渡辺氏はこのように言う。

「まず前提としてキャラクターとしての圧倒的な可愛さが、その理由としてあると思います。日本では1967年に谷川俊太郎さんの翻訳による単行本が初登場。翌年にはグッズの展開も始まりますが、そのときからフィーチャーされたのが、主役のチャーリー・ブラウンでなく飼い犬のスヌーピーでした。キャラクタービジネスにおいては基本的に人間よりも動物のキャラクターのほうが受け入れられやすいとされています。日本ではコミックよりもグッズで広く親しまれるようになった背景もあって、スヌーピーが主役的に見られているのかもしれません」

 ご自身も登場キャラクターの中では「スヌーピーが一番好き」という渡辺氏は、もう1つこんな理由も挙げる。

「スヌーピーの『世界の中心は自分』といったような主役的な性格もあるかもしれないですね。一方のチャーリー・ブラウンはいい人だけど、どこか冴えない脇役的な性格。スヌーピーはいつまでたってもチャーリー・ブラウンの名前を覚えずに『丸頭の男の子=(The round-headed kid)』と呼んでいて、自分のほうが飼い主だと思っているフシさえあります。ただ可愛いだけでなく、一筋縄ではいかない性格もスヌーピーの魅力です」

◆人気低迷を救った救世主はスヌーピーの女きょうだい・ベル、ティーン層の獲得で人気浮上

 登場からしばらくは4足歩行をする可愛い子犬だったスヌーピーだが、時代とともに絵柄も少しずつ変化。60年代には現在のように2本足で立ち上がり、それとともに小説家や宇宙飛行士、弁護士、スポーツマンなどさまざまな才能を発揮するようになる。

 日本に初上陸したのもこの頃のこと。以来長年にわたって愛されてきたが、ソニー・クリエイティブプロダクツが2010年に日本での独占エージェント権を取得したときにはちょっとしたピンチに陥っていた。認知度はあるものの、キャラクター大国・日本での人気はライバルに押されてイマイチ。特にティーンのファン獲得にはなかなか苦戦している状況だったという。

「長年愛してくださる方はたくさんいるのですが、次世代へ継承していくためには若い層へのアピールは欠かせないテーマでした。そこでティーンの女の子が共感できるキャラクターとして、スヌーピーの女きょうだい・ベルを全面に出した展開を試みたのです」

 コミックには数回しか登場しないレアキャラながら、長いまつげと大きなリボンのベルは「可愛い!」とたちまちティーンの女の子の心をつかんだ。それと足並みをそろえるようにスヌーピーを始めとする「ピーナッツ」キャラクターの人気も上昇。2017年には初めて「キャラクター商品小売市場ランキング」(キャラクター・データバンク調べ)のトップ3入りを果たしている。

 1960年代に「世界で初めて宇宙に行ったビーグル犬」という偉業を成し遂げたスヌーピー。NASAでは宇宙飛行士が使う通信用ヘッドセットが、その黒い垂れ耳のようなカタチから「スヌーピーキャップ」という愛称で呼ばれている。このようにアメリカ本国はもちろん、日本でも不朽のキャラクターとしての信頼性から、食品やコスメ、アパレル、ファストフード店などとのコラボレーションも多く、社会のあらゆる場面でスヌーピーと出会うことができる。

「海外ではキャラクターグッズは、子ども向け商品がほとんど。ピーナッツに限らず、日本ほど大人から子どもまでキャラクターに親しんでいる国は世界的に見ても珍しいですね。西宮阪急には『Peanuts LIFE & TIMES(ピーナッツ ライフ&タイムズ)』というピーナッツの世界観からライフスタイルを提案するショップがあるのですが、明確に大人をターゲットにした専門店があるのも日本だけです。ただし、やはりピーナッツは子どもたちが活躍するコミック。他社とコラボレーションさせていただく上では、例えば『アルコールはNG』など一定のルールは設けています」

◆ファン層の新陳代謝で100年愛されるキャラクターに、ベビーラインも本格始動

 また、キャラクターグッズは年代を問わず女性が主な消費層だが、ピーナッツは男性ファンも多い、「ファンの2割は男性」と性別を問わず愛されているのも日本ならではの特徴だと言う。2018年からはラグビー日本代表とのコラボや、男子プロバスケットリーグ「B.LEAGUE」の応援アンバサダーに就任するなど、男性層へのアピールも強化している。スポーツ万能なスヌーピー(野球チームのポジションはショート)だけに、スポーツとのコラボはぴったりだ。

 さらにベルをきっかけにピーナッツに親しんだ女の子たちも、そろそろお母さん世代となっていく。今秋には「PEANUTS BABY」というベビーラインも本格始動する予定とのこと。スヌーピーグッズに包まれた赤ちゃんたちが大人になる頃には、その人気も魅力も色褪せることなく100周年のアニバーサリーを迎えることだろう。

(文/児玉澄子)