世界に誇る日本のポップカルチャー『機動戦士ガンダム』シリーズの歴史を振り返った時、1980年代前半のガンプラブームは大きなターニングポイントとなっている。中でも、当時のモデラーたちの心を掴んだ「MSV」や「プラモ狂四郎」は、今なおモデラーたちに影響を与え続けている。今回紹介するスギモトカステン氏(@kuromedakaf14)もまた、当時の思い出を糧にガンプラを作り続ける一人だ。

【写真】「ランバ・ラル特攻!」ホワイトベースとの死闘が蘇る…キュイとジオン兵を自作再現

■ストリームベースの川口克己さん、小田雅弘さんは永遠に憧れの存在

――ガンダムの中で一番好きな作品は?

【スギモトカステン】ファーストガンダムですね。タイムリーで見ていたので、テレビシリーズ、劇場版三部作は全部好きです。

――ファーストの中で好きなキャラやシーンは何でしょうか。

【スギモトカステン】ランバ・ラルとそのクルーが好きなので、ランバ・ラルが率いるアコース、コズンの出撃シーンから、ハモンとランバ・ラルの特攻シーンに思い入れがあります。特に、ランバ・ラルとアルテイシア(セイラ)のホワイトベースでの再会、そしてランバ・ラルの死に際は、子どもながらにせつない気持ちになりました。

――ガンプラにハマったキッカケを教えてください。

【スギモトカステン】1980年代前半はガンプラブームで、ガンプラの話題でクラスの皆と会話が弾みましたし、朝早く模型屋さんに並んで新作のキットを買う喜びも知りました。何より、TVで流れていたガンプラの特撮CMはカッコ良すぎましたね。ワクワクしてしまうガンプラ特撮CMが何パターンもあるんです。あと、これはガンプラに入るか分かりませんが、「森永ガンダムチョコスナック」と「ミルクキャラメル」のオマケにハマりました。ガンプラにはないマニアックなラインナップで、いまだにこのオマケにしかないMSVがいくつもあります。これは最高でした(笑)。

――当時はTVCMをはじめ、雑誌などにも大量のガンプラ情報が溢れていました。

【スギモトカステン】はい。『コミックボンボン』『テレビマガジン』『ホビージャパン』を読んでいて、中でも『ホビージャパン』の別冊『HOW TO BUILD GUNDAM』の1と2は、僕らの世代ではバイブルですね。それと、『テレビマガジン』の付録には思い出があります。当時、シールブックが流行っていて、プロモデラーさんの作品を一枚一枚のり付けして1冊の本を完成させるという、自分で作って読んで楽しい付録でした。また、「きみをプラモ名人にする本」はプラモデルの基礎から学べる本でしたし、MSVなど資料となる付録もたくさんありました。

――プロモデラーの川口克己さん、小田雅弘さんはスギモトさんにとってどんな存在ですか?

【スギモトカステン】僕ら世代にとってストリームベースのお二人は、いつまでも憧れの先生という存在です。『コミックボンボン』に掲載されているお二人の笑顔の写真や、『プラモ狂四郎』に登場するイラストなどで身近に感じていました。

――『プラモ狂四郎』のパーフェクトガンダムをはじめ、MSVの機体が次々とキット化されていきました。

【スギモトカステン】『HOW TO BUILD GUNDAM』に載っていたMSVがキット化になると発表された時は本当に夢のようでした。TVシリーズに登場しない局地戦用機、試作機、エースパイロット機など、本当に魅力的なイラストが多かったですから。当時、ポケットサイズの「モビルスーツバリエーション」1、2、3という本が発売されていましたが、僕はどこに行くにも持ち歩いていて、ボロボロになるまで読み見込みました(苦笑)。MSVによってガンプラのif設定の幅が広がったと思います。

■全員がMSに乗るわけではなく、その他大勢の生身の人間によって運営されている

――今作についてですが、砂漠に集うMSやキュイ、兵士が圧巻です。作品名はありますか?

【スギモトカステン】作品名は「ランバ・ラル隊とその支援部隊」ってところでしょうか。

――コンセプトやテーマを教えてください。

【スギモトカステン】元々、2018年の千葉しぼり展示会の時は、マゼラアタック、キュイ、ワッパとフィギュアだけの作品でした。この時はあえてモビルスーツ無しで戦闘車輌とフィギュアだけでランバ・ラル隊を再現したんです。それが評価されてWildRiver荒川直人さんの荒川賞をいただきました。その時に荒川さんからの副賞として、「荒川さんの作ったヤシの木を使ってランバ・ラル隊のディオラマを完成させる」という次の展示会の課題が出来たんです。そこで、ランバ・ラル隊といえばグフとザク。ただMSを加えるだけではなく、『HOW TO BUILD GUNDAM』の要素も取り入れようと考えました。

――具体的にはどんな要素でしょうか。

【スギモトカステン】『HOW TO BUILD GUNDAM』1と2の要素を取り入れたかったので、グフの塗装は1に掲載されている「グフ砂漠仕様」のイメージにしました。また、グフとザクのランドセルは2で紹介された川口名人の作品「砂漠の駐屯地」を参考にして自作しました。

――本作で一番表現したかったものは何ですか?

【スギモトカステン】宇宙世紀でも移動には十分な食料などの補給物資が必要です。全員がMSに乗るわけではなく、大勢の生身の人間によって運営されているということを表現したいと思いました。実際はギャロップで移動だったかもしれませんが、その辺りは僕の設定です(笑)。

――制作面でこだわった部分を教えてください。

【スギモトカステン】一番こだわった部分は、マゼラアタック、キュイ、ワッパなどに乗っているジオン兵のフィギュアたちです。このディオラマには、マゼラアタックのパイロットを含め50人作りました。マゼラアタックは、イラク戦争でバクダッド進攻に使用されたアメリカ主力戦車のエイブラムスのイメージで作っています。そして、ジェリカン(燃料容器)、飲み物、ダンボール箱、クーラーボックスなどを載せて長期移動するための荷物を再現しました。

――50人のジオン兵はそれぞれポーズが違いますね。

【スギモトカステン】ジオン兵は、アメリカ兵直立ポーズのフィギュアを切り刻んでポージングを変え、ヘルメットもジオン兵用に改造しました。この作業を一人ひとり作ることによってそれぞれ違うポーズにしています。キュイに搭乗しているジオン兵はEXマゼラアタックのフィギュアを使いました。上を見上げているフィギュアがあったので全員パーソナルジェットを背中につけて、ヘルメットを作成しました。

――話は尽きませんが、今後作ってみたいガンプラ作品は?

【スギモトカステン】大河原邦男さんがMSV-Rという新しいバリエーションを描いているので、その辺りを作っていきたいと思います。あとは、やはりパーフェクトガンダムですね。それと、これまで砂漠のディオラマが続いているので市街戦などのディオラマも作ってみたいです。

――スギモトさんにとってガンプラとは?

【スギモトカステン】ガンプラを作っていると当時の記憶を色々と思い出すんです。なので僕にとってガンプラとは『ワクワクしていたあの頃に戻れるアイテム』です。

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