今年、40周年を迎えたガンプラがこれほど愛され、進化を続けている要因としてモデラーたちの“指標”となる模型誌の存在は大きい。中でも、模型誌『月刊ホビージャパン』が開催する「全日本オラザク選手権」は、多くのモデラーたちにとっての目標となっている。そこで、第13回「オラザク選手権」で大賞に輝いたTakuya氏(@STYLE_S_Takuya)に、オリジナル機体の創作秘話や、“自己表現の場”となっているガンプラへの想いを聞いた。

【写真】力作揃いの「オラザク大賞」 伝説のガンダム“フルハッチオープン”も

■『オラザク大賞』で勝つために制作した「僕が考えた最強のモビルスーツ」

――ガンダムの中で一番好きな作品を教えてください。

【Takuya】ファーストガンダム直撃世代なので、もちろん1979年に放送された『機動戦士ガンダム』ですね。この作品が私の人生に影響を与えたと言っても過言では無く、“作品そのもの”ともいえる全ての登場キャラクターを愛しています。

――思い入れの強いシーンは?

【Takuya】あえて1つ選ぶとすれば、頭部と左腕を失ったガンダムがジオングに向けて放った「ラストシューティング」です。当時、子ども心に痺れたワンシーンです。劇中のシーンとしてはもちろん、大河原邦男さんの描いたポスター画も含め最高の名場面だと思います。

――では、ガンプラにハマったのも1980年代前半のガンプラブームのタイミングですか?

【Takuya】40年前のガンプラブームが始まりですが、中学生位で一旦プラモデル制作からは遠ざかっていました。けれど、30歳代に入ると、ふとしたキッカケで現在のガンプラが進化していることに感激しました。それで、軽い気持ちでガンプラの投稿サイトに作品をアップした所、思いのほか評判が良かった事に味を占め、その後はズルズルと深みにハマってしまいました(笑)。

――第三者の評価という点では、Takuyaさんは国内最高峰のガンプラコンテスト『全日本オラザク選手権』で大賞を受賞しています。当コンテストに参加する意義とは?

【Takuya】大人になってガンプラ復帰した際、模型誌で見た『オラザク選手権』のレベルの高さに衝撃を受け、自分も「受賞してみたい」という欲求にかられました。私個人の解釈としては、当コンテストは「オラ(私)のザク」、すなわち誰も見たことの無いモビルスーツを造る“自己表現の場”だと考えています。

――『オラザク選手権』で大賞を受賞された作品のテーマを教えてください。

【Takuya】YAMS-130B グライファーという機体です。時代背景は『ガンダムUC(ユニコーン)』で、対ユニコーンガンダムの為に開発されたサイコフレーム搭載機という独自設定、独自デザインのモビルスーツです。ギラ・ズールの後継機で、一年戦争で言うザクに対するグフにあたるものとして考えました。またコンテスト向けという事もあり、いわゆる「僕が考えた最強のモビルスーツ」的なものでもあります。

■ガンプラは構想や制作の過程が楽しいから、正直完成しなくてもいい

――制作に使用したキットを教えてください。

【Takuya】芯となるフレームはMGシナンジュ等ですが、外装はエポキシパテやプラ板でゼロから作り上げたフルスクラッチビルドです。

――手持ち武器の“圧”が凄いです!何か参考にしたモチーフなどはありますか?

【Takuya】実在のバルカン砲(M61ガトリング砲)を参考にしていますが、作品のイメージに合わせて独自にデザインし、コンテスト向けとしてあえて大きく派手目に作りました。

――この作品でTakuyaさんが最も表現したかったものは?

【Takuya】作品を作る上では感性による“自己表現”を大切にし、「誰も見たことの無いもの」「あっと驚かせるもの」「人の記憶に残るもの」、この3点を念頭にしています。

――技術面でこだわった部分を教えてください。

【Takuya】独自デザインという事もあり“造形”にこだわっています。作品を見てもらえば分かるように3次元曲面を多用しています。『ガンダムUC』には複雑な3次元曲面構成のモビルスーツ・シナンジュが存在しますが、更にその上をいく複雑な形状としてデザインしました。複雑な曲面造形も見せ場ですが、頭頂から足先まで、肩から手の指先までのS字ラインが綺麗に繋がる様にし、力強さと美しさを両立させた点もポイントです。個人的には、アクションポーズよりも素で立っているポーズがカッコイイかどうかを重要視しているので、自分で言うのも何ですが、拳に力がこもっている様に見える事と、接地した両足の力強い踏ん張り感で表現できているかと思います。

――見事にそのこだわりが評価されたわけですが、『オラザク大賞』の反響はいかがでしたか?

【Takuya】この作品を通じて3DCGソフトウェア会社や3D切削機メーカーの方からお仕事の声もかかりました。他にも、『オラザク選手権』が掲載された模型誌を見た読者の方がグライファーに感銘を受け、その誌面を模型店員の方に見せて「このプラモデルを下さい!」と尋ねたことがあったという事です。当然グライファーのキットは存在しませんが、この様に人の心に訴えかけ、それを作りたい衝動にまで持って行けたと考えると、“何かしらの感動・人の心に残る作品を作る”という常日頃の想いを達成できたのかなと思います。

――ガンプラ制作でカタルシスを感じる瞬間というのは?

【Takuya】ガンプラは、どういう作品にするかという構想や、作っている過程が楽しいですね。頭を使って妄想・想像(創造)する、手を動かし続ける、それが楽しいので、正直完成しなくてもいいのです。なので完成せず放置された作品が山の様に…(苦笑)。

――Takuyaさんにとってガンプラとは?

【Takuya】未だに子どもの頃の気分を思い出させてくれて、ノスタルジックな気分に浸れるもの。大人になってもこんな楽しい気分にさせてくれるガンプラって凄いですよね。

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