人気グループ・関ジャニ∞の大倉忠義と、成田凌が共演する映画『窮鼠はチーズの夢を見る』は、水城せとな氏による傑作コミック『窮鼠はチーズの夢を見る』『俎上の鯉は二度跳ねる』をもとにした、大倉演じる主人公・大伴恭一と、成田演じる今ヶ瀬渉の狂おしくも切ないラブストーリー。怒とうの撮影を終え、「成田くんの持っている柔らかい空気感が、今ヶ瀬というキャラに絶妙にマッチしていた」(大倉)「相手が大倉さんだと聞いてすごくうれしかった」(成田)と互いに信頼し合う2人が絶妙な距離感で作り上げた今作への想いを語った。

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 学生時代から「自分を好きになってくれる女性」と受け身の恋愛ばかりを繰り返してきた恭一と、そんな彼に大学の時から恋していた今ヶ瀬。偶然にも、恭一の妻が彼の浮気調査を今ヶ瀬に依頼したことをきっかけに7年ぶりの再会を果たす。抑えきれない想いをぶつける今ヶ瀬に、最初は戸惑っていた恭一は押されるがままに同居を開始したことで、徐々に心を開いていく。しかしそこに2人の関係を揺るがす女性たちも現れ…。

 「この作品は心からやりたい、と思った」と話すほどに原作に惹かれた成田は「行定(勲監督)さんからお話をいただいてとてもうれしかった。とても人気な漫画原作ということで、“似せる”ではないけど、完璧にはならなくとも近づけたい、そう思わせてくれる作品は自分が役者をやっているなかでも興味深かった。そして相手が大倉さんだと聞いて作品に対する熱量がより高まりました」と手応えを語った。
 
 『ナラタージュ』(17)、『リバーズ・エッジ』(18)などで知られる行定監督による静かで叙情的な世界観のなか、“好きになってはいけない相手”を想い、嫉妬や葛藤に苛まれる2人の男。大倉も、グループのライブを観に来たことがあるという行定監督からのオファーを快諾。恭一と今ヶ瀬を演じる2人の役者がそろった。

 撮影は驚くほど順調だったという大倉。「成田くんの持っている柔らかい空気感が今ヶ瀬というキャラに絶妙にマッチしていた」と絶賛し、「本当にむちゃくちゃスムーズに進んでいった。なんの止まることもなく違和感もなく、あっという間に終わっていった。きっと全部がすごく、よかったんだろうなと終わってから思いました」と撮影中よりもクランクアップ以降に実感があったという。

 現場での成田について「もちろんしゃべりやすいし空気感も柔らかいので、居心地がよく、楽しかったです」と素顔も明かす大倉。成田は「ただ、いてくれる。そこがやりやすいとも感じられないほど自然だった。やりやすすぎたのか何も感じなかった。終わってみて、こういうタイミングだからこそ思ったことなのかもしれない」といった近すぎず遠すぎない距離感で作品を作り上げていった。

■恭一はなぜモテる? 今ヶ瀬の可愛らしさは? 2人が語るそれぞれの魅力

 どこまでも優しいけれどその優しさがときに残酷な恭一、そんな彼への一途な想いを一途すぎるあまりに、こじらせてしまう今ヶ瀬。互いのキャラクターについてどう思うのか。大倉は、まず自分の演じた恭一について「これだけ女性にモテるというのは性格や優しさや立ち振舞いが理由だろうし、いいなと思いましたね。奥さんいる時点でダメですけど…。きっと(自分に対しての)特別感や優しさで素敵だなと思うんだろうなって原作を読んでいても思いましたね。女性にモテるって時点で男性からも魅力的に思えるじゃないですか」と素直に感心する。

 しかし「自分もそうでありたいけど、恭一のようにはできないなと思いました。ちょっと八方美人なところもなくちゃいけない。でもシンプルにうらやましいですね」と語る。「僕はみんな同じように、みんなに対して優しくはできないですしね(笑)。面倒くさいと思っちゃうこともある」と自分との違いも感じているよう。

 そんな恭一の“モテる”理由を「わからない」としながらも成田は「モテると直結するかはわからないけど、言ってほしい言葉を言ってくれちゃう瞬発力はあると思います。してほしいことをしてくれる。そのタイミングでうれしいことを言ってくれるんだ、というのはある」と説明する。「例えば、ワインを買ってきてくれて、もったいないから飲まないというと『来年も買ってあげる』と言ってしまう。その瞬発力ですよね。勉強もできていい会社である程度お金もあるという平均点をすべて超えた上でそれができる」と認める。

 一方、今ヶ瀬について大倉は「同性だからこそ、女性の面倒臭さもわかってる。だから、男性が楽でいるところを考えられる。男性が一緒にいて楽な空気をきっと作れる。嫉妬心が出てきてそうじゃなくなるときもあるかもしれないけど、同性で一緒にいて、楽ってこういうことなのかなと思いました」とその魅力を分析する。

 成田は「単純に、女性が好きだった人をこっちの世界に引きずりこむことがすごい。女の人に『邪魔だ』と思わせる力。愛が深いとかだけではない。いろんな言葉を持っていて、なのに自分のことは全然わかっていない、みたいな。それが可愛らしく見えるときがあるのかな? 人の気持ちがわかる」と客観視する。そんな2人が演じた恭一と今ヶ瀬はともに不器用でダメなところもあるが愛おしい部分もある。そこが作品の大きな魅力でもある。

■「実際の人間がやるとトゥーマッチに」実写版だからこその空気感を大切に

 原作から実写化にあたって、キーとなるせりふはそのまま、コミカル要素はぐっと控えめに、キャラクターたちによる揺れ動く感情が丁寧に表現されている。成田は「原作通りに実際の人間がやるとトゥーマッチになるかもしれないと思いました。大倉さんは立っているだけで恭一だったし、僕もそこを目指したかった。そこにいるだけでそのとき思っていることがジワッと出たらな、と。言われたら言い返すとかでなく、怒りたいときに怒ったり、言いたいことを言うとかそんな素直な作品ではない。みんながすべてを理解して、やっていた感じはあります」とその場から生まれるものを大切にした。

 大倉も「説明せりふがすごく多くても違うと思いますし、台本ではなるべく削ぎ落としてというのはあったけど、自分たちで多くを語らない分、気持ちで見せないといけないところもあった。そこが行定さんのこの映画への想いなのかなと感じました。こういう作品だからこそ、漫画はいろんなことを言わないといけなかったろうし、水城さんの伝えたいことがあったと思うから、監督はそこを汲んだ上で脚本をああいった形にされたのかもしれない」。こうして映画『窮鼠はチーズの夢を見る』が出来上がった。

 水城氏は成田に「これはコメディだから」と語ったという。コメディ要素は削ぎ落とされていても、恋愛の真ん中にいる2人には気づかない可笑しさは実写化した映画のなかにも存在する。成田は「『そうだよな』って。ちゃんと見ようとしちゃうけど、構えて見なくてもいいんだよねって思いました。特に恭一なんてツッコミどころは満載。全然重い話じゃない。言い訳するとか、可愛らしく見えていいですよね。演っているときはもちろんお互い必死なんですけど…」と笑う。そんな2人による、あくまで日常にある、普通の“恋物語”の行方を見届けてほしい。