外出自粛により毎日自炊を余儀なくされている人たちも多い中、先月発売された滝沢カレンのレシピ本が異例のヒット。本書には具体的な手順や分量の記載はなく、「お醤油とお酒を全員に気づかれるくらいの量」「キャベツはどの葉が一番男として強いかを見定めて」といった独自の表現に、「レシピ本を見て笑ったの初めて」「絵本の話みたいでワクワクする」「小説読んだくらいの満足感」といったコメントが寄せられている。料理を始め、「最近は毎日家で宝物を見つけている気分」と語る彼女に“おうち時間”の楽しみ方を聞いた。

【画像】「やれやれとポッタリくつろぐ鶏肉たちに…」滝沢カレンの“笑える”レシピ集

■料理をするときはもう1人の自分がいる「食材たちが踊ってお祭り騒ぎをしている」

――「絵本みたい」という声も多く届いていますよね。

【滝沢カレン】料理している時間は結構無なんですよね。でも、現実とは違うもう1人の自分もいて、そこにいる自分はすごいはしゃいでる感じで、1つの物語のようですごく楽しいんです。顔は無だけど、頭の中ではとんでもない食材たちが踊っていて、お祭り騒ぎをしているのがすごく面白くて、私にとって料理の時間は子どもに戻ったような気持ちというか、絵本をずっと読んでいる気持ちになれるんです。

――カレンさんの表現からは材料や食べ物も人間のように扱うリスペクトを感じたのですが、幼い頃からそういった意識はあったのでしょうか?

【滝沢カレン】一人っ子だったからかもしれないんですけど、小さい頃から人間ではない相手に話しかけていたんです。昆虫とか、ありとか、お人形さんとか。話はしないけど、洋服だったり靴だったり、壁すらも仲間のように感じていて。そこで繰り広げられている世界が楽しいというのはずっとありますね。

――今回のレシピ本は初心者向けだそうですが、料理を楽しむアドバイスを教えてください。

【滝沢カレン】アドバイスなんていう堅い私じゃないんですけど、でもやっぱりいつ始めたっていつ終わらせたって、いつ失敗したっていつ成功したって、料理って何も言ってこないので、それはすごい料理側に感謝しています。だから誰かにやりなよって言われてやるよりも、「よし!お腹すいたし、外に出るのもイヤだから、冷蔵庫のもので作ってみるか!」「よっこらしょ、腰でもあげようかな」っていう気持ちがすごく大事だと思います。私もそういうきっかけで始めたので。

■「家から一歩も出たくないぐらい悩む時もある」それでも“毎日楽しい”理由とは

――外出自粛が続く中、料理も楽しまれていると思いますが、どういったおうち時間を過ごされていますか?

【滝沢カレン】いっぱい料理をして、インスタグラムで皆さんがおすすめしてくれた映画をたくさん見ています。もちろん今のこの状況が良いとは言えないですし、絶対健康が1位ですけど、もしずっとお仕事をしていたらこの映画に出会ってなかったかもしれないとか思うと、毎日「宝石ってこんなに転がってるの⁉」ってぐらい素敵な出会いがあったり、すごく自分自身を考える時間にもなっていたりするので、1日1日が何も無駄になっていないなって思います。

――モデル、バラエティ、女優、脚本、本の出版と、本当に忙しい日々でしたもんね。年々活躍の場を広げられていますが、様々なお仕事をされる中で悩んだりすることはないのですか?

【滝沢カレン】もちろん全部が全部「うわー最高!」っていうことでもないですし、そんな前向きな人間でもないので、悩むときはとことん悩んで、もう家から1歩も出たくないってぐらい悩む時ももちろんあります。

――そんな時はどのように乗り越えるのでしょうか?

