新型コロナウイルス感染拡大の影響で、「夜の飲食店」が営業自粛や一時休業、閉店などの窮地に立たされている。そんななか店に行かずともマスターやママと飲んで話せる「オンライン」バーやスナックが、新たな商機を見出しているようだ。新宿2丁目にある女装サロンバー「女の子クラブ」は、店舗営業は一時休業中。一方、「zoom」を使って自宅に居ながらスタッフと会話ができるオンラインサービスを3月31日よりスタートさせ、新規や遠方の客を取り込んでいる。店長のくりこさんに話を聞いた。

【写真】オンラインで盛り上がる女装ファン

■“映える”女装はオンラインとの相性抜群 「スタッフの会話をまとめるテクニックが磨かれる」

――オンライン参加者は、やはり女装される方が多いのですか?

【くりこさん】店舗での女装のお客様比率は7割くらいですが、オンラインでも同じくらいの割合です。自分の女装姿を見てもらいたいという方も多いので、同時にいろいろなお客様同士もつながれるオンラインは、「メイクきれいですね。どうやっているんですか?」といった女装トークに花が咲くことも多いです。もちろん店舗に来て交流することで友人の輪が広がるのですが、オンライン上ではSNSのアカウント交換がより活発に行われています。

――オンラインならではですね。

【くりこさん】そうですね。あと、女装して家を出る勇気がなくて、「いままで自分の女装姿を人に見せたことがなかった」という方もいらっしゃいました。家を出ることにハードルを感じる人は多いんです。

――スタッフの反応はいかがですか?

【くりこさん】オンラインは会話をまとめるのが難しいので、対面とは異なるテクニックが必要です。いろいろなお客様が来て、みんなと話をしたい。でも、グループ全体が盛り上がる会話じゃないと成立しません。対面と違って、1対1の会話をするとほかの方が取り残されてしまうので、個人的な会話ができない。グループ全体的に会話してもらうための話の流れを作って、会話を取りまとめないといけないんです。オンラインサービスは簡単なものではない。こんな難しいところでサービスを続けていけば、キャストは鍛えられますよ。

――オンラインを始めて想定外だったことはありますか?

【くりこさん】店舗とは異なり、お互いの距離が離れているからこそ“恥ずかしい話”ができるようですね。それぞれ自宅からなので、好きなものやお気に入りグッズなどの情報共有がしやすいといったこともあります。

――オンラインならではのメリットは、新規や遠方の客の獲得でしょうか。

【くりこさん】それもひとつですね。常連さんも来てくれますし、SNSを見たという新規の方もおもしろがって入ってくれています。沖縄や北海道など遠方から参加している方、店舗には年に数回の来店だけどオンラインだと頻繁に顔を出すという方もいらっしゃいます。現在は、常連7割、新規3割。最初は常連さんがほとんどだったのですが、徐々に新規の方が増えている状況です。

――オンラインの準備はいつからですか?

【くりこさん】サービス開始の前日です。すぐにカード決済ツールと「zoom」をつなげるサービスの準備をしました。これまでオンライン構想はありながらも具体的に進めていなかった理由は、大変だからです。そもそもオンラインに特化したサービスツールがないので、2つのシステムを組み合わせて使わなくてはいけない。お客様への使い方の説明や、宣伝の仕方も複雑になるので手間がかかります。それで、いままで手つかずでしたが、こういう状況なのでやらざるを得なくなりました。

――売上はどのくらいを想定していましたか?

【くりこさん】正直、前例がないのでまったく読めませんでした。サービス価格設定すら未知の領域で、まずはお店の運営にかかる固定費、スタッフの生活を守るための費用を少しでもカバーできればという考えでした。スタートして1ヶ月弱ですが、休業による会社全体の赤字削減には大きく貢献できています。通常の店舗営業と違って、客単価を上げられないことや、飲食が提供できないことでのサービスの質の低下も危惧していたのですが、オンラインならではの良さも生まれ始めているので、スタートしてよかったと思っています。

――現状のサービスの課題や改善ポイントは?

【くりこさん】まず決済システムですね。オンラインサービス専用の決済システムではないのでやりにくさがあり、お客様の取りこぼしが少なからずあると思います。これに特化したシステムが必要というのがひとつです。サービスに関しては、いまは店舗営業と同じスタイルですが、1対1のトークサービスや、メイクや女装のノウハウのレッスンなどにも広げていけると思います。

――オンラインでユーザーが広がっていくと、リアルでの“店舗の聖地化”もあるかもしれません。

【くりこさん】そうなることを目指したいですね。オンラインで初めて来たお客様からは、「キャストと直接会いたい」「お店に行きたい」という話がよく出ています。オンラインならではのトークを楽しんでいる方がたくさんいらっしゃいますが、お店が再開したらすぐに行くと言ってくださるお客様がほとんどです。

――外出自粛が続きますが、こういう状況だからこそ文化を守るためにも必要とされているサービスです。

【くりこさん】2丁目の他店から、相談を受けたり、やり方を伝えたりしています。我々はオンラインサービスに手応えをつかんでいますが、ほかのお店にもぜひ真似をしてほしい。それが広がって、こういった状況でも2丁目の火が消えないことを願っています。
 外にも出られず、誰とも会話ができないという状況のなか、お客様はオンラインサービスで人の顔を見て話せることで安心すると言います。誰もが不安を抱えているなかで、面白くて楽しい話をして笑い合うというのは、このご時世にもっとも必要なものだと思います。ぜひ元気をもらいにきてほしいです。