【滝沢カレン】子どもの頃から想像するのが好きなせいなのか、すごく広く考えます。自分のちっちゃい塊の中で考えていたらどん底のような悩みだったとしても、おっきいおっきい宇宙の中のちっちゃい地球に私はいて‥って考えると今度はそっちの不思議になっていっちゃうので、悩みを忘れてしまったり。それに、インスタを見れば居間の住民たちが私を応援してるって言ってくれていて、どこにやる気のない時間ができるんだってぐらいやる気をもらえている仕事だなって思っています。自分がすごいんじゃなくて、周りがすごいから楽しませてもらえてるんだってことをいつも思っています。

■影響を受けた人物は「明石家さんまさんっていうお笑いの1位の人」忘れられない一言とは

――色々な方に囲まれてお仕事をされている中で、大きな影響を受けた方はいらっしゃいますか?

【滝沢カレン】明石家さんまさんっていうお笑いの1位の人がいるじゃないですか。バラエティ番組の収録中に、私がトークで焦っちゃって、周りがもう何言ってるんだみたいな空気になった時に、さんまさんが「滝沢は変わったらあかん、そのままでええんや」って言ってくれたんです。もう仕事中なのに涙が出るぐらい嬉しかったです。悲し涙じゃないですよ。嬉し涙にもほどがある嬉し涙で、なんでこんなにいい人に私は出会ってしまったんだろう!っていうぐらい。私は言葉をすごく忘れる人で、いろんな人との会話もすぐ忘れちゃうからいつも困っているんですけど、あの言葉は今でも覚えています。いろんな番組で失敗したときもこの頭にこびりついた言葉で、いつもさんまさんと一緒に番組をやっている気分でいます。

――これまで、さんまさん含め色々な出会いがあったと思いますが、ご自身のターニングポイントと感じるところはどこでしたか?

【滝沢カレン】それはもう毎日ですね。数秒かもしれないです。この時間はもう未来にはいないですし、今の自分も明日はきっと違う考えだしって思うと、なんかおっきいことがあったからおっきく人生が変わるってことはそんなになくて、人生はおっきくこの道が目の前に広がっているだけで、そこを毎日右に行こうか左に行こうかっていうのがポイントというのだったら、私は毎日まっすぐは歩いてないなっていつも思います。右行ったり左行ったり、たまにUターンして同じ道戻ってみたり、下り坂だったり。でも、だからこんなに楽しんでいる自分がいるのかなって思います。

――この時間は今しかないと常に自覚されているのは、簡単ではないですけど大切なことですね。この状況下、カレンさんのインスタグラムやレシピ本に元気をもらっている方もたくさんいると思います。最後に、みなさんにメッセージをお願いします。

【滝沢カレン】この世界を誰が予想できたかっていう話になってくると、誰も予想できなかったですし、もちろんいろんな温度差はあるかもしれないですけど、逆に言えば今が一番みんなが同じ気持ちで繋がっているんじゃないかなって思うんです。安心な日常の時は、“チーズ食べたい”とか“チョコ食べたい”とかいろんな感情の人がいるけど、今は“いつ終わるんだろう”とか“自分や周りの人は大丈夫か”とか、みんなすごく繋がってる心を持っている時間だと思うんですね。そんな1つになった時ってめちゃめちゃ強くて、根っからの強さを持っているのが人間なので、乗り越えられない壁はないと思います。そして、こんなときにも助けてくれるのが台所ですし、隣にいてくれるのが食材たち。だから、全然寂しい思いはしなくていいですし、この時間を使って、また来年元気に桜を見られる自分になれるように栄養もりもり食べて、そしてプラスで料理上手になったら最高だなって思えるんじゃないでしょうか。


 滝沢カレンのレシピ本に分量が一切載っていないのは「料理に正解はないから、自分流で楽しんでほしい」という想いが込められている。彼女自身も、レシピ本を見たり計量スプーンを使ったりして料理することはないという。

 そこには“先入観に捉われない大切さ”、“型にはまらず自分らしさを追求する楽しさ”といったメッセージも込められている気さえしてくる。人形が話すわけない、食材が踊り出すわけがない、そんな先入観に捉われることなく、日本生まれ・日本育ちでありながら唯一無二の表現力を手にした滝沢カレンの世界観は、型にはまりがちな我々の視野や“おうち時間”の選択肢も広げてくれるかもしれない。


(文=田崎理紗)